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フランシス・ローマ教皇、新型コロナウイルス感染拡大の反省として、「地球に『安息日』を設けるべき」と強調。地球と調和した、よりシンプルな生活への回帰を求める(RIEF)

2020-09-03 17:04:37

Francis001キャプチャ

 

  フランシス・ローマ教皇は1日、新型コロナウイルス感染からの反省として、人類は地球を「休息」させることができれば、地球は回復できることを示したと指摘した。コロナの影響防止のための外出や営業の自粛措置等が世界中でとられていることで、人々は従来に比べてシンプルな生活を送るようになり、その結果、温室効果ガスの排出量が減少するなどの「休息効果」が得られた点に言及。先進国には最貧国向け債務の放棄を呼び掛けた。

 

 教皇は、2015年6月に出した回覧(Laudato si ‘:ラウダート・シ)で「私たちの共通の家(地球)の世話をする」と警鐘を発した。今回、同回覧から5周年となることを踏まえ、消費主義と無責任な開発を批判し、環境の悪化と地球温暖化を嘆き、世界のすべての人々に「迅速で統一された地球規模の行動」をとるよう呼びかけた。今回のメッセージは回覧に基づく祈りをささげる人々へのメッセージとして発出された。

 

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 教皇はこの中で「休息の時(A Time to Rest)」と題し、「神は『安息日』を定めて、土地と人々に休息を与え、再生できるようにした。ところが、現代社会での我々の生活手法は、地球に対して、その限界を超えて追求し、成長へのあくなき要求と、際限のない生産と消費を進め、地球の自然資源を疲弊させてきた。その結果、森林は浸食され、土壌は劣化し、草原は消失、砂漠は拡大、海は酸化され、嵐は増大している」と指摘。人類が地球を休ませることなく、こき使ってきたことの弊害を強調した。

 

 そのうえで、コロナ感染の影響で、結果的に、外出自粛や禁止、ソーシャルディスタンスの確保等の措置がとられていることで、人々はやむを得ずシンプルで持続可能な生活を再発見させられている、と述べた。「ある意味で、危機はわれわれに新しい生活に戻るチャンスを与えたのかもしれない」。そうした制約の結果、大気や水は以前よりもきれいになり、動物たちも以前生息していたところに戻るようになっている、と「パンデミックのプラス効果」に言及した。

 

 そのうえで教皇は、「コロナはわれわれをひとつのクロスロード(岐路)に導いた。われわれはこの機会を、過剰で破滅的なゴールにさらに向かうことを止めるための決断に、与えられた命の価値や人々とのつながり、お互いの活動を高めるための決断に、使わねばならない。われわれのエネルギー利用、消費、輸送、食事等のこれまでの習慣を見直さねばならない」等と強調した。

 

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 さらに「 回復の時(A Time to Restore)」として、本来の人間性を取り戻し、人間同士の緊張関係を癒す必要があるとも指摘した。具体的な言及はしていないが、米中対立や、難民排斥問題、米国等での人種差の激化等を念頭に置いているとみられる。そうした対立からの「回復」として、衡平な社会的関係の再構築を求め、お互いの債務を許し合う自由の回復を求めた。

 

 特に、人類が途上国に押し付けた膨大な生態系負債によって途上国の資源を過剰採掘してきたことを忘れるべきではないとし、「正義の回復」を求めた。その「正義の実現」として、先進国諸国は、コロナ感染拡大の影響をもっとも深刻に受けている最貧国向けの債務を放棄するよう要請した。

 

 人類は、気候危機の最中にいるとして、大地の回復を最優先するよう求めた。また若者たちが気候対策を真剣に求める中で、大人たちが時間を浪費している時ではないとも指摘。パリ協定の目標である産業革命前以来の気温の上昇を「1.5℃」未満に抑制するために、人類ができるすべてのことに取り組む必要があるとした。そのためにすべての国は、来年開く国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で従来以上に温室効果ガスを削減する野心的な国別対策公約(NDGs)を打ち出すよう求めている。

 

 教皇はこれらの指摘をしたうえで、「大地と調和をした生活をし、多様な形の生き方をしているのは先住民族たちだ。彼らの生活を、過剰な採掘をする多国籍企業から守る必要がある。これらの企業は、化石燃料や鉱物、森林資源等を壊滅的に採掘する連中だ」と痛烈に批判した。コロナ感染によって引き起こされた医療、社会、経済危機からの回復は「正義の修復の時」でもあるとした。