欧州議会、新型コロナウイルス感染対策で閉鎖状態のベルギー・ブリュッセル議場建物を、ホームレスと弱者の避難スペースに転用。日本もオリンピック施設を弱者用に開放してはどうか（RIEF）
2020-04-11 08:23:31
新型コロナウイルス感染が拡大している欧州。各国で外出禁止等のロックダウン策が展開されている中で、議会運営もストップした欧州議会が、議会の建物を、ホームレスと貧困層の人々の生活の場として提供するという。欧州議会の議長がネットで宣言した。日本では、非常事態宣言に伴う営業補償などでは議論になるが、ネットカフェの住民を追い出したり、ホームレスの人への配慮の声が聞こえないなど、社会的排除が蔓延している気がする。
議会をホームレスに開放する方針を打ち出したのは、欧州議会議長のDavid Sassoli（デビッド・サッソリ）氏。イタリア出身の元ジャーナリスト。イタリアはコロナウイルスによる死者数が1万8800人を超え、世界で最も多い。コロナ被害の悲惨さを身をもって体験している思いもあるのかもしれない。ベルギーのブリュッセルにある欧州議会では、3月半ば以降、議員も議会事務スタッフもテレワーキングに切り替え、議場は閉鎖状態。
そこでサッソリ氏は、「この深刻な緊急事態が続く間、我々の建物を、ホームレスと、もっとも社会で脆弱な立場に置かれている人々が利用できるようにすることにした」と説明している。議長一人の決断ではなく、欧州議会としての判断のようだ。
欧州議会の建物の一つの中に、二つのスペースを作り出し、一つはホームレス用に、もう一つは病院から退院はしたが、家に帰ることができない人々に提供するという。ホームレスの人々等を受け入れている間は、議会の食堂も通常通り稼働し、「新たな住人たち」に食事を振る舞う。
サッソリ氏は「毎日、1000人分以上の食事を供給できる。食事を必要とする人々、患者の健康管理で働く人々、そうした人々を支援する人々。われわれは被害を受けたり、困窮している人々に寄り添い、さらに懸命に病院で働き続ける人々にも寄り添って、危機を乗り越えていく」と語っている。
欧州議会はフランスのストラスブールにも議場を持つ。そちらでもコロナウイルス感染患者を受け入れる予定だが、すでに感染拡大からの出口戦略の一環として、数週間後には検査センターに切り替えられる予定という。議会スポークスマンによると、感染のヤマを越えても、パンデミックの出口局面では、症状は出ないが感染の可能性がある人々が多数いるので、そうした人たちを検査して隔離するかどうかを判断する必要があり、そうした検査業務が残るため、としている。
日本では、感染が広がる中でも、検査を絞り込んだままで、症状が出ないがウイルスキャリアの可能性のある人を判別できない状態が続いているが、欧州は出口局面での検査の継続をすでに準備しているわけだ。http://rief-jp.org/ct12/101139
日本の国会は与野党ともマスクをしながら、誰一人感染者を出さずに議事を続けているので、国会議事堂をホームレスに明け渡すわけにはいかないだろう。だが、延期されたオリンピックの会場等はその多くがすでに立ち上がっているはずだ。これらをホームレスや、ネットカフェの住人らの避難場所に活用するわけにはいかないのだろうか。
パンデミックは、自分さえ感染しなければいいのではなく、社会全体の感染率を下げないと、危機は遠ざからない。「人道」の言葉を持ち出さなくとも、生活環境が劣悪な状態に置かれた人たちを感染させないように保護することは、感染の社会的リスクを遮断する重要な一手ではないか。安倍政権には期待できそうもないので、小池都知事、考えてくださいよ。
（藤井良広）
Research Institute for Environmental Finance