HOME |脳を食べる病原性アメーバ、鼻から侵入 (National Geographic) 怖すぎる 夏の怪談?! |

脳を食べる病原性アメーバ、鼻から侵入 (National Geographic) 怖すぎる 夏の怪談?!

2013-08-01 14:56:11

アメーバ「フォーラーネグレリア」(Naegleria fowleri)の電子顕微鏡写真。人の顔のように見える。
アメーバ「フォーラーネグレリア」(Naegleria fowleri)の電子顕微鏡写真。人の顔のように見える。
アメーバ「フォーラーネグレリア」(Naegleria fowleri)の電子顕微鏡写真。人の顔のように見える。


米国アーカンソー州に住む12歳の少女が寄生虫に感染し、入院して1週間以上が経つ。鼻から体内に侵入し、脳の組織を食べるこの寄生虫に感染すると、高い確率で死に至るという。

アーカンソー州保健局は米国時間7月26日、同州リトルロックのウィロースプリングス親水公園にある砂底の湖が感染源とみられるとの声明を発表した。同公園は、2010年に発生した感染例との関連も指摘されている。

 このめずらしい寄生虫性の髄膜炎は、原発性アメーバ性髄膜脳炎(PAM)と呼ばれるもので、「フォーラーネグレリア」(Naegleria fowleri)というアメーバによって引き起こされる。この微小なアメーバは自然発生する原生動物の一種であり、通常は温かい湖や池の堆積層でバクテリアを食べて生きている。

 フォーラーネグレリアについて詳しく知るため、ナショナル ジオグラフィックでは、この微小なアメーバのデータを採取、分析している米国疾病予防管理センター(CDC)の疫学者ジョナサン・ヨーダー(Jonathan Yoder)氏に話を聞いた。

◆このフォーラーネグレリアというアメーバはどのように人間に感染するのですか?

 フォーラーネグレリアは、特定の状況下で鞭毛(べんもう)を発達させます。鞭毛は糸のような構造で、これがあると素早く動き回り、より好ましい環境を探しにいくことが可能になります。夏場、人間が温かい淡水に入って泳いでいると、この動き回るアメーバに汚染された水が鼻から入って脳に達することがあります。

 その結果、頭痛、首の凝り、嘔吐などが起こり、そこからさらに深刻な症状に発展します。アメーバに曝露して発症すると、通常は昏睡状態に陥って5日ほどで死に至ります。

◆どんなところに生息していますか?

 温かい淡水中や、塩素処理があまり施されていない場所です。温暖な気候の州で採取した淡水からは、このアメーバが見つかることがめずらしくありません。

◆水泳プールでも生きられますか?

 米国では、管理の行き届いた、適切に処理された水泳プールに汚染が見つかった例は今のところありません。ろ過や塩素処理、その他の消毒を実施すれば、汚染リスクを低減または除去できるはずです。

 しかし、少々厄介なケースもあります。10年ほど前にアリゾナ州で、処理前の地熱温水の入ったプールで泳いだ子どもが発症し、残念ながらその子は亡くなりました。

◆人間への感染例は増えつつあるのでしょうか?

 フォーラーネグレリアの感染例が増加していることを示すデータはありません。(米国での感染件数は)ここ数年は年間4~5件で推移しています。

 ただ最近の変化として、ミネソタ州やインディアナ州、カンザス州など、それまで感染例がなかった土地でも発生するようになっています。これはフォーラーネグレリアが北上していることを示しています。以前は気候の温暖な州でしか見つかりませんでした。

◆フォーラーネグレリアが鼻の中に入る人と、入らない人がいるのはなぜですか?

 たいへんいい質問ですが、われわれにも答えはまだわかっていません。毎年、汚染された水域で泳いでも感染しない人は大勢います。したがって、ある人は感染し、他の人々は同じ場所で泳ぎ、同じ活動をしても感染しない理由を説明することは困難です。誰にも感染する可能性があることは確かですが。

◆助かる可能性はどのくらいありますか?

 1962年以降、フォーラーネグレリアの(感染)例は128件あり、そのうち助かったのは今回のケースを除きたった1人です。1978年に、抗生物質による治療で助かった患者の例があります。他の患者にも同じ治療法が用いられていますが、誰も助かっていません。

◆身を守るにはどうすればいいですか?

 感染すること自体がまれなのですが、感染のリスクを低減したいなら、水温が高く、消毒していない淡水の中で泳ぐときには、鼻をつまんでいるかノーズクリップをつけておくことです。温泉その他の温水域に入るときは頭を水の上に出しておき、ウォータースポーツやダイビングなど鼻に水が入るような活動をする際も注意が必要です。

 感染リスクを低減するもう1つの方法は、湖や池にたまっている堆積物をかき回さないようにすることです。そこにアメーバがいるかもしれません。

 感染した人とその家族にとって、これは悲劇的な出来事です。毎年多くの人が感染するわけではないにせよ、この問題に取り組むことが重要だと思います。

Image by D.T. John & T.B. Cole, Visuals Unlimited