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廃棄物焼却灰保管に黄色信号 「基準値超え」搬出できず 容量を圧迫(福島民報) 東京電力の売却予定敷地を活用してはどうか

2012-10-04 09:17:16

東京電力福島第一原発事故に伴い、ごみの焼却灰がたまり続けている問題で、国が処分する放射性物質が一キロ当たり8000ベクレル超の焼却灰の搬入先が一向に決まらず、保管している市町村の最終処分場の容量を圧迫している。市町村が処分する8000ベクレル以下についても、住民の理解が得られないなどの理由で、埋め立てよりもスペースを取る一時保管の形を取らざるを得ないのが現状だ。関係者は「このままでは数年で満杯になる」と悲鳴を上げる。

■危機感  
 福島市松川町にある福島市の一般廃棄物最終処分場「金沢第二埋立処分場」。「フレコンバッグ」と呼ばれる袋に詰めたり、シートにくるんだりした焼却灰が次々と運び込まれる。
 1キロ当たり8000ベクレルの基準値以下であれば、埋め立てが可能だが、周辺住民の理解が得られず、あくまで一時保管の形だ。場内では、基準値以下と、国が処分する基準値超の焼却灰を分けて搬入している。発生する焼却灰のうち半分程度は、焼却の際に出る煙をフィルターで処理した後に残る「飛灰」を含んでいる。「飛灰」には放射性物質が濃縮されており、基準値を超えるケースが多いという。
 他の廃棄物と隔離するため、約50センチの厚さに土を敷いてから運び込み、その上にまた土をかぶせる。通常の埋め立てに比べ、2割程度、余計にスペースを取る。
 市は震災前、焼却灰の3分の2程度を砂状に加工し、民間に路盤材として販売し、再利用していた。しかし、原発事故で販売できなくなった。焼却灰は1日約45トン発生しており、処分場の容量圧迫に拍車が掛かる。
 今年3月末時点で、総容量約60万立方メートルのうち、埋め立て可能な残余容量は2割程度あり、市は12年は埋め立て可能と見込んでいた。しかし、現在のペースで運び込まれれば、半分の6年程度で満杯になるという。
 県内のある広域組合では、既存の最終処分場が満杯になるのを控え、震災前から新たな処分場建設の検討に入っていた。しかし、原発事故による放射性物質の問題で、処分場新設への理解を求めるのは難しい状況で、計画を進められずにいる。担当者は「このままでは家庭ごみを焼却できなくなる」と危機感を募らせる。

■場内に混在
 「基準にかかわらず、全て国に持っていってもらうしかない」。二本松、本宮、大玉の3市村でつくる安達地方広域行政組合の関係者は強調する。
 組合は1キロ当たり8000ベクレルの基準値以下と基準値超の焼却灰を分別せずに最終処分場に一時保管している。今後、国が基準値超の焼却灰の処分に乗り出したとしても、焼却灰入りのフレコンバッグを一つ一つ放射性物質検査し、基準値超の焼却灰をえり分けるのはほぼ不可能だ。膨大な費用も掛かる。組合は「少しでも放射性物質が含まれている以上、焼却灰は全て国が処分すべき」と訴える。
 須賀川、鏡石、天栄の3市町村でつくる須賀川地方保健環境組合は住民理解を得ながら、基準値以下の焼却灰を最終処分場に埋め立てて、基準値超の分だけを一時保管している。しかし、国が基準値以下でも処分するように方針転換した場合に備え、いつでも掘り起こせるよう、分離して埋め立てている。

■見通し立たず
 国は先月、1キロ当たり8000ベクレル超、10万ベクレル以下の焼却灰などを富岡町の民間の産業廃棄物処分場で埋め立て処分する方針を示した。だが、受け入れ側の富岡町との間で協議にすら入れていないのが現状だ。「今後の見通しも立っていない」(環境省)という。
 一時保管の量が増える中、県は廃棄物処理法に基づき策定している一般廃棄物処理計画を、計画期限の27年度を待たずに見直しも視野に入れている。
 県は国に対し、1キロ当たり8000ベクレル超の焼却灰を早急に処分することを申し入れている。一方、基準値以下の焼却灰の埋め立て処分に向け、住民の理解を得るために専門家を派遣するなど市町村を支援する方針だ。
背景
 家庭ごみなどの一般廃棄物は通常は市町村の責任で処分するが、原発事故に伴う特措法で焼却灰の放射性物質が1キロ当たり8000ベクレルの基準値を超えた場合は「指定廃棄物」として国が処分することになった。基準値以下は市町村が埋め立てできるが、会津地方や県南地方の一部などを除き県内の多くの自治体で、最終処分場周辺の住民に配慮するなどの理由から埋め立てず、いずれは持ち出すことが前提の一時保管の形を取っている。国は10万ベクレル以下は管理型の最終処分場で10万ベクレルを超えた場合は中間貯蔵施設で処分するとしている。一般廃棄物の焼却灰で現在まで10万ベクレルを超えるケースは出ていない。

 

http://www.minpo.jp/news/detail/201210044023