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グテレス国連事務総長、日本政府に対して、「早期に石炭火力発電の利用廃止」を要請。経産省のUSC集中路線も例外とせず。日本政府主催のオンライン閣僚会合で表明(RIEF)

2020-09-04 17:02:49

Guterres001キャプチャ

 

 国連のグテレス事務総長は、日本政府が3日、開いた気候変動対策を話し合うオンラインの閣僚級会合にビデオメッセージで登場、日本を含む各国に石炭火力発電の利用を停止するよう要請した。特に日本については2050年までにカーボンニュートラルを実現するため、早期に国内の石炭火力向け投融資を終了すべきと強調した。

 

 グテレス氏が日本に対して石炭火力廃止を改めて要請したのは、日本の経産省が旧式の石炭火力発電所を廃止する一方で、超々臨界圧石炭火力(USC)については今後も新規建設を含めて推進していく方針を打ち出していることを踏まえたものとみられる。同氏は、USCについては言及せず、石炭火力全体の廃止を求めたもので、USCを例外扱いにする日本政府とのスタンスの違いを示した。https://rief-jp.org/ct8/104337

 

 同氏は「私は心から、日本が石炭火力発電へのファイナンスを終了させて、2050年までにカーボンニュートラルにコミットすることを期待している。国内の石炭火力使用の早期廃止へ移行し、再エネ割合の大幅な増大に向かうことを期待している」と強調した。

 

JERAの石炭火力発電所(鹿島)
JERAの石炭火力発電所(鹿島)

 

 同氏は石炭火力廃止が必要な理由として、気候変動の科学者たちの指摘を引き合いに出し、パリ協定の目標に適合するためには、2030年まで世界全体の温室効果ガスの排出量を半減させる必要があり、2050年までにはカーボンニュートラルを実現しなければならない、という点をあげた。「これらの目標は達成可能だが、現状はその目標達成のコースからずれている」と警戒感を示した。

 

 同氏は、「(石炭火力廃止が必要という)こうした理解は日本を含む世界のトップ投資家たちにも共有されている。彼らは再生可能エネルギー投資のほうが経済的に安く、効率も高いとの理由で、化石燃料投資から資金を引き揚げている。日本の産業界も政府に対して、効果的な気候行動をとるよう求めている」とした。7月に、経済同友会が政府が設定している再エネ比率を倍近くに引き上げる提言をしたことを指しているとみられる。http://rief-jp.org/ct4/105223

 

 さらに「いずれ座礁資産(Stranded Asset)に転じる石炭火力発電事業に投資することは、経済的にナンセンスだということを(投資家は)理解しているのだ。どんな投資計画においても石炭火力発電は合理的な選択肢ではない」と、石炭火力事業が気候リスクを抱えている点を再三、強調した。

 

温暖化を加速する石炭火力に例外はない
温暖化を加速する石炭火力に例外はない

 

 こうした現状認識を踏まえ、同氏は「すべての国々に、特にG20の国々に対して、2050年までにカーボンニュートラルの達成にコミットすることを要請している。そして来年開く国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の前に、各国に対して「1.5℃目標」と整合する野心的な国別温暖化対策貢献(NDCs)と長期戦略の提出を求める」とした。

 

 そのうえで同氏は、国際的な新型コロナウイルス感染からの回復計画を各国が推進する中に、重要な気候行動を盛り込む「グリーンリカバリー」の実践を要請するとともに、よりよい経済回復のために、以下の6つの気候ポジティブ行動を提案した。

 

 ①グリーン雇用への投資②汚染排出産業を救済しない③化石燃料補助金の廃止④すべての金融と政策決定に気候リスクを盛り込むこと⑤協調して行動すること⑥もっとも重要なことは、誰も取り残さないことーー。


 同氏は日本の151の自治体が2050年までにカーボンニュートラルを支援する声明を出していることに歓迎を表明。「気候行動はクリーンエネルギー分野での雇用を作り出し、よりきれいな空気をもたらし、より良い健康と、より強い経済成長をもたらすことを、世界のリーダーたちが理解しているからだ」と述べた。

 

 また日本に対しては、「多くの分野で技術的な展開を推進しており、サステナビリティとレジリエントな回復に関したは世界のリーダーなれる能力がある。カーボンニュートラルの世界への移行を促進するイノベーティブなパワーを持っている」とし、石炭火力に拘らず、その技術を気候行動に生かす貢献を求めた。さらに、日本と他の援助国に対して、経済的に脆弱な国々への気候ファイナンスを継続し、支援を続けることを求めた。

 

 同氏は最後に、「われわれは新型コロナウイルスと気候変動という、二つの厳しい危機に直面している。二つの危機にともに取り組んで、危機に直面する現在のこの瞬間が、人々と地球の真のターニングポイントであるとの希望を将来の世代に残そうではないか」と呼び掛けた。