HOME |チリの起業家、「汚染しないプラスチック」を開発。石油の代わりに石灰石を用いてプラスチック組成。5分で水溶し、残るのは炭素のみ。「ノーベル賞」もの?。10月にも国内で製品化(RIEF) |

チリの起業家、「汚染しないプラスチック」を開発。石油の代わりに石灰石を用いてプラスチック組成。5分で水溶し、残るのは炭素のみ。「ノーベル賞」もの?。10月にも国内で製品化(RIEF)

2018-08-17 16:53:11

 

    世界中で廃プラスチック問題が注目を浴びる中で、チリの起業家らが、「汚染しないプラスチック」を開発した。石油の代わりに、石灰石を用いてプラスチックを組成するもので、水につけると溶けてしまい、かつ環境を汚染しないという。10月にも製品化するとしており、プラスチック袋の代替品として期待される。

 

 「Solubag」と名付けたこのプラスチック袋を開発したのは、Roberto Astete氏とCristian Olivares氏。二人は当初、生分解性の洗剤を製造する実験を行っていたが、最終的には水溶性のPVA(ポリビニルアルコール)を元にした化学式を見出した。同化学式に基づくプラスチック袋は、石油製品から作り出されるプラスチックが、マイクロプラスチック問題などの深刻な海洋汚染を引き起こしているのに対して、環境汚染を引き起こさず、しかも、海洋などに溶け込むため、廃棄物問題も引き起こさないという。効能どおりだと、「ノーベル賞」ものだ。

 

 Astete氏らが属するチリは、このほど南米で初めて、プラスチック袋の店頭使用の禁止を発表した。彼らはこうした政策環境は、Solubagを広める最高の環境だと判断、10月からチリ国内で新製品を販売する計画を立てている。また今週にはって、チリの首都サンティアゴで発見した新しい化学式の有効性と、それに基づく製品の成分が環境汚染しないことを実証する実証実験を行った。

 

水に藻すぐに溶ける
水に藻すぐに溶ける

 

 新化学式に基づいて製造したプラスチック袋を冷水の中に入れ、あるいは、再生可能衣料品に加工した布バッグをお湯の中に入れると、いずれも5分程度で溶けてしまう。水や湯の中に残るのは炭素だけ、という。自ら実験に立ち会ったAstete氏は、人体に何の影響も及ぼさないという医療検査の結果を説明し、自らその水溶液を飲んでみせた。

 

 従来の石油由来のプラスチックは、150年から、長いと500年以上も環境中にとどまるといわれる。しかし、このSoluBagはすぐに溶けて分解してしまうので、ゴミとして廃棄する必要もなく、捨てたいと思ったら自宅の洗濯機などで水に溶かすだけでよい、という。

 

 Astete氏によると、この化学式からは、あらゆるプラスチック材料を作ることが可能なため、現在、市場からの追放が求められているカップ、容器、医療用の衣服などにも加工できるという。ただ、水溶性なので、ストローなどには向かないかもしれない。Solubagは現在中国で生産しているが、従来の石油原料の化学式を変更するだけで生産できるため、各地にある既存のプラスチック工場で代替生産が可能という。

 

Solubagが溶けた水溶液を飲んでみせる開発者のAtete氏
Solubagが溶けた水溶液を飲んでみせる開発者のAstete氏

 

 水溶性の場合、飲料用には使いにくいほか、雨天時や水に濡れた場所での使用が課題となる。その点は、Solubagの場合、製造時に水溶する温度をプログラムできるため、心配ないという。また、人間の舌との接触や涙に触れても溶けるため、乳幼児や高齢者らの使用の場合の危険性が大きく減じられるという。

 

 なにやら「万能のプラスチック」のようだが、廃プラ問題への国際的な関心が、こうした新規の発見・発明につながったことは確かのようだ。製品化した際に、市場がその有効性を品定めすることになりそうだ。

https://solubag.cl/

https://santiagotimes.cl/2018/07/27/chilean-company-creates-water-soluble-bag-to-fight-plastic-pollution/