米国の大寒波で、コウモリが次々と墜落。橋の下のコロニーでぶら下がる体力が尽きる。5年前には豪州の熱波で墜落するコウモリも。気温変動がコウモリの習性を上回る状況に（RIEF）
2023-01-02 02:14:01
大寒波に見舞われた米テキサス州ヒューストン（Houston）で、橋の下にすみ着いているコウモリが「低体温でショック状態」になり地面に落ちる出来事があった。昨年末に地元の動物愛護団体が急きょ保護対策を実施、墜落したコウモリの大部分は橋の下の元居いた場所に戻された。地面に対してさかさまにぶら下がる習性のコウモリが気温の急速な変動で墜落する事態は、猛暑の際にも起きている。気候変動の激化が生態系の自然な習性では対応不可能になる事例といえる。
（写真は、保護され、毛布でくるまれたコウモリ）
地元の動物保護団体「「ヒューストン・ヒューメイン・ソサエティー（Houston Humane Society）」の公表によると、集団落下したコウモリはメキシコオヒキコウモリ。小型のコウモリで、尾は体長の3/5ほどある。尾の1/3～1/2が飛膜の外に突き出ているのが特徴。
アメリカ大陸に自生しており、夏はアメリカ北部で暮らし、冬になると1000km以上も飛行して、メキシコの中部まで移動する「渡りコウモリ」もいる。洞穴や橋の下等に生息する習性がある。ただ、小型のため、必要最小限の脂肪しかついておらず、急激な気温の低下にさらされると、耐え切れず、墜落する。
今回のヒューストンでの「惨劇」は凍えて足の握力が失われ、ウォー橋（Waugh Bridge）の下の営巣場所から、約9m下の地面に、大量に落ちたとみられる。同保護団体によると、昨年12月22日に気温が14.4℃から急低下して翌日にはマイナス9.4℃にまで低下した。この急冷状態にコウモリたちは耐え切れず、次々に落下。同団体が保護したコウモリ数は合計929匹にもなった。
同団体は保護したコウモリを温め、水分や栄養を与えて回復を図った。市民ボランティアも加わり、28日までに合計約1500匹が保護された。同団体では保護したコウモリを、暖かい保護施設や団体幹部の自宅の屋根裏部屋等で体力を回復するまで保護したという。大半のコウモリは温めて水分を補給してやると、回復したものの、中には重症に陥ったものもおり、同団体では、ふ卵器に入れられ点滴を施したという。28日には気温は幾分上昇したことから、保護されたコウモリの大半は元の生息場所に戻された。
テキサス州の各地には多数のコウモリのコロニーが形成されていることで知られる。同州のオースチンのAnn W. Richards Congress Avenue Bridgeの下には、都市では世界最大とされるコロニーがあり、その数は150万匹とされる。夕方になるとコウモリたちは、橋下からエサを求めて退去して空中に飛行することから、見物客が詰めかける観光名所にもなっている。
逆に気温が上昇し過ぎた場合もコウモリたちは、墜落する。2018年1月、連日猛暑が続いていたオーストラリアで、希少動物に指定されている同国最大のオオコウモリが生息場所としている木から落下し、数百匹も死ぬという事態が起きている。45℃を超す熱波でコウモリは脳をやられて「過熱状態」になり、墜落したとされる。https://rief-jp.org/ct12/75812
同国でも落下したコウモリは救助隊に救助されたが、中には、木にぶら下がったまま死んでしまったコウモリも多数いたという。自然状態を上回る熱波でコウモリたちは脳をやられて、墜落したとみられる。本来はコウモリたちは気温の変動に順応できる体力や習性があるはずだ。だが、気候変動の激化による気温上下変動が急激過ぎることで、力尽きてしまうようだ。https://rief-jp.org/ct12/75812
気候変動の激化が自然生態系に与える損傷等の影響はすでに広範囲に及んでおり、コウモリの「墜落」事故は、その一例に過ぎないのかもしれない。
Research Institute for Environmental Finance