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CO2から耐久性にすぐれたプラスチック生成に成功。常圧下で簡単に変換が可能に。大阪市立大学等の研究チームが「グリーン・ケミストリー」化で論文(RIEF)

2021-08-02 17:24:12

CO2キャプチャ

 

 大阪市立大学や東北大学等の研究チームが、二酸化炭素(CO2)からプラスチックを合成する「グリーン・ケミストリー」化に成功した。チームはこれまでも触媒を使ってCO2からプラスチックの生成に成功していたが、水の発生が課題となっていた。新方式では、常圧下でCO2からPCDへの変換を実現でき、水の発生も防ぐことができたという。CO2を原料として使う一方で、生成したプラスチックを回収・再生する循環化も「グリーン化」を期待したい。

 

 研究チームは、大阪市大の田村正純准教授、東北大学の冨重圭一教授、東京大学の中山哲教授による。共同研究成果の論文「Direct synthesis of polycarbonate diols from atmospheric flow CO2 and diols without using dehydrating   agents」は英王立化学会の専門誌「Green Chemistry」に掲載された。https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2021/GC/D1GC01172C

 

 チームはこれまで、酸化セリウムを触媒に使って、高圧下でCO2と1.6-ヘキサンジオール(アルコールの一種)からプラスチックの一種であるウレタンの原料ポリカーボネートジオール(PCD)の生成に成功していた。PCDを使ったウレタンは耐久性、耐水性に優れ、スーツケース、スポンジなどに活用されている。

 

 しかし、同生成の場合、生成過程で副産物として水が発生することから、脱水剤が必要となる。これらの脱水剤の後処理が課題となっていた。そこでチームは、CO2とジオールの反応を、200℃を超す高温下で実施することで水だけを蒸発させる手法を試みた。

 

 その結果、生成できるPCDも従来の方式より純度が高まる効果も得られた。また高圧にする必要がなく、常圧下でのCO2変換を実現できたとしている。研究チームでは、今回の方式は極めて簡単にO2からプラスチックを合成できるほか、他の物質の合成にも応用できる触媒プロセスになると強調している。今後、実用化に向けて、規模を拡大した実験を進める予定としている。

 

 CO2の有効活用の可能性が出てくる一方で、生成したプラスチックの回収・再生という課題もある。研究チームには、回収・再生するプラスチックの無害化プロセスの確立にも取り組んでもらいたい。

https://www.recap.osaka-cu.ac.jp/