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自治体発、節電ビジネス 脱補助金モデルに知恵 (日経産業) 「混迷の国策」より、自治体のほうが地に足の着いた政策をしているね

2012-10-04 18:16:45

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長引く電力不安への対応策として自治体が節電事業で知恵を絞っている。節電した分を発電したとみなす「ネガワット」や7月に始まった再生可能エネルギー全量買い取り制度を巧みに活用する例が出てきた。これまで自治体の節電支援といえば省エネ設備への助成が中心だったが、補助金行政から脱して新ビジネスの担い手に変身できるのか。(久保田啓介編集委員)

栃木県足利市は大豆生田(おおまみうだ)実市長が陣頭に立ち、「市民総発電所構想」を進める。これが注目されるのは、市役所などの公共施設で率先して節電に取り組み、そこで浮いた電気代で家庭の省エネ設備の導入を支援。「節電が節電を呼ぶ」という巧妙な仕掛けを考えたことだ。


 まず今年度中に市役所や小中学校、公民館など52施設を通信回線で結び、電力使用を一括管理する。各施設には次世代電力計(スマートメーター)や電力監視装置を入れ、「見える化」を通じて節電を促す。




 市が節約できた電気料金はHEMS(家庭内エネルギー管理システム)の購入支援やエコポイントとして市民に配る。市は今年4月、電力の契約先を東京電力から新電力(特定規模電気事業者)のエネットに切り替え、年間約750万円を節約した。これに一括管理による節電分を加え「できるだけ多くの市民に還元したい」(環境政策課)。




 この仕組みは自治体としてネガワットを活用する先駆けにもなる。関西電力が「ネガワット取引」を今夏、国内で初めて導入し、節電分を入札で買い取ったり、節電目標を達成した企業が報奨金を受け取ったりできる仕組みとして話題になった。ネガワット本来の理念は「節電で電力消費を減らすのは発電所をつくるのと同等」と考え、節電に経済価値を与えることにある。




 自治体が家庭の省エネ設備に助成する場合、通常ならば税金が使われる。足利市ではその代わりに公共施設で浮いた電気代が「財源」になり、節電に新たな価値が生じる。自治体が節電に励むほど市民の節電の動機づけになり、それが「市民総発電所」のゆえんだ。




 構想づくりで助言、協力した社団法人スマートプロジェクトの加藤敏春代表は「全国100程度の自治体に同様の取り組みが広がれば、HEMSや次世代電力計などの需要を生む効果も大きい」と期待を寄せる。




 再生エネルギー買い取り制度の活用でも、自治体が太陽光や水力発電などを直接手掛けるだけでなく「派生ビジネス」が注目だ。

神奈川県は県立高校や団地など県有施設の屋根を、太陽光発電を手掛ける企業に貸し出す事業を始めた。千平方メートル以上の屋根をもつ20施設で借り手を募り、グッドエネジー(東京・千代田)を代表とする特別目的会社など4社が決まった。


 事業者は固定価格買い取り制で売電し、県は屋根の使用料として年500万円程度の収入を見込む。県が自前で太陽光設備を設けると初期費用がかさむが、「屋根貸しは費用負担を抑えた新たなビジネスモデルになる」(太陽光発電推進課)。




 この仕組みは自治体の新たな収益源になるだけでなく、太陽光発電の普及に弾みをつける効果も見逃せない。これまで多くの自治体が家庭に補助金を出して太陽光パネルの普及をめざしてきた。神奈川県と同様の制度を検討する自治体も増え、「脱補助金」の動きが広がる公算も大きい。




 政府は節電や省エネを最大限広げ、新産業や雇用の創出につなげる「グリーン成長戦略」を年内にまとめる。自治体の新たな節電・発電事業が広がれば、需要を生み、民間ビジネスの芽になる。国が戦略づくりでそうした自治体の役割を明示し、後押しすることも重要になりそうだ。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD260MC_X20C12A9X21000/