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フランスの「黄色いジャケット」運動、発足から1周年。パリ等で抗議行動。53回目のデモ。市場主義のマクロン政権の「懐柔策」効かず(各紙)

2019-11-17 21:18:10

yellow5キャプチャ

 

  マクロン仏大統領の政策を「弱者切り捨て」として反発、抗議する「黄色いジャケット(ジレ・ジョーヌ:gilets jaunes)」運動が起きてから1年。16日のフランスでは、53回目のデモが各地で展開された。パリなどではデモ隊と警官隊が衝突した。

 

 黄色いジャケット運動は、2018年11月17日に、当時のマクロン政権が打ち出した燃料税引上げに抗議した市民が、交通事故等の非常事態のために、車両内に保有が義務付けられている黄色いジャケットを着て抗議行動を展開したのが始まりだ。市民らは幹線道路等を封鎖、その後、次第にエスカレートし、パリ等では暴動にもなった。http://rief-jp.org/ct4/84694?ctid=71

 

 最初の大規模デモには、仏全土で28万2000人が参加した。その後、2カ月間で約200万人が、「黄色いジャケット」を身にまとって、抗議の列に加わった。1968年の「5月革命」以来の盛り上がりとなった。https://rief-jp.org/ct8/84863

 

自動車への放火も(パリ市内)
自動車への放火も(パリ市内)

 

 危機感を募らせたマクロン政権は燃料税引上げを撤回したほか、住民対話等を全土で展開するなどの懐柔策に打って出た。また警備も強化した。こうしたことから、次第にデモへの参加者は減った。だが、それでも根本的な貧富の格差は縮まっていないとして、運動は全国で続いている。

 

 仏政府主導の住民対話の「国民大討論会」は今年初めに80日間かけて実施、マクロン大統領も、そうした会議に16回出席、直接、若者たちと意見を交換した。しかし、「大討論会」への出席者は、政府が事前に質問項目や発言者を選んでいたことが判明、「単なるパフォーマンス」との批判を受けた。

 

 今回、「第53幕」と銘打って展開された16日のデモでは、パリ中心部で数か月ぶりにデモ行進の市民と、警備の警官隊との間で大規模な衝突が発生した。衝突の中心となったのはパリ南部のイタリー広場一帯。デモ参加者らは警官に対して投石したり、周辺のごみ箱や車等をひっくり返して火をつけるなどの騒動を繰り広げた。

 

催涙弾が飛び交う
催涙弾が飛び交う

 

 53回目のデモには、主催者はフランス全土で4万人が参加したとしている。これに対して内務省は2万8600人とする。警察は16日午後8時(日本時間17日午前4時)までにパリ一帯で147人を逮捕し、うち129人を勾留した。17日もデモが計画されている。

 

 仏調査会社Elabeが発表した世論調査結果では、フランス人の55%が黄色いベスト運動を支持、あるいは同運動に共感していると答えている。その一方で、63%は、衝突や暴動につながる黄色いベスト運動の本格的な再燃を望んでいないとも答えている。

 

 黄色いジャケット運動が息長く続くのは、従来の政党や労働組合主導のデモとの違いもあるようだ。上部団体や政治目的で動員をかけられて集まるデモとは異なり、黄色いジャケットのデモは、Twitter等のSNS等での呼びかけに対して、住民一人一人が自然発生的に自分の意思で集まるパターン。

 

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 参加し易く、抗議の仕方も思い思いで対応可能といった自由な側面と、政治折衝で妥協したりする手順が十分に整備されていないことから、当局側が満足のいく回答を用意できないと、収束をしづらい側面がある。

 

 同様のSNS時代の市民主導の直接抗議行動としては、気候変動問題に抗議する英国発の「Extinction Rebellion(絶滅への反逆)」運動、香港の若者の民主化運動、チリでの市民の反乱等がある。フランスの黄色いジャケット運動はこれらの市民主導の直接抗議行動の先行例といえる。https://rief-jp.org/ct7/88987

 フランスでは、人員や財源不足による病院・病床の閉鎖が相次ぐ。学校も再編などの影響で閉校が続く。また政府は今年、農家保護のため、スーパーなどでの食品の割引率を最大70%から34%に制限した。農家救済だが、安売り減は低所得者層を直撃し、国による切り捨てと感じる住民の不満を高まらせている。

 

 14日に任期の折り返しを迎えたマクロン氏の支持率は36%。黄色いジャケット運動が勃発した昨年12月には23%まで下がった時からは、改善したといえるが、当選直後の62%に遠く及ばない。

https://www.afpbb.com/articles/-/3255145?cx_part=latest