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フィリピン・マニラのWHO西太平洋地域事務局長の葛西健氏を、WHOが解任。特定国の職員に対する「人種差別的発言」等が理由。日本の人権判断が国際的に問われる事例に(RIEF)

2023-03-09 18:19:47

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 世界保健機関(WHO)は8日、西太平洋地域事務局(フィリピン・マニラ)事務局長の葛西健事務局長が特定国の職員に対し、人種差別的、威圧的な言動をしたとして、職員らから告発されていた問題で、調査の結果、不適切行為が認定されたとして、同氏を解任したと発表した。調査を踏まえた地域委員会での投票の結果、賛成多数で解任が支持された。

 

 2021年10月、WHOの同事務局の職員ら数十人が、葛西氏の行為をWHO本部に対して内部告発を行った。職員グループは22年1月半ばにも、WHO執行理事会のメンバー国宛てに、メールで葛西氏の言動を批判する書簡を送っていた。https://rief-jp.org/ct12/121927

 

 葛西氏は、慶応義塾大学医学部出身の医師。岩手県、厚生省等の勤務を経て、WHO西太平洋地域事務局感染症対策課長、WHO ベトナム代表、同地域事務局次長を経て、2019年2 月より同事務局長を務めていた。

 

 職員らの告発では、葛西氏は西太平洋地域事務局の事務所で、「組織的ないじめと人前でのあざけり」が横行する「有害な職場環境」をつくり出したほか、現地のフィリピン人を中心とする「特定の国籍の職員に侮蔑的な発言」をしたとされる。また、新型コロナ関連でのワクチン関連の機密情報を日本政府に漏らしていたとも告発されていた。

 

 告発を受けたWHOでは、葛西氏を休職扱いとした上で内部調査を進めていた。その結果、「調査によって、不適切な行為があったことがわかった。結果を慎重に検討し、地域委員会や理事会での協議の結果、事務局長を解任した」と説明している。



 WHOでは、調査結果を受けて、先週、地域委員会で同氏の処遇を協議し、25の国と地域による採決の結果、賛成13、反対11、棄権1で僅差だが、解任が議決されたたことを受けて、本部のジュネーブでの理事会で最終決定したとしている。

 

 メディアの報道によると、葛西氏はこれまで「自分自身、また職員にも多くを求めている。特に新型コロナウイルス対策ではそうしてきた。ただその結果、職員が敬意を欠く扱いを受けたと感じることがあってはならない」と説明。職員の告発に対しては「職員に厳しくしてきたことは事実だが、特定の国籍の職員を標的にしたという指摘は否定する」と反論、ワクチン情報を日本に伝えていたという疑惑にも否定していた。

 

 同氏の解任を受け、WHO本部の事務局長を務めるTedros Adhanom Ghebreyesus氏が、各国に対して候補者の提案を求め、10月の地域委員会で投票が行われる。新規の地域事務局長が選ばれるまで、事務局次長のZsuzsanna Jakabfic氏が代理を務める。

 

 松野官房長官は、記者会見で「日本政府は人種差別やハラスメントを容認しないというWHOの政策を支持する立場だ」と述べたうえで、「本件は選挙で選ばれた地域事務局長に処分を行うものであり、調査や事実認定が公正、公平に行われ、地域委員会の加盟国がコミットしたうえで行われる必要があると一貫して主張してきた。これ以上の詳細は人事に関わる事柄の性質上、差し控えたい」とした。