米スターバックスで労使対立激化。店舗従業員の労働組合結成の広がりに会社側が反発し、訴訟拡大。見かねた同社のオフィス従業員の士気も低下。日本の「スタバ」は大丈夫？（RIEF）
2022-10-25 08:50:44
米大手コーヒーチェーン店のスターバックスで労使対立が激化している。店舗で働く従業員を中心に労働組合結成の動きが広がり、店舗と従業員の対立が続くほか、同社のオフィス従業員の間でも、会社への不信感等の感情が高まっていることが調査で判明した。日本の同社店舗にも波及するのかどうか。
スターバックス従業員による労働条件改善を求める労働組合結成の動きは、2021年から全米で広がっている。今月17日には、サウスカロライナ州の店舗で労組を結成した従業員8人が、店舗のマネジャーに昇給を要求したことをめぐり、店舗側から犯罪行為だと不当に訴えられたとして、同社とマネジャーを相手取って補償と懲罰的損害賠償を求める訴訟を同州の裁判所に起こした。
訴状によると、同店の店舗従業員は6月に投票を実施し、労組を結成した。その後、組合員の従業員が8月1日に店側に昇給を要求する書簡を提出したが、マネジャーは地域統括マネジャーと連携して、従業員によって店を出るのを阻止されたと警察に虚偽の訴えを行った。 警察の捜査で自宅捜索を受けた従業員も出たが、結局、捜査当局は従業員に違法な行為はなかったと結論付けたという。
スターバックス本社は、訴訟の内容を検討中とする声明を出している。 同社では過去1年間に少なくとも米国内の240店で組合が結成され、そのうち、不当労働行為を行ったとして数十店舗で訴えられている。
こうした店舗従業員と会社側の摩擦の広がりに対して、同社のオフィスで働く「ホワイトカラー」のオフィス従業員の間でも、労使対立の継続を目の当たりにして、会社への信頼感の低下が目立っていることがわかった。
直近に、米ブルームバーグ通信がスターバックスの社内向け意見調査の結果と、これを受けて開いた社内会議の内容を報じた。それによると、会社が「倫理的で責任ある行動を取っている」という項目に「全面的に同意する」と回答した社員は52%にとどまり、これまでの調査にない「歴史的な低水準」（同社）だったという。
店舗従業員と会社の間で、労使対立が続き、訴訟沙汰になっていることにオフィス従業員の間でも、会社への不信感やイメージダウンを引き起こしているとみられている。さらに「（会社が）企業使命や価値観に沿った行動を取っている」という項目に「全面的に同意する」との回答も42%と過半数を割り、「経営陣が会社のために正しい判断をしている」という項目では25%以下にとどまった。
調査結果を踏まえて、会社側が社員向けに開いた説明会で経営幹部は、従業員の間で会社への信頼感が低下したのは、「新型コロナウイルス後の従業員のオフィス回帰を巡る不信感」と「店舗従業員の労働組合化を巡るメディアやSNS（交流サイト）の偏った報道」が影響したと説明したとしている。「会社が悪いのではなく、外部が悪い」という言い訳だ。
これまでスターバックスは米国でも、人種差別やLGBTの権利擁護、環境問題等で進歩的な見解を社会的に育んできたとの評判を得てきた。暫定CEOのハワード・シュルツ氏は、長年もの間、スターバックスは人権価値の促進や労働者の待遇改善等で基準を引き揚げる「トレンドセッター（流行の担い手）」だったと指摘してきた。だが、労使対立の長期化と泥沼化の影響は、オフィス従業員の士気にも波及し、さらに「スタバでコーヒー」を楽しむ顧客にも影響を及ぼす気配だ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/3eaa3c1fe8eee7cf15316716862eaf140ff72411
https://www.coworker.org/petitions/starbucks-lack-of-labor-is-killing-morale
Research Institute for Environmental Finance