HOME |カリフォルニア州議会上院院内総務。人気球団「ドジャース」に対して石油会社とのスポンサー契約は「スポーツウォッシュ」として、契約破棄を求める。日本のプロ野球でも同様の例(RIEF) |

カリフォルニア州議会上院院内総務。人気球団「ドジャース」に対して石油会社とのスポンサー契約は「スポーツウォッシュ」として、契約破棄を求める。日本のプロ野球でも同様の例(RIEF)

2025-05-08 13:27:15

スクリーンショット 2025-05-08 121628

写真は、ドジャースの試合の前に、化石燃料会社のスポンサー契約破棄を求める環境NGO等の活動=シェアクラブのサイトから引用)

 

  大谷翔平選手などの日本人選手が活躍し、NHK BSで試合が毎日生中継されるアメリカ・大リーグの人気チームのロサンゼルス・ドジャースが、石油/ガスの化石燃料企業とスポンサー契約を結んでいることに対して、環境団体などから、気候危機を無視するものとして、スタジアムに設置されている対象企業の広告塔を撤去するよう求める声が高まっている。さらに、カリフォルニア州議会民主党のトップである上院院内総務のレナ・ゴンザレス(Lena A. Gonzalez)氏が同運動に連帯を表明し、政界も巻き込む形になってきた。

 

 ドジャースに「クレーム」をつけているのは、米国最大の環境保護団体シエラクラブのほか、気候変動問題の研究者、それに地元メディアなどで、人気チームの「気候責任」を求めるキャンペーンとして、市民の間にも広がりを見せている。

 

新たに同キャンペーンに賛同した形の民主党のゴンザレス院内総務は、ドジャース球団のオーナーに対して化石燃料企業とのスポンサー契約の破棄を求める手紙を送ったとしている。同氏は「州政府は石油会社、及び大量の化石燃料を使っている公益企業に対して地球温暖化の責任を問うている。プロスポーツがそうしたビジネスとスポンサー契約していることを、コミュニティは甘受できないし、地球の利益に背く」「ドジャースよ、地球温暖化にいっしょに対峙し、共に戦おう!」と語っている。

 

ストップ「スポーツウォッシュ」のキャンペーンロゴ
ストップ「スポーツウォッシュ」のキャンペーンロゴ

 

 カリフォリニア州は山火事、洪水、旱魃にしばしば襲われている。州政府は「気候変動で増大する自然災害の影響については、化石燃料ビジネスに重大な責任がある」という立場を鮮明にしており、州司法省が石油会社などを相手取って多くの訴訟を起こしている。

 

 ドジャースに対するキャンペーンには、環境運動の活動家だけでなく、ハリウッドの有名俳優も参加しており、ドジャースファンもスポンサー契約の破棄を求める署名活動に参加している。ドジャーズスタジアムの外側では、試合の日には「ドジャースよ、スポンサー契約を破棄しろ!」と書かれたプラカードを掲げるデモ行進が行われている。シエラクラブは今春、専門家を集めて公開のパネルディスカッションを開催した。

 

 キャンペーンで当面の標的になっているのは、ヒューストンに本社のある大手の石油会社フィリップス66(石油精製と石油製品の販売会社)。同社は、オレンジの円弧に青文字で「76」と書かれたロゴマークがよく知られる石油ガススタンドチェーンを展開している。球団が所有するドジャーススタジアムのあちらこちらに同社のロゴマークが掲示されている。特に外野のライト/レフトのスタンドの両翼にある夜間照明塔の足元に、同社の大きな広告塔が目立っている。

 

 ドジャースと「76」の付き合いは、ドジャースがニューヨーク・ブルックリンからロサンゼルスに移転した時にさかのぼる。当時、「76」を所有していたユニオン・オイルがドジャーススタジアムの建設資金を支援した。以来、ドジャースの試合では、「76」がテレビ、ラジオの中継で広告主になっている。

 

ドジャーススタジアム㊨と広告主のロゴ㊧(Adbeから)
ドジャーススタジアム㊨と広告主の石油会社フィリップス66が掲示するロゴ㊧(Adbe Stockから)

 

 以前、タバコ企業のスポンサーシップをめぐっても同じ批判があったが、環境運動グループは、「公害企業がプロスポーツのスポンサーになるのは『スポーツウォッシュ』を狙っているためだ」と主張している。法的、あるいは倫理的に問題を抱える企業が、プロスポーツという健全なビジネスを使って悪い企業イメージを洗い流すことを「スポーツウォッシュ」と呼ばれる。ドジャースに対してスポンサー契約の見直しを迫るキャンペーンに賛同する人々は、「ドジャースはスポーツウォッシュの共犯者になっている」と考えている。

 

 アメリカでは、野球だけでなく、プロスポーツ全体で59チームが化石燃料関連ビジネスとスポンサー契約をし、多額の資金を得ているという。

 

 地元紙は「自分が応援する球団の選手が地球温暖化を隠すプロパガンダの片棒を担がされているのはいたたまれない」というドジャースファンのコメントを紹介している。そうしたファンの間には、ワールドシリーズのチャンピオンチーム、ドジャースが地球温暖化に立ち向かう範例を示せば、他のチームも後を追いかける、という期待がある。

 

 石油会社大手のシェブロンが今春、ルイジアナでの裁判で海岸汚染の責任を問われて7億4000万㌦の賠償を命じられた際も、シェブロンが、ニューオーリンズで開催された2025年のスーパーボウルのスポンサー企業になっていたことから、その時も「スポーツウォッシュ」が話題になった。環境破壊企業のイメージを隠し、消費者をミスリードして来たのではないか、という疑いだ。日本でも、CO2排出量が日本で最も多いJERAがプロ野球セリーグのスポンサーになっている。

 

 国連のアントニオ・グテーレス事務総長は2024年に「グリーンウォッシュ」を警告し、メディアが化石燃料ビジネスの広告を禁止するように求めたことがある。

                         (矢作弘)

 https://www.sierraclub.org/angeles/blog/2025/02/76-gasoline-sponsors-dodgers-so-what