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豪グレートバリアリーフで誕生するウミガメの9割がメス。温暖化の影響(?) 産卵場所の砂浜の温度が高いとメスの確立が高まる。WWF等が調査(RIEF)

2018-01-23 18:38:51

 

 WWFオーストラリアは、世界屈指のサンゴ礁として知られ、温暖化の影響が懸念されるグレートバリアリーフでの調査で、同サンゴ礁に生息する世界最大級のアオウミガメの孵化した赤ちゃんの約9割がメスだったとの結果を学術誌で発表した。これまでの研究で、地球温暖化の進行により、ウミガメの性別比がメスに偏るとの懸念が指摘されていたが、現実のデータでその可能性が示されたといえる。

 

 調査は、WWFオーストラリアがアメリカ海洋大気局(NOAA)のマイケル・ジェンセン氏らとの協力で実施した。アメリカの生物学誌「カレント・バイオロジー」に発表した。それによると、オーストラリア北東部に広がるグレートバリアリーフの産卵地域で、411頭のアオウミガメの個体を調査したところ、南部で生まれた個体の約65~69%がメスであったのに対し、北部で生まれた個体は、幼体の99.1%、亜成体の99.8%、成体の86.8%がメスだったという。

 

 グレートバリアリーフは1,400種類のサンゴと、1,625種類の魚類が生息しているとされ、その沿岸域は世界最大級のウミガメの産卵地としても知られている。周辺に生息するアオウミガメは、北部と南部それぞれで生まれた、遺伝子的に異なる2つの個体群が確認されている。

 

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 今回の調査では、その双方の個体群が採食場としている、ホウィック群島(Howick Group of Island)周辺の海上で計441頭を捕獲し、血液を採取して遺伝子情報と性別、出生地を分析した後、すぐに解放する方法でデータを収集した。その結果、北部の個体群の性比がメスに大きく偏っていることがわかった。今後の繁殖への影響が懸念される。

 

 今回の調査結果は、対象数が411個体と少ない。同地では、年間に20万頭のウミガメが孵化しているとされ、この海域全体の調査が必要といえる。また、ウミガメは、沿岸から外洋まで、広い海域を移動して暮らしており、その生態については、不明な部分が多いことから、WWFなどは引き続き調査を継続する方針。

 

 ウミガメ類は世界に7種が知られる。そのうち、現在6種が絶滅の危機にあり、IUCN(国際自然保護連合)の「レッドリスト」に指定されている。ウミガメが絶滅に瀕する背景にはいくつもの原因がある。甲羅や産卵した卵を食用にする目的での人間による捕獲、海岸地域の開発による産卵地、採食場の消失、海洋汚染や海洋ゴミ等による環境の悪化、漁網に誤って絡まり命を落とす混獲など、そのいずれもが人間の行為による。

 

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 人間がウミガメを「生きにくく」していることに加えて、地球温暖化による生息環境の悪化が指摘されてきた。今回の調査で、その温暖化の影響が実際に及んでいる可能性を浮き彫りにした。ウミガメは卵を生み落とした砂浜の温度によって、オスかメスかの性別が決まるとされる。卵を取り巻く砂の温度がおおむね摂氏29度よりも低いとオスになりやすく、それよりも気温が高ければメスになりやすいという。

 

 従来から、地球温暖化が進み気温が上昇すると、ウミガメの性別比がメスに偏るのではないか、という懸念が指摘されていた。調査論文の主執筆者のNOAAジェンセン氏は、「グレートバリアリーフ北部のウミガメ産卵地で孵化するウミガメの性別比がメスに偏る現象は、この20年程の間、続いている」と指摘している。

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 ウミガメは孵化して海に戻ってから、産卵可能な状態になるまで20年前後を要する。このため、ジェンセン氏は、「現在のウミガメの性別比を把握することは、今から数年後、そして20年後の状況を予測する上で非常に重要だ」と述べている。

https://www.wwf.or.jp/activities/2018/01/1401123.html