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フランスの「燃料税増税」反対抗議行動、今週末も全土で展開。マクロン政権の自動車産業優遇策への不満も。出口見えず(RIEF)

2018-11-25 14:39:46

france12キャプチャ

   フランスのマクロン大統領が打ち出したガソリン等の燃料税増税に反対する抗議行動が、先週に続いて今週末も、フランス全土で展開された。24日には抗議行動がパリ市内の大統領官邸のエリゼ宮に迫ったため、警官隊との激しい衝突が起きた。燃料税増税への反発に加え、溜まっていたマクロン政権への不満が爆発した形で、着地点を見出せない状況だ。

 

 今週末の抗議行動への参加者数は、先週17日(土)の28万人よりも少なかった模様。だが、インターネットでの呼びかけで抗議行動の対象をパリの首相官邸に絞ったため、警官隊との衝突は激しさを増した。フランス政府は全土に8万人、パリに8000人の警官を配備し、デモ隊の徹底排除を展開した。http://rief-jp.org/ct4/84694?ctid=71

 

警官の催涙ガスに逃げ惑うデモ隊
警官の催涙ガスに逃げ惑うデモ隊

 抗議行動のシンボルとなっている黄色のジャケット(gilet jaune)は、フランスですべてのドライバーに携帯を義務付けられているもの。事故の際、赤の三角表示板の設置とともに、ドライバーはジャケットを着て、二重事故を避けるため。今回、抗議に参加した人々は、マクロン政権によってフランス経済が「事故」を引き起こしている、との意思を示す意味もあるとみられる。

 人々の不満の直接の原因は、フランス政府がガソリンやディーゼル油に課税している燃料税を、電気自動車等への転換を促すとの名目で増税を打ち出したことへの抗議だ。だが、すでにフランスはEUでもGDPに占める税収の比率は45%を超える『重税国』。

 

 消費者に対する燃料税課税を増やし、その税収増分をルノーなどの自動車産業中心に配分する産業支援優先のマクロン政権の政策運営に対して、庶民の不満が爆発した格好でもある。

パリ市内に築かれたバリケード
パリ市内に築かれたバリケード

 土曜日のパリ市内は、抗議行動がエリゼ宮に迫らないよう、各地で催涙ガスを打ち来んだ。抗議行動側は、バリケードを各地に築くとともに、路傍の石畳をはがして投石で対抗した。まるでフランス革命時のようだ。

 

 現地報道機関は、抗議参加者のコメントとして「マクロン政権は自らの利権のためだけに行動している。われわれはもう飽き飽きしている」との声を紹介している。また「温暖化対策を進める目的は理解できる。しかしそのために、われわれがその資金を過剰に負担しなければならないのか」と、自動車産業寄りのマクロン政権を強く批判する声もあがっている。

 

 

 警察当局は、デモ隊と警官の衝突で双方合わせて19人がけがしたという。

 

厳戒警戒で対抗する警官隊
厳戒警戒で対抗する警官隊

 

 内務相のChristophe Castaner氏は、抗議行動は極右の国民党の影響を受けている、と非難する声明を出した。これに対して、国民党リーダーのMarine Le Pen氏は、ツィッターで「言いがかりだ」と反論している。

 

 抗議行動は今回も、フランス各地で展開された。道路の閉鎖が相次ぎ、交通事故も相次いだ。警察の発表では130人以上が道路交通を妨害したとして逮捕されたという。


 フランスでは従来、市民党による抗議行動は、特定の政党や労働組合等によって組織化されて展開されることが一般的とされる。しかし、今回の「黄色ジャケット」行動は、特定の政党の呼びかけでもなく、組織化もされていない。

 

 しかし、ほぼすべての年齢層の人々が参加しているほか、政治的な色彩も、極右も極左も、さらにマクロン政権支持者も参加するという広がりをみせている。燃料税増税という生活に直結した課題に、人々が「市民感覚」で反発を示しているともいえる。しかし、マクロン政権は増税路線の旗を降ろしそうにないことから、市民の不満と直接行動はさらに続きそうだ。

 

https://www.nytimes.com/2018/11/24/world/europe/france-yellow-vest-protest.html

https://www.bbc.com/news/world-europe-46328439