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2024年のパリでの次期オリンピック、セーヌ川でのトライアスロン競技開催に賛否。オリンピック後は、セーヌ川がパリっ子の水浴の場に(?)(RIEF)

2021-08-31 14:53:11

sulaキャプチャ

 

 東京オリンピックがコロナ禍で何とか開催された。次は、2024年にパリで開催されるが、パリ市内を流れるセーヌ川でトライアスロン等の競技を開催する案が物議をかもしている。東京でも同競技の会場となったお台場海浜公園の水質汚染問題が国際的に話題となったが、「セーヌ川で泳ぐ」と聞いて、パリっ子の7割が顔をしかめているという。

 

 (上の絵は、ジョルジュ・スーラの「アニエールの水浴」(1884年)。昔は確かに泳いでいたんだね)

 

「セーヌ川でオリンピックを」のスローガンは、パリ市長が開催提案に際して掲げた案だ。想定される競技は、トライアスロンのスイミングと10kmの長距離自由形(オープンウォ-タースイミング)。オリンピック後は、一般の人も、セーヌ川での水浴ができるようにするという。

 

 しかし、地元の調査会社によるフランス人対象の世論調査によると、70%の人がセーヌ川での水泳に「悪い印象」を示した。賛同して「自分も泳ぎたい」と答えたのは12%だけという。

 

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  EUでは、都市の上水道の水質改善や下水道の近代化、生活周りの水資源の維持等を目指し、「Digital Water City」プロジェクトが進んでいる。パリもその対象の一つだ。都市の水環境の改善を進めるのが主目的で、セーヌ川での水浴は、「Water City」の象徴の一つになるわけだ。

 

 セーヌ川はパリの代名詞でもある。だが、1923年以来、あまりの汚染で、健康上の理由で人が泳ぐことは法律で禁じられている。現在は下水道とは分離されているが、パリ市内の各区を巡って流れているだけに、ごみ投棄や船上生活者による生活排水も流れ込む。観光船による汚染も指摘される。

 

 1980年代のシラク市長時代の改革で水質浄化が進み、川に生息する魚類が3種類から33種類に増えるなどの改善は顕著という。しかし、川からは、下痢や吐き気、尿感染等を引き起こすエンテロコッカス腸球菌等が検出されたり、ネズミ等による感染症の影響も懸念される。

 

 専門家は、都市河川の水質改善を評価したうえで、それでも大腸菌の影響等は残っていると指摘している。中世のセーヌ川は汚染のひどさが知られていたが、現在の「きれいになったセーヌ」を、オリンピックを契機にさらにアピールし、人と自然が調和した大会にしたいとの思いもあるようだ。

 

 しかし、コロナウイルス感染症が、人と自然の境界から発生したとの指摘も続いている。「調和」は簡単でないのも事実だ。ただ、東京でも「トイレの臭いがする」と言われたお台場公園の海面の汚染対策を必死で展開し、何とか競技をこなした。パリの官民挙げてのセーヌ川対策が功を奏すれば、パリの魅力がまた一つ増えるかもしれない。

https://www.euractiv.com/section/health-consumers/news/seine-river-could-become-swimming-ground-for-paris-2024-olympics/