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米環境保護庁(EPA)。バイデン前政権が定めた飲料水中の有機フッ素化合物(PFAS)規制をほぼ撤回へ。化学会社だけでなく、水道事業者への訴訟拡大の回避が狙いか(RIEF)

2025-05-15 14:03:11

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写真は、非営利団体「Earthjustice」のサイトから引用)

 

  米環境保護庁(EPA)は14日、バイデン前政権が昨年4月に打ち出した飲料水に含まれる有機フッ素化合物(PFAS)規制の大部分を撤回すると発表した。バイデン政権下の規制はPFASのうち、パーフルオロオクタン酸(PFOA)など5種類に上限値を設定し、3年以内にモニタリングを完了したうえで、全米の公共水道システムでそれぞれの測定値の公表を義務付けるもの。トランプ政権はこうした義務化を撤回し、さらに2種類のPFAS物質は現行の基準を維持する。米国ではPFASによる健康被害で化学会社を訴える市民の訴訟が相次いでおり、トランプ政権はPFAS規制を緩和することで訴訟が水道事業者等に拡大することを抑える狙いがあるとみられる。

 

 EPA長官のリー・ゼルディン(Lee Zeldin)氏は、飲料水中のPFOAおよびパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)等について、バイデン前政権時の規制強化策を廃して、現行の国家一次飲料水規制(NPDWR)の水準を維持すると発表した。

 

 同氏は「飲料水中の PFAS から米国国民を守る取り組みは、トランプ政権の初期に開始され、私の指導の下でも継続される。われわれは飲料水中PFOA および PFOS から米国民を守るため、EPAの全国基準を維持する道を進んでいる。同時に、順守のための追加的な時間という形で、常識的な柔軟性を提供できるよう努める」等とコメントした。

 

 昨年4月にEPAが発表したPFAS規制強化策では、健康への悪影響が早くから知られている代表的な物質のPFOSとPFOAについては、最大汚染物質濃度(MCL)をそれまでのEPA勧告値(両物質合計で70ng/L)から4ng/L(水1㍑当たり4ng)へと17.5倍強化する内容だ。両物質以外のPFNAやPFHxS、GenXと呼ばれるPFAS物質のMCLは10ng/Lに強化する。https://rief-jp.org/ct12/144582?ctid=

 

 さらに対象となる全米の約6万6000の公共水道事業者は、飲料水中のPFAS濃度が新たなMCLに抵触しているかどうかを、2027年までの3年間のモニタリングで確認する必要がある。2027年までの初期モニタリング後も継続的なコンプライアンス・モニタリングを実施し、飲料水中のPFAS濃度に関する情報を常に、一般に公表しなければならない。https://rief-jp.org/ct12/144777?ctid=

 

 モニタリングの結果、飲料水中のPFAS濃度がMCLを超えた場合、当該の公共水道事業者は2029年までにPFAS濃度を削減する解決策を実施しなければならない。さらに2029年以降は、1物質でもMCLに違反した公共水道事業者は、飲料水中のPFAS濃度を低減するための措置を講じるとともに、違反した事実を当該地域の消費者や住民に、情報開示しなければならないとしている。規制発表時のEPAは、現状の公共水道事業者の6~10%は、規制適合のための対策が必要になると見込んでいた。

 

 こうした規制強化策に対して、米国内外の化学品会社が一斉に反発。昨年の大統領選挙中もトランプ氏、共和党に対して規制の緩和を求めていた。今回のEPAの発表はPFOAとPFOSについては順守期限を31年に延長して企業側に対応の猶予を与えるほか、他の3種類については規制自体を撤回し、再検討するとしている。再検討結果については、今秋には代替の規制案を公表し、26年春までに新規制策を決めるとしている。

 

 ゼルディン氏は今回の規制緩和について「農村地域の小規模システムを含む全国の水道がこれら汚染物質への対応に取り組むのを支援する」と説明した。事実上、「バイデン政権のPFAS規制」をタナ上げすることになる。

 

 全国農村水道協会(NRWA)のCEOマシュー・ホルムズ(Matthew Holmes)氏は「EPAは、PFAS規則の実施を延期することで、農村部と小規模コミュニティのために正しい判断をした。この合理的な決定は、水道システム管理者が必要とする追加の時間を提供し、手頃な価格の処理技術を確認し、持続可能な遵守の道筋を確保するための時間を確保できる」と評価している。

 

 州飲料水管理者協会(ASDWA)のエグゼクティブ・ディレクター、アラン・ロバーソン(Alan Roberson)氏は「われわれは、EPAがPFAS規制の遵守期限をさらに2年間延長する提案を支持する。現在の2029年の遵守期限では、州と水道システムはパイロット試験の完了、建設計画の策定、必要な処理施設の建設に必要な時間枠に苦慮している」と述べ、規制の先送りを支持した。

 

  一方、PFAS汚染で被害を受けてきたコミュニティや環境NGOらは、バイデン前政権でのPFAS汚染規制基準の強化を評価している。同規制公表後、水道事業者と化学企業のロビイング団体が基準撤回を求めてEPAを提訴した現在進行中の訴訟では、環境訴訟を提起する非営利団体の「Earthjustice」がコミュニティ団体の代理として訴訟に介入し、「2024年基準」の維持を求めている。

 

 同団体弁護士のカトリーナ・オ’ブライエン(Katherine O’Brien)氏は「トランプ政権が、アメリカを健康にするという公約を誇示しながら、毒性のあるPFASによる飲料水汚染の継続を承認したことは、悪いジョークとしか言いようがない。違法で冷酷な措置であり、PFAS汚染による病気の流行を不必要に継続させることになる」と批判している。

                           (藤井良広)

https://www.epa.gov/newsreleases/epa-announces-it-will-keep-maximum-contaminant-levels-pfoa-pfos

https://earthjustice.org/press/2025/epa-announces-illegal-plan-to-eliminate-restrictions-for-toxic-pfas-in-drinking-water