HOME12.その他 |世界「終末時計」。今年は昨年同様、人類滅亡まで「あと100秒」で踏み止まる。新たな脅威に「偽情報」。各国首脳の責任を問うとともに、市民の政治家への「問いかけ責任」求める(RIEF) |

世界「終末時計」。今年は昨年同様、人類滅亡まで「あと100秒」で踏み止まる。新たな脅威に「偽情報」。各国首脳の責任を問うとともに、市民の政治家への「問いかけ責任」求める(RIEF)

2022-01-21 12:37:18

doomsday001キャプチャ

 

  米誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ(Bullention of the Atomic Scientists : BAS)」は20日、人類が滅亡するまでの残り時間を示す「終末時計(Doomsday Click)」の針が、昨年に続いて今年も過去最短の100秒となったと発表した。危機継続の要因としては、一昨年来の課題である新型コロナウイルス問題がワクチンの普及等での改善があったものの、新たにフェイクニュース(偽情報)の増大等が危機を高めている点を挙げている。

 

 BASは、1945年にアインシュタインや米国のマンハッタン計画に参加したオッペンハイマーらの科学者たちが、原爆による人類の滅亡危機に警鐘を鳴らすため設立した。BASは47年に人類が破滅にどれくらい近づいているかをわかり易く説明するために「終末時計」を制定した。人類相互の危険、希望、注意を象徴するものとみなされている。時計は今年で設置から75年になる。

 

 BASの社長兼CEOのレイチェル・ブロンソン(Rachel Bronson)氏は「終末時計の針が人類滅亡を示す午前零時に向けて進んでいないのは、脅威が安定しているためではない。世界はむしろ極めて危機的な状態のままとどまっており、時計は終末にかつてなく近づいた状態にある」と警告した。特に新たな脅威として浮上している「フェイクニュース」について「各国指導者はフェークニュースに対抗し、科学に注意を払い、協力しなければならない」と指摘した。

 

 今年の特徴としては、「基本となる核兵器の脅威、気候変動、コロナウイルス、破壊的技術等の危険性の脅威と継続によって進行している。これらの脅威は、合理的な判断を損なう間違った情報の拡散等によってさらに悪化が進んでいる」としている。BASは現在の脅威を解消するために、世界の主導者たちに向けて、13の勧告を提唱した。このうち4つの勧告は気候関連となっている。

 

①米ロ首脳は、2022年末までに核兵器とその搬送システムについて野心的で総合的な対策を明確にすべき。核兵器の役割、ミッション、予算等の削減・制限により、核兵器への依存を削減することに合意すべき

②米国等の国々は、気候変動のコミットメントと整合した脱炭素化を加速すべき。中国は提唱する「一帯一路」イニシアティブにおいて、持続可能な発展の道筋を追求する事例を設定すべき

③米国や他の主導者たちは、世界保健機関(WHO)等を通じて、すべての生物関連リスクを削減するため、動物と人類の接触のモニタリングや、国際的疫病の監視・報告体制の改善、医療供給と病院能力の機能と配分を増大すべき

④米国は同盟先や対抗先に対して、核兵器の先制使用をしないことを明確にして安全性を進め、それらを、ロシア、中国と関係する政策において宣言するべき

⑤バイデン米大統領は核兵器使用の最終権限を取り除き、他の核保有国についても同様の措置をとるよう説得すべき

⑥ロシアはNATOロシア協議会に再参加し、リスク削減と危機加速を回避するために協力すべき

⑦北朝鮮は核実験と長距離ミサイル実験の一時停止と、ウラン濃縮とプルトニウム生産の一時停止の他国による検証を実現すべき

⑧イランと米国は共同総合行動計画の完全な遵守に共同で戻るほか、中東の安全保障とミサイル制限についての新たな幅広い話し合いを主導すべき

⑨官民の投資家は、投資資金を化石燃料事業から引き上げ、気候フレンドリーな投資に切り替える必要がある

⑩世界の富裕国は途上国が強い気候行動をとれるように金融支援と技術協力を提供することが必要。コロナ回復関連の投資も、経済の各分野での気候緩和・適応の目的を優先するべきで、潜在的な温室効果ガスの削減をフルレンジで促進すべき。対象となる資本投資は、都市開発、農業、輸送、重工業、ビルディングと機器、電力等を含む

⑪各国首脳や国際機関は生物関連の研究や開発努力をモニタリングするための効果的な体制を設けるべき

⑫各国政府、技術会社、学識専門家、メディア企業等は、インターネットを通じた誤情報や偽情報と闘うための実務的で人権に配慮した方法での確認と実施で協働することが必要だ

⑬すべての国の市民は、すべてのコミュニティ、地域、国の各レベルでの政治家やビジネス、宗教リーダー等に対して、「あなたな気候変動を解決するために何をしていますか」と問うことで説明責任を果たすべき

 

 BASは今回の75回目の時計の公表を受けて、世界中の人々が脅威を克服するために共に行動する「正しい情報」をSNSを通じて発信する「#TurnBackTheClock(時計を巻き戻そう)」を広める発信を始めた。

 

 BASのプログラムに関与している米ニューヨークタイムズ紙の科学コミュニケーター、Hank Green氏は「だれも一人では世界を変えることはできない。すべての人が合意できるわけでもない。しかし、ともに行動しなければならない。ともに行動することで、脅威を克服することができるはずだ」と述べている。

https://thebulletin.org/2022/01/press-release-at-dooms-doorstep-it-is-100-seconds-to-midnight/