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国連生物多様性条約(COP16)会議。新たな基金設立や、国別国際戦略の提出等を果たせず閉幕。財政負担増を警戒する先進国の壁大きく。遺伝子資源の利益配分の「カリ基金」は設立(RIEF)

2024-11-04 20:28:08

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写真は、COP16を仕切った議長団=IISDのサイトから)

 

  コロンビア・カリで開いていた国連生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)は2日、終了した。期待されていた新たな生物多様性基金の設立は合意できず、前回のCOP15で採択された「生物多様性の損失を食い止め、反転させる」ための23項目の国際目標のための各国の国家戦略の提出もわずかでしかなかった。一方で、遺伝資源(DSI)の利益配分を目的とした「カリ基金」の設立は辛うじて合意した。DSIを使う企業が企業規模や貢献割合に応じて自主的に拠出する内容で、基金規模は今後定まる。会議に参加した環境NGOなどでは「会議は失敗」との評価があがっている。次のCOP17は2年後にアルメニアで開く。

 

 Cop16は10月21日に開幕。11月1日までの会議日程だったが、交渉が難航したことから日程を延長し、11月1日の夜を徹しての議論となった。徹夜となった本会議は10時間を超えた。2日未明になって、中小国を中心に、会場を離れる締約国が相次ぎ、締約国の3分の2と定める会議の定足数を割り込んだことから会議は終了した。明確な成果が無かったことを象徴するような「尻切れトンボ」な終わり方だった。

 

 各紙の報道によると、2022年のCOP15で採択された昆明・モントリオール合意の一環として、先進国は2025年までに毎年200億㌦、2030年までに毎年300億㌦を自然保護のために提供することで合意していた。しかし、実際の資金拠出は、OECDの報告によると2022年では、あらゆる資金源からの拠出総額は約154億㌦にとどまっている。

 

本会議の様子
本会議の様子

 

 そのうち、富裕国による拠出金は、今回のCOP16会議で8カ国が新たに拠出を表明した1億6300万㌦を含めても、合計で約4億㌦分しか確保されていないという。このため、COP15で創設された生物多様性基金の今後の発展について、各国政府間で意見対立が激しく展開された。途上国等は、国連の地球環境ファシリティー(GEF)内に置かれている現行の基金に代わる新たな基金の創設を主張した。GEFは生物多様性のホットスポットへの資金提供や、現地で自然を守る先住民や地域社会へのアクセス提供に効率的ではないとの理由だ。

 

 これに対し先進国を中心として、「そうした新たな基金の創設は時間を無駄にし、努力が分散されてしまう」と反論した。GEFのCEO、ロス・マヌエル・ロドリゲス(Carlos Manuel Rodriguez)氏はメディアに対して、「新たな基金を創設することは生物多様性への資金提供を『細分化』することにつながる可能性がある。われわれの限界は資金面にある」と述べ、新基金の設立に疑問を示した。

 

 議長国のコロンビアは、2026年に開催する次期COP17までに「包括的な資金調達ソリューション」を考案するための「会合期間外プロセス」を開始するとする文書を提案した。同提案は新規基金を2030年までに設立することにウエイトを置いたもので、アフリカ諸国、ボリビア、ブラジル等は同文書を支持した。これに対して、カナダ、スイス、日本、ニュージーランド、EU等は提案に反対し、代わりに、その次のCOP18までに現行の仕組みを評価することを提案した。途上国側はこうした提案を「先送りのための時間稼ぎ」と反発した。

 

COP16の会場の様子=IISDのサイトから
COP16の会場の様子=IISDのサイトから

 

 EUの交渉担当者は、「新たな基金といっても、新たな資金調達を意味するわけではない。多数の基金やそれらに伴う管理負担等を(拠出国として)自国の市民に説明するのは非常に困難だ。自国の市民は納税者であり、市民の税金が政府による公的開発援助(ODA)の財源になっている」と反対理由を強調した。

 

 しかし、ブラジルの首席交渉担当者はこれに反論し、「先進国は支援を望んでいないように見える。解決策が見つかるまでは自国の代表団はそれ以上の議論には応じられない」と不満を示した。

 

 COP15では、グローバルな生物多様性を損失から増加に反転させるための23項目の国際目標を設定した。締約国はそれぞれの項目についての国家戦略を今回の会議で提出することになっていた。また、その取り組みの効果などを評価するための指標づくりもテーマだった。指標化の議論は、準備会合段階でも進められ、数値などで成果を示しにくい項目は、選択回答式(バイナリー)指標を取り入れる方向で調整が進められてきた。しかし、本会議での正式合意は見送られ、持ち越しとなった。

 

 国家生物多様性戦略の提出数は、最終的に条約署名の196カ国中わずか44カ国にとどまった。ただ、119カ国は既存の国家目標の改訂版を提出した。

 

 対立が先鋭化した中で、数少ない合意となったのが遺伝子情報(DSI)がもたらす利益を原資とする国際基金(カリ基金)だ。DSIは「生物遺伝子DNAの解析から得られたデジタル化された塩基配列データ」のことで、DSIを使って利益を得る大手の製薬会社が、利益や売り上げの一部を、企業規模と当該企業の貢献に応じて基金に自主的に拠出する内容だ。DSIを研究等に活用する学術機関などは拠出の対象外とする予定。

 

 また、先住民のための常設機関の設立も合意された。同機関は、先住民が直面する課題に取り組むことを目的とする。先住民の意見が今後のCOPの意思決定に、かつてないレベルで反映するすることが奨励されることになる。生態系の保全と密接な生活圏の中で生きる先住民の存在が、国連生物多様性条約の実践に、より大きな存在感となるとみられる。

 

 最終的に、時間切れの格好で終了したCOP16について、WWFインターナショナル事務局長のキルステン・シュイト(Kirsten Schuijt)氏は「今回のCOP16の結果は、昆明モントリオール生物多様性枠組みの実施を危うくする。誰もがこの結果に満足するはずがない」とコメントした。

https://www.cbd.int/article/agreement-reached-cop-16

https://www.worldwildlife.org/press-releases/some-successes-but-cop16-in-cali-ends-in-disappointment-with-crucial-finance-agreements-delayed