JFEグループのJFE商事。バイオマス燃料取引で、発電会社に燃料代および海上輸送の保険料等を、契約を上回る「意図的な上乗せ請求」発覚。2年弱で約3億円。過剰な利益主義を反映(RIEF)
2025-06-21 22:28:59

JFEホールディングス傘下のJFE商事は19日、同社が手掛けるバイオマス燃料取引において、燃料納入先の発電事業者に対して、燃料代および海上運賃費用等で、契約を上回る過剰請求をしていたと発表した。過剰請求額は、2022年9月~2024年5月の約2年間で総額3億円分に達する。2024年5月に担当部門の社員が、当該企業に対して、過剰請求の内容がわかる社内資料をメールで誤送信したことで発覚したという。 独立した外部専門家による第三者委員会の調査の結果、担当部門の管理職以下が顧客企業を蔑(ないがし)ろにした過度な利益優先主義に陥り、契約違反であると認識していながら過剰な請求をしていたという。明らかな「犯罪」だ。
JFE商事の発表によると、第三者委員会の調査報告書では、当時のバイオマス燃料部長が業績を過度に優先した結果、顧客に過大請求していたほか、同部の社員たちも契約書への理解が不十分だったことなどが原因と指摘した。当該顧客企業に対しては、過剰に受け取った約3億円分を全額返金することで合意できているとしている。
同社の顧客企業との契約では、規定された売主利益(規定口銭)以外に利益を請求することができないことになっていた。だが、同社は品代(バイオマス燃料代)および海上運賃費用に利益を上乗せして過剰な請求を行った。海上運賃については、海上保険料の請求書を改竄して保険料を上乗せし過剰請求していた。
保険料の上乗せ分については、顧客企業から保険料請求書の開示を求められた際、そのまま開示すれば規定口銭以外に上乗せした利益の存在が見つかってしまう。そこで、PDF編集ソフトを使って、保険料請求書の保険対象貨物価格や保険料そのものを改竄したうえで、顧客企業に修正した資料を提出していたという。意図的な書類改竄だ。
同社では2024年5月に改竄事案が顧客企業に発覚したことを受け、同年6月12日に社内調査委員会を設置し、事実関係の調査を行った。同年7月9日及び同月25日付で顧客企業に対して、自社調査で明らかになった事実を報告するとともに、同年10月1日付で調査報告書をまとめた。そのうえで、同年10月18日付で、独立した外部専門家による第三者委員会を設置し、同年12月10日に「調査報告書」の提出を受け、改めて当該企業に説明したという。
同社による契約違反の不正行為は、上記の案件以外にも複数の意図的な行為が見つかっている。その一つが、転売価格の過少申告による損害賠償金の過剰請求だ。顧客企業とのた契約で、企業側が引き取ることのできないバイオマス燃料を同社が転売した際、転売による損失を企業側が同社に対して補填する取り決めとなっていたが、同社は転売価格を過少に申告して損害賠償金を過剰請求をしたうえで、本来は請求できない転売手配に伴う手数料を、転売時の海上運賃に上乗せして請求していた。同社と船会社間の傭船契約で定める滞船料についても、過剰請求していた。
また当該部門の責任者であるバイオマス燃料部長(当時)は、契約上、規定口銭以上を請求することができないことを認識していたにもかかわらず、不祥事が発覚後、顧客企業に対する説明において、「契約違反の認識がなかった」などと虚偽の説明を行っていたと指摘されている。
同社では顧客企業との協議を踏まえた再発防止策として、主導したバイオマス燃料部長を解雇したほか、同部の担当人員を大幅に入れ替えたとしている。また同部を担当する役員は、第三者委の調査では契約違反の事実を認識していたとは認められないとされたが、管理者責任として一定額の報酬返上を課した。第三者委の報告書を受領後、今回の発表までに約半年がかかったことについては、同社は「顧客への説明と協議を最優先した」と説明している。
バイオマス発電事業は、経産省の固定価格買取制度(FIT)の対象になっており、買い上げ電力の資金は、国民の電力料金に再エネ賦課金として上乗せされる。同発電の場合、多くの企業が港湾部近くに発電所を設置し、発電燃料についてはアジアや米国などの海外から輸入するバイオマス燃料を、商社経由で調達するパターンをとっている。そのため輸入する燃料の品質や、価格等も、商社任せのところが少なくない。https://rief-jp.org/ct5/148079?ctid=
発電事業者、さらにはFITを運営する経産省などは、輸入燃料の品質の妥当性等について、自らチェックする仕組みをとっていない。こうした日本のFIT制度の特徴を見透かすように、ベトナム等の事業者は、粗悪な資材等を混ぜた燃料に、自主的な国際森林認証のFSC(森林管理協議会)認証を偽造して付与し、FIT制度で高い買い上げ価格の燃料として売り抜けたケースも指摘されている。
同ケースの場合、燃料を調達した商社自体も品質のチェックを書類上でしかせず、経産省自体も、燃料の現物に対する調査をしないことから、高値で売りつけられた燃料代分は、最終的には国民が支払う再エネ賦課金に上乗せされていることになる。
今回のJFE商事の不祥事は、海外の燃料開発事業者による低品質のバイオマス燃料の不正輸出と同様に、海外から調達するバイオマス燃料の燃料代や海上輸送費用等の価格に、意図的に上乗せをすることで、担当部局の売上額を引き上げていたものだ。担当部局のミスがなかったら、判明しないままだった可能性もある。
(藤井良広)
https://www.jfe-shoji.co.jp/wjfep/wp-content/uploads/2025/06/news250619.pdf