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原発の将来の発電成長量、8年ぶりで上方修正。2040年までに最大で倍増。仏、米、中国等が原発推進に転じる。東電事故の「安全性の教訓」は大丈夫か(?)(RIEF)

2019-09-09 08:54:16

WNA44キャプチャ

 

   グローバルベースでの原発の将来の発電量成長量予測が8年ぶりに上方修正された。世界原子力協会(World Nuclear Association:ロンドン)の最新予測では、フランス、米、中国等での原発推進政策の推進で、2040年までの原発発電能力は「最大シナリオ」で現状のほぼ倍(93%増)になるという。

 

 WNAがこのほどまとめた「Nuclear Fuel Report」で示された。2040年までの原発成長予測を、最大シナリオ(Upper Scenario)、現状シナリオ(Lower Scenario)、参照シナリオ(Reference Scenario)の分けて推計、比較した。比較に当たって主要国の最近の原発政策の修正を評価している。

 

 「原発推進」に動いている国は、まずフランス。オランド前政権下では、発電に占める原発比率を75%から50%に引き下げる方針を立てた。マクロン政権もこの方針を引き継いだはずだが、現状は、引下げ方針の実施を遅らせているほか、稼働中の原発の操業も40年を超えて認める方針を打ち出し、推進姿勢を明確にしている。

 

WNA22キャプチャ

 

 米国では、シェールガス増産によるガス火力発電や再エネ発電が普及、原発の経済コストの高さから新設原発が見送られてきた。だが、トランプ政権が操業期間の延長を80年まで認める方針を打ち出したほか、環境保護庁(EPA)が原発の発電中はCO2を排出しない点を温暖化対策として評価するなどの政策支援もあって、発電量は増加に転じてつつあるという。

 

 中国とインドはともに、国内経済の旺盛な電力需要を満たすため、原発新設を推進している。原発推進に動いているのは、このほか、トルコ、バングラデシュ、エジプトなどで、さらにウズベキスタン、カザフスタン、ポーランドなども新たな原発の開発に関心を寄せている。

 

 こうした需要サイドの高まりから、今後2040年までの原発建設のピッチは、最大シナリオと、参照シナリオのどちらの場合でも、1990年以来で、もっとも早いペースで進むとみている。特に、中国、インドを中心とするアジア市場での新規建設が軸になるとしている。

 

 2040年までの原発による発電能力増強規模の推計は、参照シナリオで569GWe、最大推進シナリオで776GWe、BAUの現状シナリオで402GWe。参照シナリオは現状比で41.5%増、最大シナリオは同93%増と、いずれも大きく発電能力を高めることになる。

 

原発の純発電量の推移
原発の純発電量の推移

 

 原発の操業については、2011年3月の東京電力福島第一発電所事故後、安全性への懸念が高まったことで、ドイツが原発廃止を決めるなど、グローバルに原発への逆風が吹いてきた。さらに、再エネ発電の急速なコスト低下で、原発の経済性への疑問も高まった。

 

 WNAの事務局長のAgneta Rising氏は「われわれが掲げる世界の電力需要の25%を原発で供給するという『Harmony goal』を2050年までに達成するには、 今回示した最大シナリオのペースよりも早く新設原発を増やす必要がある。その結果、燃料のウラン、濃縮、燃料棒、輸送システム、使用済燃料処理等を促進する必要がある」 と述べている。

 

 2040年以降の長期展望では、原発の安全性を高めた第4世代への移行が想定されている。核燃料処理の構造が基本的に変更され、使用済燃料の再燃料化等によって、使用済燃料の処理問題が生じないことが期待されている。WNAはそうなると原発の安全性と効率性がさらに向上、需要が高まるとみている。

 

 ただ、第4世代の技術開発は進行中で、現状では着地点は見えていない。仮に使用済燃料処理の課題に道筋をつけることができても、事故リスクがなくなるわけではない。またコスト課題の解決は容易ではない。今後の原発開発が、WNAが想定するシナリオ通りに展開するかどうかは、不明だ。

https://www.world-nuclear.org/