HOME |ダイキン工業の大阪・淀川製作所周辺住民の血液検査で、3割から米「健康リスク」基準を上回るPFAS値検出。同社は2012年に国内でのPFAS製造・使用を中止するも外部に説明せず(各紙) |

ダイキン工業の大阪・淀川製作所周辺住民の血液検査で、3割から米「健康リスク」基準を上回るPFAS値検出。同社は2012年に国内でのPFAS製造・使用を中止するも外部に説明せず(各紙)

2024-08-12 18:06:37

  各紙の報道によると、大手空調メーカー、ダイキン工業(大阪)の淀川製作所(大阪府摂津市)周辺住民の血液検査の結果、約3割から米国アカデミーが示している「健康リスクが上昇し得る」とされる指針値を上回ったことが、研究機関と住民団体の調査で明らかになった。汚染源とみなされるダイキンの同工場では1960年代後半からPFASの一種、PFOAを取り扱っていた。同社では、2012年になって同工場を含む全ての国内工場でのPFOAの製造・使用を中止していたとしている。
 メディアの報道では、ダイキンの広報担当者は検査結果について「当社が実施したものではなく、分析方法や精度などの実施内容の詳細を把握していないことからコメントは控える」と述べたとされる。

 

 今回の住民調査は、京都大学の原田浩二准教授の研究チームと市民団体「大阪PFAS汚染と健康を考える会」が、同工場に近接する大阪府と兵庫県の住民、1190人を対象に昨年9月から12月にかけて実施した。
検査はPFOAやPFOSなど代表的なPFAS物質の4種類を調べた。これら4種を含む7種類の合計値として、対象者の31%に当たる364人が、米国アカデミーの指針値(1㍉当たり20㌨㌘)以上のPFAS値を検出した。ダイキンはPFASの一種のPFOA(ペルフルオロオクタン酸)についてはサイトで「界面活性剤としてフッ素ポリマー製造時の助剤等に利用されたほか、PFOAを使用した化学製品は、撥水・撥油剤、防汚剤等、身近な製品(繊維、電子基板、自動車、食品包装紙、石材、フローリング、皮革、防護服等)に使われてきた」と説明。
 同社では2006年に、他の世界の主要フッ素化学メーカー7社とともに、2015年までにPFOAおよび関連物質の全廃を目指す「PFOA自主削減プログラム(PFOA2010/2015スチュワードシップ・プログラム)」に参画し、2012年までに淀川製作所(大阪府摂津市)でのPFOAの製造・使用を終了、2015年までに、海外を含めた当社グループ内でのPFOAの製造・使用を終了した、としている。

 

住民の血液検査結果を記者会見で説明する京大の原田准教授
住民の血液検査結果を記者会見で説明する京大の原田准教授

 

 指針値超えの結果が出た住民は、同製作所のある府北部で多かったが、南部でも計測された。PFOAが高く出る人が多かったが、ダイキンが取り扱っていないPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)も検出されていた。血液検査対象者全員の平均値は17.7㌨㌘。米軍基地に近い東京・多摩地域の井戸で検出されたPFAS濃度と同レベル高水準だった。数値が最も高かったのは兵庫県内に住む同製作所の元従業員で約610㌨㌘だった、という。
  平均値のうち、大阪府在住の対象者の平均値は17.2㌨㌘で、国が2021年度に国内3カ所で実施した調査のおよそ2倍に相当するとしている。検査対象としたPFAS7物質のうち、主要なPFAOとPFOSの2種類でみると、検査した人のおよそ13%が米アカデミーの指針値を上回った。

 11日に記者会見した原田氏は「(検査結果からは)幅はあるが想定より広く健康リスクが懸念される結果になった」「PFASは幅広く利用されているため発生源が分かっていないケースは多く、検査すれば全国どこでも高濃度が検出される可能性はある」と述べ、全国的な調査や日本での基準値策定の必要性を説いた。

住民自身による血液検査の取り組み
住民自身による血液検査の取り組み
ダイキンの淀川製作所は、フッ素化学世界第2位の「化学部門」をはじめ、「空調部門」「油機部門」「特機部門」等の4つの製造部門とグローバル研究開発拠点である「テクノロジー・イノベーションセンター」が集約されている。同社では「共存する多彩な技術の交差点」と誇っている。
 同社自身は今回の民間調査の結果について、コメントを出していない。焦点の淀川製作所では50年前後にわたってPFAOを取り扱ってきたが、その後、2012年になって同製作所だけでなく、国内全ての国内工場で製造・使用を中止したとしている。同製作所でのPFAOによる従業員等への健康影響を把握していたのか、などについては外部に明確な説明をしていない。PFAOリスクを内部で握しながら、周辺住民などへの情報開示を怠った可能性も指摘される。