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原子力規制委の内紛、修復不可能か=ホワイトハウスに難題(Reuters)

2011-12-19 11:38:19

米原子力規制委員会(NRC)本部ビルのNRCの標章(2011年3月21日、メリーランド州ロックビル)
【ワシントン15日ロイター時事】米原子力規制委員会(NRC)内部の深刻な内紛が今週、テレビで大きく報じられたのを受けて、ヤツコ委員長と、彼に「造反」したその他の委員4人は今後、それ以上に大きな難題に直面しそうだ。こじれ切った関係を修復し、協力してまともな仕事ができるのか、ということだ。

米原子力規制委員会(NRC)本部ビルのNRCの標章(2011年3月21日、メリーランド州ロックビル)




 内紛が長引けば、NRCは完全な袋小路に陥り、福島第1原発事故を受けて、米国内の原発を確実に安全にすることを目指した一連の規制改革が頓挫する恐れがある。

 ヤツコ委員長とその他の委員の深刻な亀裂は、14日の下院監視・政府改革委員会小委の公聴会の場でも鮮明になった。NRCの関係者はこの場で、ヤツコ委員長がNRCスタッフを言葉で攻撃したり、情報を開示しなかったり、委員たちと上級スタッフとの接触に干渉したりしたと批判した。

 とりわけNRCのウィリアム・マグウッド委員は、ヤツコ氏がNRCの女性上級スタッフを公然と侮辱したことが3度あると述べた。同委員は「こうした侮辱に耐えて、同僚や部下の面前で思わず涙を流すというのは、彼女たちにとって誠に辛い経験だ」と指摘、彼女たちはその後、この問題を公にしない選択をしていたとも説明した。

 これに対しヤツコ委員長は、「わたしに対するそうした非難の多くは初耳だ」と述べ、「そうしたことは真実でない」と反論した。同委員長は、NRC内部での「意思疎通」をスムーズにするため「仲介者」を望むと述べた。ただし謝罪まではせず、委員長を辞任するつもりもないと語った。

 NRCの4人の委員は先に連名で、ホワイトハウスに対し、ヤツコ委員長をもはや信頼できないと述べ、同委員長の「いじめ戦術」にうんざりしていると訴えていた。

 NRCは、福島第1原発事故を受けて、米国でも同様の事故が発生しないようにする任務がある。福島第1原発は、地震と津波を受けた電力喪失に対処できるバックアップ体制が不十分だった。福島第1原発の事故は、NRCが米国内の原発の安全規制上の隙間を特定する契機になったし、国内104基の原子炉について現在、広範囲に及ぶ新規制義務付けを準備中だ。

 ヤツコ委員長は、議会の民主党首脳と緊密なコネがある。ホワイトハウスがいまヤツコ氏を解任すれば、来年の選挙を控えて、政治的に厄介な立場に置かれる。解任すれば、ヤツコ氏の「後見人」で同氏を擁護し続けている民主党のリード上院院内総務の怒りを買うだろうし、「共和党に屈した」と民主党関係者たちがみなす恐れもある。

 しかしNRCの内紛をうまく解決できなければ、この問題は政治的に一層大きな「トゲ」になる恐れもある。

http://jp.reuters.com/article/jpnewEnv/idJPjiji2011121600490