HOME |南極のペンギンが、CO2より温室効果効果が300倍も高い、温室効果ガスを大量発生。オキアミ等のエサ由来の亜酸化窒素。笑気ガスとも呼ばれる。デンマークの科学者らが解明(RIEF) |

南極のペンギンが、CO2より温室効果効果が300倍も高い、温室効果ガスを大量発生。オキアミ等のエサ由来の亜酸化窒素。笑気ガスとも呼ばれる。デンマークの科学者らが解明(RIEF)

2020-05-18 14:39:35

penguin11キャプチャ

 

  南極周辺に生息するオウサマペンギン(キングペンギン)が温暖化の進行につながる亜酸化窒素(N2O)を大量に発生させていることが、研究で分かった。デンマークの科学者たちが分析したもので、ペンギンがエサとするオキアミや魚に含まれている窒素分が、食後にフンとして排泄され、それが土壌細菌によってN2Oに変換される仕組みだ。動物が温室効果ガスを大量発生させる例としては、牛や羊のゲップに含まれるメタンの影響が大きいが、ペンギンの場合、自然の循環作用といえる。

 

 同分析は、デンマークのコペンハーゲン大学地球科学・自然資源管理学部のボー・エルバリング(Bo Elberling)教授らの研究チームが、科学誌ScienceDirectに発表した。「Combined effects of glacial retreat and penguin activity on soil greenhouse gas fluxes on South Gerogia, Sub-Antarctica」と題する論文。

 

「笑ってませんよ」「ほんとだって」
「笑ってませんよ」「ほんとだって」

 

 研究チームは南極のサウスジョージア島にあるセントアンドリュー湾にある世界最大のオウサマペンギン(Aptenodytes patagonicus)の生息コロニーで、温暖化の影響による氷河の後退と、ペンギンの生息による影響の複合効果で生じる温室効果ガス(CO2、N2O、CH4)の変化を調べた。その結果、CO2よりも300倍も温室効果効果のあるN2Oの生成は、氷河の退潮付近よりも、ペンギンのコロニーで著しい増加を示した。

 

 分析によると、最も古い土壌は、土壌炭素、栄養素、水分がいずれも有意に高い含有量を示しており、ペンギンの活動による強い影響を受けていることがわかった。ペンギンは海洋のオキアミと魚を主食としており、それらに含まれる窒素が、食後にペンギンのフンから排泄されて堆積物(グアノ)となり、ゆっくりと地面と土壌細菌に伝わって、N2O(亜酸化窒素)に変換されているという。

 

氷河後退地点からペンギンコロニーまでの間でのCO2、N2O等の変化。㊨がN2OのデータでコロニーのE地点で跳びぬけて濃度が高いことがわかる
氷河後退地点からペンギンコロニーまでの間でのCO2、N2O等の変化。㊨がN2OのデータでコロニーのE地点で跳びぬけて濃度が高いことがわかる

 

 N2Oは温室効果が高いほか、「笑気ガス」とも呼ばれ、麻酔効果があることでも知られる。歯科医院での治療等にも使われている。実際に、ペンギンコロニーで調査活動を続けた研究者らは、「数時間にわたってフンの堆積物のにおいを嗅ぎ続けると、完全におかしくなってしまう。気分が悪くなり、頭痛がしてくることもある」と打ち明けている。

 

 ペンギンがみんな、どことなく「笑って」いるような優しい顔をしているように見えるのは、N2Oのせいかもしれない(これは検証されていません)。

 

 研究チーム主査のエルバリング教授は、「今回の研究でペンギン由来のN2Oの排出量は、地球のエネルギー収支に影響を及ぼすほどではない。しかし、今回の発見はペンギンの集団繁殖地のコロニーが周辺環境に及ぼす影響について新たな知見を与えた。集団繁殖地は広がり続けており、興味深い成果を得た」と語っている。

 

https://www.sciencealert.com/researchers-love-antarctic-penguin-poop-here-s-why

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0048969719352477?via%3Dihub