HOME |ブラジル・アマゾンの森林火災拡大問題で、ブラジル環境省傘下で自然保護担当の職員らが、ボルサナロ政権が「違法伐採や放火等の摘発を政策的に妨害している」と公開書簡で訴え(RIEF) |

ブラジル・アマゾンの森林火災拡大問題で、ブラジル環境省傘下で自然保護担当の職員らが、ボルサナロ政権が「違法伐採や放火等の摘発を政策的に妨害している」と公開書簡で訴え(RIEF)

2019-08-29 19:57:54

Ibama3キャプチャ

  ブラジル・アマゾンの火災拡大で懸念される同国の自然保護問題で、400人以上の自然環境保護担当の職員が、「ボルサナロ大統領の政策で、自然環境が危険な状態にまで悪化している」と訴える公開書簡を発表した。大統領の政策が「誤りだ」と公的業務に従事する職員が訴える行動は極めて珍しい。

 米ニューヨークタイムズ紙によると、公開書簡を発表したのは、環境省の委託で自然環境保全活動をするIbama(ブラジル環境・再生可能天然資源院)の職員らだ。職員らはIbamaの長官宛てに書簡を出した。Ibamaは自然環境の維持と保護のため、国家環境プログラムに基づいて活動している。

 Ibamaの職員らは、大統領がG7サミットに参加した欧州首脳らと批判を応酬し合っている中、2日間で書簡をまとめ、賛同者が署名した。「このままでは、ブラジルの環境保護システムは崩壊してしまう」と危機感をアピールしている。

アマゾンのジャングルを監視のため行動する
アマゾンのジャングルを監視のため行動する

 Ibamaによると、アマゾンをはじめとする同国の環境保護政策は、予算削減、遠隔地の職員削減、政治家による干渉、環境規制の弱体化等で、停滞が続いていた。公開書簡では「最近の森林伐採と火災の増大はこうした複数のマイナス要素の増大と不可分」と、環境政策の劣化が構造的に進められてきたことを指摘している。

 ボルサナロ大統領が今年1月に就任後、こうした構造的弱点が、歯止めを失った形で露呈した。Ibamaの予算はさらに25%削減されている。Ibama職員は、違法伐採、放火等の容疑者を摘発し、罰金を科し、逮捕するなどの摘発行動をとるが、Ibamaの摘発部門の職員は過去10年で44%削減されてきた。

 職員数も、今年は730人にまで減少した。違法行為に対する罰金額は8月23日時点で、前年同期比で29%減となった。違法伐採・放火等が増えているのに、罰金減少は、Ibama自体が職員の減少や、摘発活動に対する妨害等が増えていることが大きいという。最近では罰金を科しても不払いが続き、未払い罰金を徴収するスタッフも不足しているという。

   違法伐採現場を摘発


違法伐採現場を摘発

 Ibamaの野外活動のコーディネーターを務めるRene Luiz de Oliveira氏は、2017年と18年の2年間でIbamaが整備した保護地区等での設備が放火されたりしているという。今年の6~7月には、森林伐採が加速するアマゾン河口部を抱えるパラー州でのIbamaの保護活動はほとんどできなかった。Ibama職員らの保護活動を警備する地元の警察がサポートを放棄したためという。

 またIbamaとともに、環境省の委託を受けて環境保護活動に従事する専門職員らで構成する「Association of Environmental Specialists」の代表、Alexandre Bahia Gontijo氏は「ボルサナロ大統領が就任してから、問題はドラスチックに悪化した。違法活動が政策的に認められている」と指摘する。

 Ibamaは法律によって、摘発した違法伐採者や違法焼き畑業者らのトラクターや機器類等を没収し、破壊する権限を与えられている。ところが、4月に大統領はIbama職員らによるこうした摘発行動を記録したビデオに対して、「誰も農民のトラクター等を破壊するべきではない」と述べ、Ibamaの活動を抑制させた。

https://www.reuters.com/article/us-brazil-environment-ibama-exclusive/exclusive-as-fires-race-through-amazon-brazils-bolsonaro-weakens-environment-agency-idUSKCN1VI14I

https://www.nytimes.com/2019/08/28/world/americas/amazon-fires-brazil.html