「ティンバーランド」や「ヴァンズ」などのブランド靴メーカーや「ノースフェース」などを展開する米企業「VFコーポレーション(VFC)」は、ブラジルの・アマゾンでの森林火災問題を重視、火災が続く間、同国からの皮革輸入を中止する、と発表した。
(写真は、VFC傘下の「ティンバーランド」の店舗)
アマゾン火災を理由として、ブラジルのサプライチェーン企業先との取引停止方針を打ち出したのは、VFCが初めて。
VFCは声明で、「自社製品に使われる皮革等の素材がブラジルの環境の悪化につながっていない、との信頼や確信を得るまで製品の購入をやめる」と説明している。
VFCの方針は、消費財産業として、サプライチェーンでの環境・社会的影響にも責任を負う立場にあることから、 ブラジル国内での取引先企業に、同国内での「責任ある行動」を求めた形だ。
ブラジルの皮革産業センターによると、ブラジルは年間14億4000万㌦の牛革をグローバルに輸出している。最大の輸出先は米国と中国、それにブランド品の多いイタリア。3か国で2018年の輸出額の60%を占めているという。
またノルウェーでは年金基金のKLP等が、アマゾンの森林破壊に関係している企業との取引停止、投資停止等の動きを展開している。取引先の状況を問われているのは同国のエネルギー企業のEquinor ASA のほか、肥料メーカーのYara International ASA 、アルミ製造業のNorsk Hydro ASAなど。http://rief-jp.org/ct6/93269?ctid=69
今回のアマゾン地域を中心としたブラジルでの森林火災拡大の背景には、年初にボルサナロ大統領が政権について以降、牛肉や皮革の需要を満たすため放牧場拡大を狙った牧畜関係者による違法、合法、両方の森林野焼きなどが増大したことが指摘されている。http://rief-jp.org/ct12/93108?ctid=69
先進国の消費財企業にとって、使用する原料等が環境・社会的負荷を高める形で生産された場合、単に輸入財の経済コスト面だけではなく、環境・社会的影響の責任・コスト対応を、投資家や消費者から問われるリスクがある。VFCはそうしたESGリスクを見据えて、自ら取引停止を判断したとみられる。
同社だけでなく、日本企業を含めて、ブラジル企業と取引関係のある企業は、自らのサプライチェーンリスクの評価を改めて行う必要に迫られている。アマゾンの森林火災の産業的要因には、牧畜業のほか、大豆生産等の農業需要も大きいとされる。
ボルソナロ大統領は昨年の大統領選挙時以来、アマゾン地域を同国の「資源」としてとらえ、思い切った開発を行う重要性を再三主張してきた。大統領就任後は、アマゾンの環境保護を担当してきた環境省関連部局の権限を緩めるほか、予算を削減、実質的に環境保護活動を縮小し、開発事業や業者への予算配分を増やすなどの政策をとってきたとされる。http://rief-jp.org/ct12/93309