世界気象機関(WMO)。昨年までの11年間(2015~2025年)は観測史上最も暑い期間。地球のエネルギー不均衡も最大。異常気象の影響は数百万人、損害は数十億㌦。年次報告で公表(RIEF)
2026-03-24 00:44:16
国連のWMO(世界気象機関)は23日、年次報告書「世界気候の現状」を公表した。それによると、2015年から昨年の25年までの11年間が、観測史上最も暑い11年間だったことが確認された。産業革命前以来の気温の上昇は、昨年、パリ協定の「1.5℃目標」に迫る「1.43℃」にまで上昇した。また地球に蓄積されたエネルギーの熱量は、過去最高水準に達していることも初めて明らかになった。すでに、異常気象は数百万人に影響を与え、数十億㌦の損害をもたらしている。人類は、中東、ウクライナなどの各地で戦争を続けている場合ではない。トランプ政権の責任者にはこの報告書をしっかり読んでもらいたい。
WMOの報告を受けて、国連事務総長のアントニオ・グテレス(António Guterres)氏は「世界の気候は非常事態にある。地球は限界を超えつつあり、あらゆる主要な気候指標が赤信号を点滅させている。人類は観測史上最も暑い11年間を耐え抜いたばかりだ。歴史が11回も繰り返されるのは、もはや偶然ではない。行動を求める声だ」と訴えた。
今回のWMO報告書では、地球システムに出入りする熱量の割合を示す「地球のエネルギーバランス」が大幅に崩れている「不均衡状態」にあることが初めて盛り込まれた。地球のエネルギーバランスとは、地球システムに入ってくるエネルギーと出ていくエネルギーの割合を測定したもの。安定した気候下では、太陽からの入射エネルギー(熱量)と放出されるエネルギーの量はほぼ同じになる。
しかし、CO2、メタン、一酸化二窒素(N2O)等の温室効果ガス(GHG)の濃度が高くなっていることで、入射エネルギーが放出分を上回って閉じ込められている。このエネルギーバランスの不均衡は、1960年に観測記録が始まって以来、拡大を続けており、特に過去20年間に拡大傾向が進み、昨年は過去最高を記録した。
WMOの事務局長のセレスティ・サウロ(Celeste Saulo)氏は「科学の進歩により、地球のエネルギー不均衡や、現在、地球と気候が直面している現実に対する理解が深まっている。人間の活動は自然の均衡をますます乱しており、われわれはその影響を今後数百年、数千年にわたって抱え続けることになるだろう」と指摘した。
同氏はさらに、「日々の天気はより極端なものになっている。昨年には、熱波、山火事、干ばつ、熱帯低気圧、暴風雨、洪水によって地球全体で数千人が死亡し、数百万人が影響を受け、数十億㌦の経済的損失が発生した」と指摘。気候危機の影響がすでに現実化していることを強調している。

地球に入ってくるエネルギー(熱量)の91%以上は海洋に蓄積される。海洋は陸上の気温上昇を緩和する主な緩衝材となっているのだ。その海洋に蓄積される熱量は、2025年に過去最高を記録。報告書によると、海洋に吸収されるエネルギーのうち人類起源の温暖化による影響の割合(2005~2025年)は、その前の1960~2005年と比較して2倍以上に増えているという。
過剰なエネルギー不均衡のうち3%分は、海氷や氷河等の氷を温め、融解を促進している。南極とグリーンランドの氷床はいずれも著しい質量減少を示しており、2025年の北極海氷の年間平均面積は、衛星観測史上最低または2番目に低い値だった。また同年には、アイスランドおよび北米太平洋沿岸で異常な氷河の質量減少が発生している。
人類の多くが生活する地表付近(人間が感じる気温)を含む大気の温暖化割合は、過剰エネルギーのわずか1%に過ぎない。大陸の陸地全体に蓄積されるエネルギーは全体の約5%だけ。つまり、大半の過剰な熱量は海洋に蓄積される。エネルギー熱量の大半を蓄積する海洋の温暖化拡大は、海洋生態系の劣化や生物多様性の喪失、海洋による炭素吸収能力の低下など、広範な影響を及ぼす。また、海温の上昇は、熱帯・亜熱帯の台風などの発生と威力を増幅させ、極地の海氷減少を悪化させる。
2025年の北極海氷の年平均面積は、衛星観測史上、最小または2番目に小さい数値を記録した。昨年の世界平均海面水位は、衛星による高度測定が始まった1993年比で約11cm上昇した。海洋温暖化と海面水位の上昇は、今後数世紀にわたって続くと予測されている。
今年以降の気候の見通しについて、WMOの専門家は、現在の世界の気候は「ラニーニャ現象」の影響下にあるとしている。同現象は、太平洋の東部赤道域(南米ペルー沖)で海面水温が平年より低くなり、それが1年程度継続して、冷夏などの原因になる状況を指す。これと反対に、同海域の海面水温が上昇するのがエルニーニョ現象。WMOの予測によると、今年の中盤までには、両現象の中立状態が続き、年後半には温暖化をもたらす「エルニーニョ現象」に転じる可能性があるとしている。その場合には「2027年に再び気温が上昇する可能性がある」という。
中東での戦闘が続き燃料価格が高騰する中、気候変動が確実に進行している点について、国連事務総長のグテレス氏は警鐘を鳴らしている。「戦争の時代において、気候のストレスはもう一つの真実を露呈させている。化石燃料への依存が、気候と世界の安全保障の両方を不安定にしているということだ。この報告書には『気候の混乱が加速している。遅れは致命的だ』との警告ラベルを貼るべきだ」と強調している。
(藤井良広)
https://wmo.int/site/world-meteorological-day-2026-23-march
https://library.wmo.int/viewer/69807/download?file=WMO-1391-2025_en.pdf&type=pdf&navigator=1

































Research Institute for Environmental Finance