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朝日新聞の角田社長の「AIやデータセンターは原発がないと動かせないようなことも、みんなわかっている」とのインタビュー記事での発言に、反原発団体等が抗議。撤回と辞任を要求(RIEF)

2025-07-24 00:51:06

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写真は、朝日新聞社長の「原発容認発言」に抗議する「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(原自連)」の代表者たち=同団体サイトから引用)

 

 朝日新聞社社長の「原発発言」が物議をかもしている。同社代表取締役社長CEOの角田克(つのだ・かつ)氏は、経済誌のインタビューを受け、「AIやデータセンターは原発がないと動かせないようなことも、みんなわかっている」と語ったためだ。同社はこれまで紙面では「脱原発」のスタンスとみられてきたが、今回の社長発言は、「原発是認」を通り越し「推進の旗振り役を務めている」と受け止められることから、脱原発を目指す複数の団体が反発。公開質問状が提出されたほか、、発言の撤回、引責辞任を求める動きも起きている。

 

 議論を呼んでいるのは、6月25日付『東洋経済オンライン』に掲載された角田氏へのインタビュー記事だ。その概要は次のような内容だ。

 

「『強い主張を繰り返すメディアは親しまれない』『ネット出現時の失敗を繰り返していいのか』 朝日新聞社長が語った“反省”と AI 時代の生き残り方」との見出しの記事において、角田氏はインタビューに答えて「原発一つにしても、『脱原発』と言う人もいれば、『原発を動かすしかない』と言う人もいる。今の皆さんは、それぞれの意見を同じように知りたいと思っている。だって、AI やデータセンターは原発がないと動かせないようなことも、みんなわかっている。だから『原発が絶対必要だ』という意見も、朝日新聞の社説とは(考えが)違うから載せない、載せる回数が少ない、とするのは違う。ほかの意見は違う、認めない、といったメディアであってはいけない」と話したと記された。(ゴチック表記と下線はRIEFによる)

 

東洋経済オンラインに掲載された
東洋経済オンラインに掲載された角田氏のインタビュー記事の一部=同サイトから引用

 

 このインタビューでの発言内容に、まず、「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(原自連)」が反応した。同団体は、小泉純一郎元首相が顧問、吉原毅南信用金庫名誉顧問が会長、中川秀直元自民党衆議院議員が副会長を務める脱原発を求める団体だ。

 

 その主張は、①データセンターは原発に依存しないエネルギーで現に動いており(中略)明確な誤り、②「近い将来、技術が発達するので、そのような大量の電力は不要」とか「大量の電力が必要だとしても、原発以外の電力(例えば自然エネルギー)で十分まかなえる」などの有力な主張があるのであって「みんなが分(ママ)かっている」というような事実はない、③「みんなが言っている」というような語法は、偽情報を他者に伝え、広めるときに使用されるものであり、良識ある言論人として決して用いてはならない――等と指摘。角田氏に発言の撤回と引責辞任を要求した。

 

 さらに、原発問題に詳しい大島堅一龍谷大学政策学部教授が座長を務める「原子力市民委員会」と、NPO「原子力資料情報室」が連名で、角田氏宛に公開質問状を送付した。同質問状では以下に示す5点についての回答を求めている。

 

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  ①今回の発言は角田社長が「原発が絶対必要」と認識しているゆえであると理解できるがこのような認識は福島第一原発事故以降の社論である「脱原発」と明確に異なっているのではないか

 

 ②「AI やデータセンターは原発がないと動かせない」との発言のエビデンスと「みんなわかっている」との発言のエビデンスはあるか

 

 ③朝日新聞社は2014年に「経営陣は編集の独立をいっそう尊重し、原則として記事や論説の内容に介入することはしない」と表明したが、経営トップが「原発が絶対必要だ」と表明することは記事や論説の内容への介入に当たるのではないか

 

 ④経営トップが「原発が絶対必要だ」と述べる環境において記者が萎縮や忖度なしに自由に原発について記事を書くことが可能か

 

 ⑤同じインタビューの中で「私どもは私どもの取材結果を世の中に中立、中庸で出す。それに対し、社説も含めて『朝日新聞社はこう考える』ということは明確に出す。そして、『私どものほかにこういう考えもある』『あなたは自分の生活や学びの中で、どの主張を選びますか?』という姿勢を心がけないといけない」と発言しているが、これは2014年に表明した、経営陣は記事や論説の内容に介入しないとの方針と矛盾しているように見えるが角田社長は経営と編集の分離をどのように考えているか。また、十分なファクトチェックなしに両論併記することで間違った情報を発信するリスクをどのように考えているか。

 

 脱原発を目指す団体としては、新聞社のトップが「みんなわかっている」という、あたかも当該主張を受け入れない人は少数だとするような、極めて同調圧力が強い言葉を使ったことが問題と考えているようだが、角田氏は本記事の掲載時(7月24日)の段階では、発言撤回や辞任要求に応じる構えは見せていない。

 

  公開質問状についても、朝日新聞社広報部は7月15日、「当該の箇所は、 朝日新聞が多様な意見を尊重するメディアでありたいという文脈の中で言及したものです。一つの例として原発を挙げ、『AI やデータセンターは原発がないと動かせない、という意見があることも、みんなわかっている』とお伝えしたかったのですが、 言葉足らずの表現となりました。『脱原発』だけでなく、『AIやデータセンターで電力需要が急増し、原発を再稼働させる必要がある』という意見もあることを伝える意図であり、角田自身の考えを述べているわけでは全くありません」と説明するだけで、質問には無回答だった。

 

データセンターの電力需要について分析したIEA
データセンターの電力需要について分析したIEA

 

 そもそも、「AIやデータセンターが大量の電気を必要で、温室効果ガス(GHG)を増やさず大量の電気を供給するためには原発の利用が必要だ」との主張は、国際エネルギー機関(IEA)が2024年1月、「2026年の世界のデータセンターやAI、仮想通貨のマイニングに伴う電力消費量は620~1050テラワット時と、2022年の2.3倍になる」との試算を発表したのに続き、マイクロソフトやアマゾン、アルファベットといった米国の巨大IT企業が、データセンターの急激な電力需要増大に対応するため原発から電力供給を受ける計画を相次いで発表したことから、にわかに盛んに唱えられるようになった。

 

 データセンターの建設が近年世界中で増えているのは事実で、日本でも立地の適地とされる千葉県印西市では住民の反対運動が起きるほど建設が急ピッチで進んでいる。

 

 では、そうしたデータセンターがGHGの排出が少ないとの理由で、必ず原発で発電された電気を求めているかというと、そうではない。

 

 米国では2023年から2024年にかけておよそ30年ぶりに新設されたジョージア州のボーグル原発3、4号機の周辺住民が、原発ができたことで電気代が高くなったと不満を募らせている。スケールメリットを活かせる大型原発だが、建設コストが初期想定時2基で140億㌦(約2.1兆円)だったのが最終的に368億㌦(5.5兆円)に跳ね上がり、発電単価が1万784㌦/kWhと再生可能エネルギー発電やLNG発電の単価より数倍高くなったためだ。

 

 東京電力福島第一原発事故を受けての安全対策の強化によるコストアップや、インフレに伴う建設費の高騰が続いていることに加え、事業の費用に一定の利潤を加えて料金を設定できる総括原価方式を導入したことが原因とみられている。日本でも原発の新規増設では長期脱炭素電源オークションという総括原価方式に似た方法で、建設費などの将来の上昇分を消費者に転嫁する方法の導入が見込まれており、電力価格の上昇が心配される。

 

 数年前から人気を博している小型モジュール原発(SMR)も経済性が当初見込みほど良くないことがわかってきている。一方で再エネ発電と蓄電池の組み合わせによる給電方法はコストが下がってきており、データセンターの電源には原発が最適との考え方は経済性の面から今後見直しが進む可能性がある。

 

 角田氏は「言葉足らずだった」で済ませる気のようだが、朝日新聞社は『タイミング悪く』 6月13日に「ファクトチェック編集部」の設立を発表したところだ。原発に関しては、これまで大手マスコミが問題点を詳しく報じてこなかったことから調べてみる価値のある点が多く残っている。まずは自社の社長の発言は事実なのかどうか、早急に調べて世の中に結果を示すべきだろう。

                                                                                                                                      (宮崎知己)

https://toyokeizai.net/articles/-/885509

https://cnic.jp/61757

https://genjiren.com/2025/07/03/news/