地下鉄の駅・構内で、高濃度のPM2.5検出。屋外の約5倍も。車両のブレーキにより車輪、レール等の鉄分が削れて飛散。長期間吸収すると健康被害の懸念も。慶応大学研究チームが横浜で調査(各紙)
2018-10-17 14:54:31
各紙の報道によると、慶應大学の奥田知明准教授のグループは、健康への影響が指摘される極めて小さい粒子状の大気汚染物質のPM2.5が地下鉄の駅や構内等で、最大で地上のおよそ5倍の濃度に上っ手入るとの調査結果をまとめた。地下鉄車両が駅に入る際にブレーキをかけることで車輪やレールなどの鉄分等が削れて発生しているとみられるという。専門家は「呼吸器などに病気がある人や長期間働く人などへの影響を調査する必要がある」と指摘している。
福岡市地下鉄は、比較的大きな浮遊粒子状物質については、駅員が長時間滞在する駅務室で定期的に濃度を計測しているほか、換気や清掃などを行い、粉じん対策を進めているが、PM2.5の濃度は把握していない。
名古屋市営地下鉄も比較的大きな浮遊粒子状物質については、ホームや駅務室などで定期的に計測しているほか、構内の換気や清掃を行い粉じん対策をしていますが、PM2.5の濃度は把握していないとの回答でした。
海外では、世界で最も古い地下鉄である英ロンドンでは、2003年に調査が行われ、最も高い駅では11㎥当たり3日間の平均濃度が、およそ480マイクログラムとなるなどの汚染が確認されている。成分には鉄分が認められた。このため、ロンドン市長は昨年、地下鉄の環境を改善するための行動計画を発表し、観測装置の設置や微粒子の吸着装置を使った除去などを打ち出している。
スペインのバルセロナやスウェーデンのストックホルムの地下鉄でも、同様の調査を実施したところ、高い数値が出たという。
後呂さんによると、週5日、駅のホームで勤務するが、売店では手袋とタオルで商品の汚れを払っており、1日たつと粉じんとみられる黒っぽい粉で汚れるという。1日の仕事を終えて鼻をかむと、ティッシュが真っ黒になるという。
労働組合の要望で9年前に粉じんの調査をした、売店を運営する東京メトロの子会社、メトロコマースは「平成21年の調査結果を踏まえると、駅構内の環境が健康に影響する可能性は低いと考えるが、今後も会社として従業員の労働環境・健康管理に適切に対応していきたい」とコメントしている。
しかし、環境省は屋内のPM2.5の濃度の基準をつくる具体的な予定は現時点ではないと説明している。厚生労働省では建築物の環境衛生管理の基準で、図書館や博物館、学校など特定の建築物を対象に浮遊する粉じんの濃度の上限は設けているが、地下鉄の駅は対象外。鉄道を管轄する国土交通省は、地下鉄の駅やトンネル内に換気設備を設けることは義務付けているが、粉じんの濃度に関する基準は設けていない。
奥田准教授は「地下鉄の空気の環境を誰が責任をもつのかわかりずらい。今まで見過ごされてきた空間だといえる。今後、地下鉄をはじめ、閉鎖空間の基準の整備も検討すべきだ」と述べている。