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東京電力:若手社員が独自に改革案 首脳部が一蹴(毎日)

2012-03-02 13:10:46

一蹴したのはこの人?
昨年12月、政府の電力改革の標的となっていた東京電力本店(東京・内幸町)内に「コードネーム・希望」と記されたA4判5枚の文書が出回った。作成したのは燃料部や資材部などに所属する中堅・若手の有志社員。政府が東電を実質国有化する--。報道を通じて政府内部の動きが伝わり、社内に動揺が広がった時期だった。

一蹴したのはこの人?




 若手が動いたのは「政府の機先を制し、東電主導の改革を実現する」(改革案作りに関与した社員)のが狙いだった。文書には「国から分割案を押しつけられるのを待たずに新しい電力供給の議論を主導する」とある。

 改革案は、生き残りの条件として「原子力国有化」「電気料金値上げ」を挙げ、「徹底的合理化」「発電と送配電の分割」をセットで実施するのが柱。新生東電の姿を「若い世代が希望や夢を持てる会社」とした。

 この文書は東電首脳部にも届いたが、一蹴され、その後の経営方針に生かされることはなかった。文書には「民主党政権が倒れて自民党政権になれば事態が好転するという期待は甘い」ともあった。「首脳部の一部は、与野党逆転が実現するのを期待しているのでは」(東電関係者)との声も漏れ、首脳部批判とも受け取れた。

 いったんは封印された改革案だったが、間もなく、東電改革の全体像を示す総合特別事業計画を立案中の政府の原子力損害賠償支援機構と東電の計画素案で、息を吹き返す。素案の目玉とされる「分社化」案だ。

 若手の改革案では現在の燃料調達、発電、送配電の3部門制のうち、発電を原子力発電会社(国営)と四つの火力、水力発電会社に5分割し、計7事業に分けてそれぞれ会社を創設する案を盛り込んでいた。

 支援機構の素案は、燃料調達と火力発電を統合し、送配電と小売りの計三つの社内カンパニー(会社)を設置する方針だ。東電を「完全解体」し、民間に資産を売却せずに済む内容だった。

 東電や政府関係者によると、改革案をまとめた有志社員は、支援機構の幹部と接触し、東電の経営合理化策などについて定期的に意見交換してきたという。若手改革案と機構素案では事業分けなどに違いがあり、政府関係者は「機構が改革案を採用したわけではない」と指摘しつつも、「若手の改革の動きは心強い」と語る。

    ◇

 改革文書が東電内に出回ったのと同じころ東電中枢の企画部の中にも「社内改革」の動きが芽生える。昨年12月27日、東京都内の高層ビルの一室に中堅、若手社員約30人が集まった。民主党内で東電改革を主導し、東電首脳部との交渉役とされる仙谷由人政調会長代行と旧知の財界人の「講話」を聞くためだった。

 会合は3時間以上に及び、東電の現状や改革に取り組む姿勢について議論が交わされた。「私の話に熱心に耳を傾けた連中が次の東電を担うだろう」。次期会長候補にも取りざたされている財界人はこう述べた。

 「料金値上げは権利」と主張して政府への対抗心を隠さず、「抜き打ち」の法人向け電気料金値上げなどで主導権を維持しようとする東電首脳部との対立が激化する中、支援機構側には「現実路線に導くパイプ」とも映る。

 政府は勝俣恒久会長や西沢俊夫社長ら取締役全員を退任させる方針で、西沢社長後任は内部からの人選を進める。支援機構は部長級の中堅幹部を個別に面接し、内部改革の旗振り役にふさわしい人材発掘を急いでいる。

 「東電は人材の宝庫。我々は現首脳陣に安心して去ってもらうために次代を担う優秀な人材を結集している」。仙谷氏周辺は自信をのぞかせる。東電改革を巡る攻防は、東電内部の世代対決の様相も帯びている。【三沢耕平、野原大輔】

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20120302k0000m020116000c.html