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オゾン層、今世紀半ばに回復の見通し 国連報告書 モントリオール議定書の成果表れる。地球温暖化対策のモデルに(AFP)

2014-09-13 22:20:36

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ozonキャプチャ【9月11日 AFP】国連は10日、環境にとって数少ない良い知らせとして、損傷した地球のオゾン層は、今世紀半ばまでの回復へ「順調に進んでいる」と発表した。ただし、南極上空のオゾン層については、回復にさらに時間がかかると思われるという。

有害な紫外線を防ぐ地球を守る重要な「盾」であるオゾン層に関して、国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)が4年ぶりに発表した報告書によると、オゾン層の保護を目的として1987年に採択された「モントリオール議定書」は大きな成功を収めている一方、別の領域「地球温暖化」の問題を間接的に大きくしているという。

画期的な同議定書が採択されなければ、皮膚がんの患者数が2030年までに今より毎年200万人増加し、オゾン層を破壊する化合物の濃度が2050年までに10倍高くなったかもしれないと今回の報告書は指摘している。

また、紫外線によって人間の視力が損なわれたり動植物が損傷したりする事態も、同議定書が採択されたおかげで回避できたと報告書は述べている。

UNEPとWMOは「地球を保護するオゾン層は、今後数十年以内の回復へ順調に進んでいる」としている。

1980年の水準までの回復は「中緯度地域と北極地域では、今世紀半ばまでに達成される見込みで、南極のオゾンホールについては、もう少し後になる見込み」と両機関の報告書は述べ、2010年の予測を支持する見方を示している。

UNEPのアヒム・シュタイナー事務局長は、オゾン層を破壊する化学物質を廃棄するための期限を定めた同議定書を、歴史上で「最も成功を収めた環境条約の一つ」と評した。ozon2キャプチャ

 

■オゾン層問題への取り組みを気候変動問題に生かす

またシュタイナー事務局長は「だが、われわれが直面している課題はいまだに非常に大きい。モントリオール議定書の成功は、オゾン層の保護と回復だけでなく、気候に対するさらなる活動の後押しとなるはずだ」と述べた。

オゾン層が薄くなる「オゾンホール」現象は、高高度域が極度の低温になることで起きるが、それ以外にエアコンや冷蔵庫の冷却剤、断熱材の発泡体、整髪スプレーの高圧ガスなどの人為的な塩素化合物が原因で発生する。

人為的な塩素化合物の大半、主としてクロロフルオロカーボン(CFC)類やハロン類は、国連の全加盟国に承認されたモントリオール議定書の下で、段階的廃止に向けた措置が予定通りに進められている。

科学者ら300人がまとめた110ページからなる今回の報告書は、オゾン層に関しては全般的に良い知らせととしつつも、潜在的な落とし穴についても警告を発している。

オゾン層を侵食している化合物として、報告書が指摘している「四塩化炭素」は、モントリオール議定書で廃止の対象となっているにもかかわらず、生産量が増加し続けている。報告書によると、四塩化炭素の大気中濃度の測定値は、過去10年間に各国より報告された生産量と使用量の統計値を「はるかに上回っている」という。

また、報告書が指摘している人為的化合物の「亜酸化窒素(N2O)」は、オゾン層を破壊する一酸化窒素(NO)の前駆物質だが、同議定書による廃止の対象にはなっていない。

N2Oの排出は主に土壌のバクテリアの活動に起因するが、約3分の1は、化学肥料、化石燃料、家畜糞、工業生産などの人的な活動に由来するものだ。

CFC類の大気中濃度が減少傾向にある中、N2O排出への対処は「ますます重要になる」と報告書は指摘している。

 

■代替物質が温暖化を促進

報告書によると、多くのCFC類は温室効果ガスでもあるため、同議定書に基づく活動によって2010年には、二酸化炭素(CO2)に換算すると約100億トンに相当する量の温室効果ガスが1年間で削減されたという。

問題なのは、CFC類の代替物質としてハイドロフルオロカーボン(HFC)類への移行が進んでいることだ。HFC類は、オゾン層を攻撃しないが、太陽熱を吸収する強力な物質になる可能性がある。

現在のHFC類の年間排出量は、CO2に換算すると約5億トンに相当する。

だが、HFC類の排出量は年間約7%の割合で増加しており、年間のCO2換算排出量が2050年までに最大で88億トンに達する可能性がある。これは、CFC類が1980年代末に達したピーク値の95億トンに近い数字だ。

温室効果ガスとしての影響が少ない「より安全な」代替物質は、確かに存在する。そうした代替物質を製造に組み込むことで、気候変動へのHFC類の影響は「本質的に」解消されるだろうと国連の専門家らは話している。

WMOのミシェル・ジャロー事務局長は「オゾン層に対する国際的な活動は、環境保護に関する大きな成功事例の一つだ」とし、さらに、「だがそのことが足かせとなって、気候変動のさらに大きな課題に対処するために同レベルの緊急性と結束を全面に押し出すことをわれわれにちゅうちょさせていると思われる」と語った。

 

http://www.afpbb.com/articles/-/3025660?pid=0