一般社団法人環境金融研究機構 | Research Institute for Environmental Finance: RIEF

（上図は、9月の世界の平均気温の暦年の推移。2023年が過去最高、その後、緩やかに下落）

 　今年9月の世界の平均気温は、観測史上3番目の水準だったことが、EUのコペルニクス気候変動サービス（C3S）の発表でわかった。今年9月の世界全体の平均気温は16.11℃で、同月として過去最高だった2023年9月の記録より0.27℃低く、過去2番目だった24年9月にはわずか0.07℃低いだけだった。陸上だけでなく、海洋の気温も、南緯60度から北緯60度での海面水温（SST）の平均値も20.72℃で、9月としては過去3番目に高い水準だった。

　ECMWF気候戦略責任者であるサマンサ・バージェス（Samantha Burgess）氏は、「過去最も暑い年だった2024年から1年経った現在も、全球気温の状況はほぼ変わらず、陸域・海面温度の高止まりは、大気中の温室効果ガス（GHG）蓄積が継続的に影響を及ぼしていることを反映している」と指摘している。

　9月の地球全体の陸上での平均気温は、1991～2020年の同月平均より0.66℃高く、産業革命前（1850～1900年）の推定平均気温より1.47℃高かった。2024年10月から2025年9月までの12か月平均気温は、1991～2020年平均より0.63℃高かったほか、産業革命前水準より1.51℃高く、パリ協定で設定された閾値をわずかに上回った。

　地域別にみると、欧州の9月の陸域平均気温は15.95℃で、1991～2020年平均を1.23℃上回り、同月としては史上5番目に高い気温だった。特に顕著な気温上昇はフェノスカンディア（フィンランド・スカンディナヴィア半島）と東欧で観測された。逆に、平均を下回る気温（通常は平均より1℃未満低い）が観測されたのは西欧の一部地域でのみだった。

　欧州以外では、北米のカナダ全域で気温が平均を上回り、地域によっては月間最高値を更新したほか、グリーンランドの一部、シベリア北西端及び隣接沿岸地域、南極大陸の広範囲でも同様に高気温の継続傾向がみられた。反対に、気温が平均を下回る顕著な低温傾向は、シベリア中北部、西オーストラリア、南極東部の一部で観測された。

　北太平洋では海洋熱波が発生し、一部地域で記録的な高温が観測されたとしている。また、北大西洋では平均を大幅に上回る海面水温が確認された。海洋熱波発生の影響で地中海海域の海面水温もほぼ全域で平均を大きく上回った。

　同月の気候上昇による豪雨の増加などの気候変動は、まず北西・中央ヨーロッパの大部分に平年を上回る降水をもたらし、月初のフランス東部、ドイツ西部、ベルギー、ルクセンブルクで12～18時間あたり100mmを超えた。豪雨はノルウェー南部やイタリア北部等の地域でも洪水被害も引き起こした。

　一方、イベリア半島の大部分、ノルウェー沿岸、イタリア半島の大部分、バルカン半島、ウクライナおよびロシア西部の一部では、平均より乾燥した状態が観測された。

　欧州以外では、米国南西部・中部、アラスカ、メキシコ北西部、ブラジル最南部、アルゼンチン、チリで平均より湿潤な日々が観測され、一部地域では洪水が発生した。北アフリカの角、アラビア半島南部、中央アジア、中国東部、パキスタン及び北インドでも平均より湿潤な状態が確認され、深刻な洪水により数百万人が避難を余儀なくされた。

　北極の海氷面積は9月に年間最小値の1,828万km²を記録した。同面積は、衛星観測史上3番目に低い年間最大値で、2024年（2番目に低い）および2023年（これまでで最低の年間最大値）に次ぐ。一方、南極海周辺の海氷被覆は9月13日に年間最大面積を記録し、対照的な展開となった。ただ南極全体の月間海氷面積は、1991年から2020年の平均値を約5%下回り、4番目に低い値だった。

　北極の月間海氷面積は9月としては1991～2020年平均を12％下回り、過去13番目に低い値だった。全体として、2000年代後半を通じて北極海氷面積に明確な減少傾向はみられないことが示されたとしている。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（藤井良広）

https://climate.copernicus.eu/global-surface-air-and-sea-temperatures-both-third-warmest-september

https://climate.copernicus.eu/surface-air-temperature-september-2025