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気候変動での再エネシフトの中で、バイオマス発電の森林減少・生態系破壊リスク防止を求め、日韓環境NGOらが共同声明。両国首脳に、森林と土地利用の明確なルール設定求める(RIEF)

2021-10-28 13:55:13

bioキャプチャ

 

 気候変動対応で再生可能エネルギー普及が求められているが、再エネの一つとされるバイオマス発電が森林減少・生態系破壊につながるリスクを抱えているとして、日韓両国の環境NGO等が両国政府に対して、①すべての再エネ発電がパリ協定の「1.5℃目標」と整合することを義務付ける②発電のみの木質バイオマス発電の新規建設・稼働を直ちに停止――等を要請した。

 

 (写真は、木質ペレットの原料として皆伐された湿地帯=米国ノースカロライナ州、Photo: Marlboro Productions)

 

 要請行動を行ったのは、日本の「地球・人間環境フォーラム」「Mighty Earth」「熱帯林行動ネットワーク(JATAN)」「ウータン・森と生活を考える会」「プランテーション・ウォッチ」「Fridays for Future Sendai」と「バイオマス産業社会ネットワーク 」理事長の泊みゆき氏。韓国側は「Korea Federation for Environmental Movements」等の5団体。

 

 両団体の声明は、日韓政府が「2050年ネットゼロ」公約をしたことを評価し、再エネを動力源とする低炭素社会への移行を強く支持するとしたうえで、ネットゼロに向けた政策で、再エネ政策が森林(天然林および植林地を含む)を確実に保全し、気候変動を悪化させないよう要請した。

 

 日韓両国とも、化石燃料依存の経済からの転換に際して、再エネを増やす中で、米国やアジア等の森林資源を開発した木質バイオマスに頼る大規模なバイオマス発電を増やしている。声明では、「木材の燃焼によるCO2排出量は、単位エネルギー当たりで石炭からの排出量より多 く、木質バイオマスの発電への利用だけでは極めて非効率」と指摘。さらに森林伐採後、再生するまでの数十年間は大気中の炭素量が増える状態が続く点も指摘している。

 

 実際に韓国ではバイオマス発電が再エネ全体の40%を占める。日本でも、固定価格買取制度(FIT)により輸入ペレットやチップを燃料とする大規模バイオマス発電が増加、木質ペレットの輸入量は、2012 年の 7万2000㌧から 2020年には30倍近い200万㌧に拡大、さらに増加の勢いを示している。また経済産業省が石炭火力発電等を維持するため、石炭の一部をバイオマス燃料に置き換える混焼方式を推奨していることで、今後さらにバイオマス燃料の輸入量が増え、産地での生態系破壊等の増大が懸念されている。

 

 こうした点を指摘したうえで、環境NGO等は日韓両国の政府首脳に対して、COP26の前に森林保全のために次のような4項目の改革案を求めた。

 

 ①すべての再エネがパリ協定の1.5℃目標と整合し、そのライフサイクルを通じて、短期的な排出削減に貢献することを義務付ける。

 

 ②発電のみの木質バイオマス発電所の新規建設・新規稼働を直ちに停止する。

 

 ③バイオマス発電のための一連の包括的な環境基準を導入し、すべての既存の木質バイオマス発電所が以下に適合することを確保する。

  a) ライフサイクルGHG排出量の報告

  b) パリ協定の目標に沿った厳しい排出規制

  c) 木質バイオマス燃料の持続可能性基準

  d) 木質バイオマスエネルギーのカスケード利用

 

 ④COP26において、森林と土地利用について、森林減少の停止と回復のために強力な政治的コミットメントを示す。2030年までに森林減少を止めるというニューヨーク宣言(NYDF)の目標の達成に取り組む。

 

Microsoft Word – Korea_Japan NGO Statement_Jp_final.docx (gef.or.jp)