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ネパールにまで進出したサバクトビバッタの大群、同国政府は殺虫剤の大量使用に代えて、パキスタンと同様、「捕獲・飼料化」作戦を展開へ。したたかなアジアの知恵(RIEF)

2020-07-07 21:54:14

locust0065キャプチャ

 

  東アフリカから西アジアにかけて猛威を奮っているサバクトビバッタ(Desert locust)はネパールにまで進出しているが、ネパール政府はバッタを捕獲して購入する政策を展開し始めた。殺虫剤を使うと生態系への影響が広がることから、農民らに捕獲を勧め、1kg当たり1ルピー(約22円)で買い上げる計画だ。買い上げたバッタは鶏や豚の餌にする。パキスタンでの試みを真似る形でもある。

 

 サバクトビバッタは、昨年後半から東アフリカのケニアやエチオピア等で大発生し、次第に中東から南アジアにまで移動をし続けている。南アジアではすでにモンスーンの季節に入っており、今後、暴風雨によってバッタの生育が進む可能性が指摘されている。また風に乗って移動範囲を拡大するリスクもある。

 

 バッタたちは、温暖化の影響による暴風雨で大発生が加速された。発生地の東アフリカ一帯では、殺虫剤を空中等から散布し、無限に湧き出るようなバッタの大群に対抗しているが、半年以上を経過した今も、幾度となる沸きあがる発生を抑えることができていないでいる。

 

 ただ、勢力を拡大し紅海を超えて、中東からアジア入りしたバッタたちを迎え撃つ形となったパキスタンのパンジャブ州等の一部では、捕獲したバッタを加工して養鶏用にエサにする試みが展開された。殺虫剤不足が功を奏した面もある。

 

 養鶏用の飼料に使われている大豆のプロティン45%に対し、バッタは70%と高たんぱく。価格も大豆は1kg当たり90ルピー(約58円)だが、バッタは無料。捕獲費用だけ。そこで政府は、バッタを捕まえた住民に、バッタ1kg当たり20パキスタン・ルピー(約13円)が支払った。http://rief-jp.org/ct12/103646

 

 ネパールでもバッタの大群に殺虫剤で対抗する代わりに、捕まえて飼料として活用する道を選んだ。西部の極西部開発区域(Far West Province)の農業大臣スポークスマンのKhagendra Prasad Sharma氏は「われわれは人々に対して、環境に悪影響を及ぼす殺虫剤の代わりに、バッタを捕まえて活用することを推奨している」と語っている。

 

 すでにバッタの大群が押し寄せている同国の地方で、農民等が捕獲したバッタに払われる報奨金は、バッタ1kg当たり25ルピー(約22円)。パキスタンより倍ほども高い。新型コロナウイルス感染拡大の影響もあって現金収入が減っている農民たちには重要な現金収入になる。

 

空を覆うバッタの群れ。これを食料だと考えれば・・・
空を覆うバッタの群れ。これを飼料に利用する。

 

 人々は、日中は空中を飛び交うバッタを、蚊を捕らえるためのネットで一網打尽にして捕まえ、夜になると、木々や地面で休んでいるところをかき集める形で、捕獲を進めているという。捕まえたバッタは、袋詰めにして役所に提出され、現金と交換される。捕らえられたバッタは、その量に応じて、養鶏用、あるいは豚等の家畜用に利用される。パキスタンの様に加工して飼料に混ぜるプロセスを経ず、そのまま鶏等のエサに供されるようだ。

 

 パキスタンといい、ネパールといい、アジアの人々のしたたかな知恵が、バッタの大群を「資源」に変える試みに発展しているわけだ。昆虫食が一部でブームとなっているが、そのうち、飼料だけでなく、食料としてのバッタ食も誕生するかもしれない。

 

 とはいえ、人間が捕まえられるバッタの数は、膨大な大群のごく一部でしかない。モンスーンで各地に展開したバッタたちが、さらに膨張する懸念もある。温暖化の加速で崩れた自然のバランスは、バッタの異常繁殖や、日本や各地での異常豪雨等が増大する形で、確実に顕在化している。

 

https://phys.org/news/2020-06-nepal-locust-bounty-swarms-threaten.html