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米国は「民主主義が後退している国」。スウェーデンの公的機関が報告。トランプ前大統領の大統領選挙への異議や、「フロイド事件」等が影響。日本は「中程度の民主主義国」。女性活用は超低位(RIEF)

2021-11-23 12:03:06

IDEA001キャプチャ

 

 スウェーデンの政府間組織「民主主義・選挙支援国際研究所(IDEA)」は22日、世界の民主主義の現状を分析した「民主主義の世界的状況(Global State of Democracy: GSD)2021年」報告書の中で、初めて米国を「民主主義が後退している国」に分類した。世界の7割の人々は、非民主的あるいは民主主義が後退している国に住んでおり、民主主義が高い水準にある国に住む住民はわずか9%。日本は「中程度の民主主義」と評価されている。

 

  IDEAでは、世界約160か国について過去50年間の民主主義指標に基づいて評価し、「民主主義国(後退国を含む)」「ハイブリット型政権」「権威主義的政権」の三つに分類している。このうち「ハイブリッド」は民主主義国と権威主義的政権の両方の特徴を踏まえているが、「民主的」ではない。

 

 米国は民主主義国に分類されるが、その中でも今回、初めて一段落ちる「民主主義の後退国」とされた。同国の民主主義の目に見える悪化は2019年から始まり、「歴史的な転換点は2020〜21年、ドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領が2020年米大統領選の結果の正当性に疑義を唱えた際に訪れた」。さらに、黒人男性ジョージ・フロイドさんが警官に殺害された事件後に全米に広がった2020年夏の抗議デモの中で、集会・結社の自由の質が低下した。

 

 個別項目では、米国は、公平な行政(汚職と予測可能な執行)の指標等は、2020年には従来よりも向上している。しかし、市民の自由や政府に対するチェック機能の指標は低下している。このため、「(米国の)民主主義の根本に深刻な問題があることを示している」と説明されている。

 

 「民主主義の後退」が顕著な国は、米国のほか、インド(宗教を民族主義的戦略に活用)、ジェンダー公平性を攻撃したり、LGBT差別等が激しいハンガリー、ポーランド、トルコ等、さらにブラジル、フィリピン、スロベニア等が含まれている。これまで「民主主義の後退」に分類された国のほぼ3分の1は、その後、「権威主義的政権」に転じている。

 

 過去10年余で、「民主主義の後退国」は約2倍に増加した。また、2020年には「権威主義」に転じた国の数が、民主化した国の数を上回った。IDEAは、この傾向は2021年も続くと予想している。

 

 日本は「民主主義国の中で、中程度のパフォーマンス国」との位置づけだ。この評価は1995年以来のもので、それまでの日本新党等の革新政党の連立政権や、自民・社会・さきがけ連立政権等の時代は「高い水準の民主主義の国」との評価で、その後、現在まで続く自民・公明連立政権、民主党政権時代を含め、「中程度」にランクダウンしている。

 

 日本はアジア太平洋諸国の間では、基本的人権の確保等では上位に位置付けされるが、女性の人材活用では低位となっている。国会議員に占める女性の割合は10%で、それ以下のアジアの国はソロモン諸島、スリランカ、パブアニューギニアの3カ国しかいない。

 

 「政府へのチェック機能」の評価では日本は、2015年時にはオーストラリア、ニュージージランドに次いで3位だった。だがその後、2020年には若干低下した。この間に急改善した韓国に抜かれて4位に下がった。政府へのチェック機能は、効率的な議会、司法の独立性、メディアの正統性の3つの要因で評価している。

 

 全体として、民主主義国に分類されるのは98か国で、近年では最少となった。「ハイブリッド型」の国は20か国で、ロシア、モロッコ、トルコなどが含まれる。「権威主義的」な国は47か国で、中国、サウジアラビア、エチオピア、イランなどが入っている。また、民主主義国の弱体化傾向は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行が始まって以降、「より深刻で憂慮すべきものになっている」と指摘している。

 

https://www.idea.int/gsod/sites/default/files/2021-11/state-of-democracy-in-asia-and-the-pacific-2021.pdf