国連「プラスチック条約(仮称)」の国際交渉再開へ。政府間交渉委員会議長がロードマップを含む声明公表。今年末か来年初めに交渉委再開目指す。生産国と被害国の対立解消できるか(RIEF)
2026-03-20 01:20:33
(写真は、UNEPのサイトから引用)
プラスチック廃棄物による地球全体への汚染を抑えるために、国際的に法的拘束力のある国連主導の「プラスチック条約(仮称)」の策定交渉が、再開した。同交渉は昨年8月に国連環境計画(UNEP)の政府間交渉委員会(INC)で合意に至らず、先送りされていた。それが、このほどINC議長が声明を発表、今年末か来年初めに政府間交渉委再開会合を開くロードマップを公表した。条約交渉ではプラスチックの生産規制をめぐり、生産国の産油国や化学産業界等と、汚染の影響を受ける島嶼部諸国、環境対応を重視する国々等との意見が対立した状態で中断している。
現在のINC議長のフリオ・コルダノ(Julio Cordano)氏が今週初めに、昨年8月のスイス・ジュネーブで交渉が決裂したINC委員会会合を今年年末か来年初めに、再開するためのロードマップを関係方面に公表した。https://rief-jp.org/ct12/159915?ctid=
それによると、議長は2月19日に、同委員会全メンバーに対し、初の書簡を交付した。これに続く今月16日送付の書簡では、昨年、決裂した政府間委員会の再開に向けたロードマップを明らかにしている。
関係国はすでに今月12日に、各国代表団の団長(HODs)ベースによる非公式のオンライン会議を開き、優先分野や作業方法についての最初の意見交換を行った。今後、4月下旬のほか、5月下旬または6月上旬に各オンライン会議を「HOD+2」形式で行ったうえで、6月30日から7月3日の予定で、対面形式での非公式のHOD会合(ナイロビ)を開くとしている。

ナイロビで開催予定の対面会合では、全体会議と分科会を開き、取り上げる議題や会合の運営方法を含む詳細については、追って通知するとしている。本年下半期においても10月上旬に非公式の対面会議を開く可能性があるとしている。非公式、公式のいずれの会合でも、条約交渉で暗礁に乗り上げている生産国と被害国の対立状況をどう解決するをめぐる交渉が焦点となる。合意につながる選択肢を検討するほか、協定の異なる要素間の相互作用に関する検討を継続するとしている。
ロードマップでは、第5回政府間交渉委員会再開会合(INC5,4)について「2026年末または2027年初頭に開催されるべき」と明記している。昨年8月の「INC5.2」では、焦点である海洋汚染を引き起こしているプラスチックの生産規制を条約に盛り込むかが最大の論点になったが、原料となる石油を産出するサウジアラビアなどの産油国やインドなどが、従来と同様に、強硬に生産規制に反対。中国もプラ製品を大量使用する同国の経済構造への影響から慎重な姿勢をとった。トランプ政権の米国は国内の石油会社、同精製会社等への配慮から生産規制に否定的な姿勢に終始した。
これに対して、プラスチック汚染による海洋汚染が、魚類・鳥類、自然環境へと循環的に汚染の影響を拡大し、人間の食生活を通じた健康影響の実態も明瞭になっていることから、EUや島嶼諸国、中南米などは、プラスチックの生産規制だけでなく、使用、リサイクルや処理まで、プラスチックのライフサイクル全体を管理する強制力のある国際条約の成案化を求めている。
日本政府は「プラスチック汚染を防ぐための国際的かつ法的拘束力のある枠組み」には概ね賛成の立場とされるが、生産規制の義務化等については慎重な立場とされる。日本はプラスチック原料の石油等の生産国ではないが、プラスチックや化学製品の生産国であり、プラ製品を製造する化学品メーカーが多いことから、これらの産業・企業に影響を与える条約の規制には難色を示すスタンスだ。
INC議長のコルダノ氏は「海流や大気で世界はつながっており、プラ汚染も地域を越えて広がっている。課題解決には国際協力がカギを握る。策定中の条約は誰もが課題解決に関与でき、実行できるものでなければならない。ただ汚染を防ぐ方法では、国によって重要な見解の相違点がある。ある国は廃棄物管理に集中すべきだとし、ある国は、汚染の根源といえるプラ生産も議論すべきとする。これはプラスチックが各国の経済や社会、日常生活のあらゆるシーンと関係しているからだ。問題は非常に複雑で、解決策を見つけるには多くの努力が必要」と述べている。
「プラスチック条約」の策定は、2022年3月、ケニア・ナイロビで開いた国連環境会議(UNEA 5.2)で、海洋プラスチックごみの削減を進めるため、法的拘束力のある初の国際枠組み「プラスチック条約(仮称)」を作ることで合意。条約案を策定する政府間員会(INC)を設置して作業を進めてきた。当初は、2024年に条約案を成立させる目標を掲げていたが、生産国と汚染防止を求める国との合意が得られず、交渉の先送りが繰り返されている。規制の対象は、プラスチックの廃棄対策だけでなく、同製品の生産・デザイン等も含めている。https://rief-jp.org/ct12/135994?ctid=
日本政府は、義務的な生産規制等には難色を示す一方で、条約の成立には推進派という折衷型の立場とされる。これまでも、生産規制の強化案と緩和案を組み合わせた「妥協案」等の提案も行ってきた。日本の立場は、生産規制が弱い条約では実際のプラスチック廃棄物削減の効力が乏しいが、「(条約が)無いよりはまし」の立場といえる。ただ、廃プラスチックによるマイクロプラスチック汚染は、等しく人類の体内に取り込まれ、蓄積されていることは、すでに多くの研究論文等で確認されている。
(藤井良広)
https://wedocs.unep.org/items/4d0ea83e-abff-43f3-8aeb-d9f420719222
https://www.unep.org/inc-plastic-pollution/media#PressRelease7Feb
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD164KG0W6A310C2000000/

































Research Institute for Environmental Finance