HOME |2024年の世界の森林火災。焼失面積は全体で台湾の面積の約2倍の6万7000k㎡に達する。前年比80%増。気候変動と人為的開発の増加が影響。CO2排出量はインド全体の排出量と同等(RIEF) |

2024年の世界の森林火災。焼失面積は全体で台湾の面積の約2倍の6万7000k㎡に達する。前年比80%増。気候変動と人為的開発の増加が影響。CO2排出量はインド全体の排出量と同等(RIEF)

2025-05-22 23:48:20

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写真は、GFWのサイトから引用)

 

  2024年中に、気候変動の激化による森林火災などの影響で、世界全体で、台湾の面積の約2倍に相当する6万7000k㎡の第一次熱帯林が焼失したことがわかった。焼失面積は前年比80%増と急増した。世界資源研究所(WRI)が運営する「グローバルフォレストウォッチ(GFW)」が公表した。GFWはこの焼失面積急増の規模は「過去20年以上にわたる森林火災データ収集の中でも前例のないこと」と指摘し、「世界的な緊急事態」と警告している。こうした森林火災や森林伐採などの影響で、昨年1年間で森林から大気中に放出されたCO2量は31億㌧に達し、インド1国の排出量を上回った。

 

 GFWのプラットフォームで公開している米メリーランド大学GLASラボの新たなデータによると、2024年の熱帯雨林の焼失ピッチは、1分あたりサッカー場18面分の森林が消えた計算になるという。森林消失のおよそ半分は火災による焼失。森林破壊の要因別では、24年のデータでは火災による消失が、農業による破壊を上回り、火災が初めて森林破壊の最大要因となった。

 

 熱帯原生林・雨林帯は、現地の地域住民たちにとって生計の場であると同時に、膨大なカーボンの貯留サイトであり、水供給源であり、多種多様な生物多様性の宝庫でもある。文字通り、自然と人類の双方にとって「最も重要な森林生態系」といえる。

 

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 24年の森林火災のうち、熱帯原生林の焼失面積は、2023年の5倍に上った。火災は一部の生態系では自然現象として発生するが、熱帯林ではほぼすべてが人為的な原因による。農業用地の開拓のために行われる焼畑農業が主な原因で、人が着けた火が周辺の森林に広がることが多い。2024年は、気候変動とエルニーニョの影響で、世界の平均気温は観測史上、最も暑い年となったことで、高温乾燥にあおられた森林火災が世界の各地で発生した。

 

 このうち、ラテンアメリカ地域は特に深刻な打撃を受けた。ブラジルとコロンビアでは、2023年には原生林の減少傾向に歯止めがかかる状況になっていた。だが、24年はそうした傾向が吹っ飛び、再び森林焼失による森林減少が高まった。森林は火災後に回復する可能性もある。だが、焼き畑を広げる火災の場合は、農地に転用されること等から、生態系破壊の拡大につながることが多い。

 

 GFWによると、火災と無関係な理由での原生林の損失も、2023年から2024年にかけて14%増加したという。この場合は、主に森林の農業用地への転換が直接の原因となっている。過去24年間、森林消失の最大の要因は、こうした農地にするための森林伐採だったが、24年は森林火災が最大の要因となり、消失分のほぼ半分を占めた。その分、気候変動による森林への影響が増大しているといえる。

 

森林消失率の多い国の内訳
森林消失率の多い国の内訳

 

 GFWの共同ディレクターのエリザベス・ゴールドマン(Elizabeth Goldman)氏は「このレベルの森林破壊は、20年以上にわたるわれわれのデータ収集の中でも前例がないこと。世界的な緊急事態だ」と訴えている。

 

 森林火災による損失は熱帯地域だけに限定されない。世界の樹冠損失も24年は記録的な高水準に達した。カナダやロシアなどの寒帯地域でも極端な森林火災が発生した。GFWの今回の報告書はこのうち、主に熱帯地域での火災による影響に焦点を当てている。これは、熱帯地域で人類による森林伐採活動の94%が発生しているためとしている。

 

 ただ、地域によっては、いくつかの明るい兆候もあるというアジアのインドネシアとマレーシアの森林では24年は前年よりも原生林の減少が少なく、またその減少率は10年前よりも大幅に低下した。2021年のCOP26では、世界140カ国以上の首脳が「グラスゴー首脳宣言」に署名し、2030年までに森林減少を停止し逆転させることを約束している。

 

 しかし、同公約を達成する道筋は遅れている。原生林の面積が最も広い20カ国中、17カ国で現在の原生林の減少率が合意締結時よりも高くなっているなど、事態は予断を許さない展開になっている。2023年から2024年にかけて国別の熱帯原生林の減少率の上位10カ国をみると、ブラジルの1位は変わらないが、ボリビアが、コンゴ共和国を抜いて、2位に上昇した。

 

 熱帯原生林減少率が高まるブラジルの24年は、過去70年間で最も激しい広範囲に及ぶ干ばつに見舞われたことと、年間を通した高温の影響で、全国的に森林火災が前例のない規模で拡大した。人為の活動による農地化等の森林消失に加えて、気候変動由来の森林焼失が重なり、アマゾンという世界最大の熱帯原生林を保有するブラジルの原生林全体が喪失の危機に陥っていることになる。同国での24年の火災以外での森林の消失率は2023年比で13%増。ただ、この消失率は、2000年代初頭やジャイル・ボルソナロ前政権時代のピーク値よりは低い。

 

 2023年に就任した現在のルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領による熱帯原生林保護策により、原生林の損失は相対的に低水準にはなっている。だが、現政権下でも原生林の豊かな州であるマト・グロッソ州とロンドニア州などでは、農業開発意欲が高く、森林伐採を削減するための歴史的なモラトリアムを弱体化させる立法案の提案または承認などの動きが出ている。これらの法制度が広がって、森林伐採が合法的に広がると、降水量の変化を引き起こし、逆に農作物の収量を減少させる可能性がある。その結果、農業収量が落ちると、さらに多くの農業用地の開発が必要になるなどの、連鎖的な負の影響が広がる懸念も指摘されている。

 

 森林減少率が急増したボリビアは、2023年の記録的な樹木被覆損失に続き、24年は森林火災による原生林損失が200%増加した。同国の森林面積は国土全体の40%に過ぎない。にもかかわらず、前年2位だったコンゴ民主共和国(DRC)を森林焼失面積で上回った。24年単年度だけではなく、22年から24年にかけて全国的に森林消失が拡大しているためだ。

 

 同国の熱帯原生林の火災の大半は、工業規模の農業用地開拓(特に牛肉牧場(ボリビアの森林伐採の57%の原因が同要因とされる)や大豆、サトウキビ、トウモロコシ、ソルガムなどの単一作物栽培のため)が要因になっている。同国では伝統的に焼き畑農法をとってきたが、気候変動で高温乾燥化する気候条件によって、多くの火災が制御不能な大規模火災を引き起こす事態となっている。

 

 他のラテンアメリカの国々でも、地域全体で広がる干ばつを背景に、24年は森林火災による森林損失が急増した。このうち、ベリーズ、グアテマラ、ガイアナ、メキシコでは、森林火災が原生林の損失の少なくとも60%を占めた。森林火災は、有害な大気汚染物質をまきちらすほか、人命や住宅の損失などを引き起こし、地域社会に壊滅的な影響を与える。メキシコとニカラグアでは熱帯一次林の損失の上位10カ国にランクインした。ペルーも24年の熱帯原生林の損失が前年比135%増だった。コロンビアも24年の同原生林の損失はがほぼ50%増。

 

 アフリカのコンゴ地域の森林減少の原因には、火災、炭生産のための木材伐採(主要なエネルギー源)、小規模農業のための森林伐採、および移動農業(森林を一時的に伐採して作物を栽培し、その後森林が再生するまで放置する伝統的な自給農業)が含まれている。同地域で現金作物の栽培が導入されるにつれ、伐採の規模が拡大し、休耕期間が短縮されている。これらの地域では、森林は再生しておらず、耕作はより恒久的なものになっている。

 

  DRCの多くのコミュニティは、森林利用に代わる代替資源を持っていないため、森林減少を食い止めることは事実上、困難とされる。同国は世界で最も貧しい5カ国の一つ。多くの人々が食料とエネルギーのために森林に依存しており、人口増加に伴い、森林とその資源への圧力は減少しそうにない。DRCでの森林消失要因が変わらないのは、継続的な地域紛争により避難を余儀なくされた人々が生存のために土地を開拓している要因もある。

 

 他のアフリカ諸国のうち、コンゴ共和国(HFLD国)は、24年の原生林損失が前年比150%増となり、過去最高の記録をほぼ倍増した。このうち45%は、例年より乾燥し高温だった気候変動の加速による火災が原因。ガボンは全体として森林減少を安定化させたが、カメルーンは、DRCやコンゴ共和国と同様、森林減少が全体的に増加している。

 

 アジアではインドネシアは、森林保護と火災管理の努力が進んだことから、24年の一次森林の損失は前年比11%減と改善した。前大統領のジョコ・ウィドド政権が森林保護、回復、火災抑制を優先した政策の最終年だったこともある。国を挙げてのコミュニティや農業企業による火災予防活動が、多くの地域で干ばつ条件下でも火災率を低く抑えるのに役立ったとされる。マレーシアも24年の原生林の損失率は前年比で13%減だった。ラオスの原生林損失率も15%減。ただ、同国の総減少量は記録上2番目に高い水準だった。

                           (藤井良広)

https://www.globalforestwatch.org/dashboards/global/

https://gfr.wri.org/latest-analysis-deforestation-trends