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中国は 環境情報も「国家機密」、 住民の土壌汚染情報開示要求拒否  汚染拡大で晴れぬ視界(Reuters)

2013-03-11 22:23:23

化学物質の汚染が浮き出て変質した土壌
化学物質の汚染が浮き出て変質した土壌
化学物質の汚染が浮き出て変質した土壌


[北京/上海 10日 ロイター] 中国環境保護省は先月、土壌汚染に関する2年前のデータは「国家機密」だとして、弁護士のDong Zhengwei氏にアクセスは不可能だと宣告した。環境悪化に対する国民の怒りが高まる中、情報統制の厳しさが波紋を広げている。

マイクロブロガーや国営メディアに加え、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の代表団も、大気汚染や水質汚染について政府への批判を強めており、入手可能な環境情報が乏しすぎると懸念を示している。

ロイターのインタビューに応じたDong氏は、「この問題の本質は、環境保護という観点を超えている。これは、中国が長年抱えてきた政府の透明性の問題にかかわってくる」と指摘。「正当性がないのに盾として『国家機密』を使うべきではない」と非難した。

中国は通常、汚職や安全保障のような問題に関する情報は公開せず、国民が審査することを許していない。しかし、環境に対する国民の怒りによって、当局は要求を受け入れざるを得なくなるかもしれない。

<無言の殺人者>

北京で1月、危険水準をはるかに上回るレベルに到達した大気汚染。中国の環境問題の代表的なものとしてみられているが、Dong氏は土壌汚染が「無言の殺人者」として脅威となっていると警告する。

Dong氏は先月、2006─10年に行われた全国調査で集められた土壌サンプルのデータの開示を求めたが、環境保護省は「国家機密」として拒否した。

中国政府は過去に、環境情報へのアクセスを求める国民からのプレッシャーに屈したことがあった。2012年初めには、北京の大気汚染への怒りが高まったことから、北京では微小粒子状物質「PM2.5」の観測情報の公開が始まった。

上海代表団のYan Chengzhong氏は、「PM2.5の情報公開前には議論が交わされた。大気の情報を公開することで、社会が混乱すると考えた人もいた」と香港の新聞に説明。「ただ、こういった事態は起こっていない。『知らないこと』だけがパニックを引き起こす」と述べた。

代償伴う異議申し立て>

中国政府への異議申し立ては時に代償を伴う。

東部の浙江省の村で農業を営むChen Yuqianさん(60)は、約10年間にわたって土壌・水質汚染に抗議の声を上げてきた。この間、地元当局者の責任を追及してきたChenさんは、5回殴られたと打ち明けた。

2月20日、Chenさんは中国版ツイッター「微博」で、汚染した川を泳げば30万人民元(約460万円)の報酬を地元当局者に与えると挑戦状をたたきつけた。Chenさんによると、その4日後、棒や岩などを手にした十数人が自宅に押し入り、物を壊していったという。

Chenさんは「彼らは私に異議申し立てをやめさせ、汚染情報をこれ以上流させないために脅している」と語気を強めた。

Chenさんが住む村を管轄する地域の共産党書記は、ロイターの電話取材に襲撃犯との関連はないとし、襲撃事件は隣人との土地トラブルに関連していると主張した。

(原文執筆:Sui-Lee Wee記者、Adam Jourdan記者、翻訳:野村宏之、編集:梅川崇)

http://jp.reuters.com/article/jpnewEnv/idJPTYE92A04620130311?pageNumber=1&virtualBrandChannel=0