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米国環境17団体、日本の固定価格買取制度(FIT)の輸入木質ペレット燃料のバイオマス発電は「グリーンウォッシュ」。森林皆伐により、CO2吸収機能なく、生物多様性を破壊(RIEF)

2020-10-07 22:08:54

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 米国の環境・住民団体17団体が、経済産業省が運営する「固定価格買取制度(FIT)」で木質ペレットをバイオマス発電原料として活用を認めていることを「グリーンウォッシュ」と批判する共同書簡を公開した。日本の制度が、米国の自然破壊を進めているとの指摘だ。書簡は、FIT担当の梶山弘志経産相と本郷浩二林野庁長官に提出された。

 書簡を提出したのは、Dogwood AllianceやNatural Resources Defense Councilなど、全米の環境・住民団体。米国南部は木質ペレットの製造大手のエンビバ・パートナーズ(Enviva Partners)社の主要な原料供給地として知られる。同社は日本のFIT制度を前提にして、住友商事などの日本企業に木質ペレットを大量に輸出している。http://rief-jp.org/ct4/97225

 書簡提出団体の一つ、Dogwood Allianceの調査は、同社が製造する木質ペレットは間伐材ではなく、天然林を皆伐したり、CO2保全機能のある湿地帯も丸ごと埋めてしまう形で開発しているという。同団体は「エンビバ社は事業において責任ある行動をとっていない」と批判。そうして製造した同社製のバイオマスを「再生可能エネルギー」として、日本政府が生産消費を奨励していることは「グリーンウォッシュに他ならない」と断じている。

日本向けが3分の1を占める。その中でも住友商事が最大の輸入先
日本向けが3分の1を占める。その中でも住友商事が最大の輸入先

 エンビバ社の工場が多くあるノースカロライナ州政府は、最近、そのクリーンエネルギー計画において同州の森林を外国市場で大規模に利用することは「国内・国際的なレベルで再検討されるべき」と指摘した。州政府の公式文書でも、木質ペレット産業が伐採、加工、輸送を通じて同州の炭素排出量を増やしていることに懸念を示しているという 。

 環境団体らは、ノースカロライナ州のこれらの見解は、バイオマスエネルギーの生産と消費は有害であり、将来的には州がバイオマスエネルギー施設の操業を制限する措置を取る可能性があるということを示している、とみている。

 エンビバ社が開発する森林資源には、同州のロアノーク川流域の樹齢100年以上にも上る貴重な湿地広葉樹林も含まれる。だが、同地の広葉樹林帯の多くは皆伐され、森林の持つ生物多様性の保全機能、洪水制御、炭素の貯留などの機能が失われている。

 米国南部の森林面積は世界全体の2%。豊かな自然の恩恵で世界の丸太の12%、パルプ・紙製品の19%を生産している 。世界のどの森林よりも森林生産性が高いことになる。その開発スピードは南米の熱帯雨林が伐採される速度の4倍も早い。かつては森林資源として経済的価値があまりなかった森林が、木質ペレット産業の急成長によって伐採され、利益を生むようになっているためという。

 こうした手法で生産される木質ペレットは、CO2の吸収とは逆に、大量のCO2を排出するうえに、工場から排出されるばいじんや有害物質の排出等によって、周辺住民の喘息や心臓発作を引き起こす可能性がある。すでに、主に非白人人口が多く、貧困レベルの中央値を超えているコミュニティにおいては、そうした住民の健康影響が出ているという。

 また米国がパリ協定から離脱したことで、同国製の木質ペレットを、米国の土地利用・土地利用変化及び林業(LULUCF)部門と関連付けるのは無理が生じる点も指摘している。米国は京都議定書にも入っておらず、日本で発電に使用される木質ペレットのLULUCF排出量は国際的に計上されていないことになる。したがって、こうした米国製木質ペレットを「再エネ」と認定して、日本の排出量削減にカウントするのは「グリーンウォッシュ」になる。


 環境団体らは「日本政府が気候変動の解決策を模索していることは称賛する。しかし、私たちが住むコミュニティのすぐそばの森林を皆伐して開発した燃料での発電を促進する政策は間違っている。電気のために木を燃やすと大気中により多くの炭素が放出され、クリーンエネルギーへの道を進むのではなく、後退していくことになる。日本政府はFITから木質ペレット森林系バイオマスを除外すべきだ」としている。

https://foejapan.wordpress.com/2020/10/01/201001/