HOME13 原発 |ウクライナのチェルノブイリ原発周辺での森林火災、10日経っても収まらず。事故原発に1.5kmにまで接近。周辺には事故時の高濃度放射性廃棄物貯蔵所も(RIEF) |

ウクライナのチェルノブイリ原発周辺での森林火災、10日経っても収まらず。事故原発に1.5kmにまで接近。周辺には事故時の高濃度放射性廃棄物貯蔵所も(RIEF)

2020-04-14 15:50:06

Chelnobyl22キャプチャ

 

 ウクライナのチェルノブイリ(Chernobyl)原発事故の居住禁止区域で今月4日に発生した、森林火災は発生から10日たった13日になっても鎮火できず、1986年に爆発事故を起こした原子炉の敷地に約1.5kmの地点にまで迫っているという。当初、「(火災は)アンダーコントロール(制御下にある)」と、どこかの国のトップのような発言をしていた当局も、「火災は『超巨大』で『(消火の見通しは)予測不可能』」と述べ、緊張感が高まっている。

 

 (写真は、チェルノブイリ原発から遠望する森林火災の火の手)

 

 各紙の報道によると、居住禁止区域の森林で火災が発生したのは今月4日。火は強風にあおられて瞬く間に燃え広がった。ウクライナ政府は400人以上の消防隊員とヘリコプターを投入し、空中から大量の放水をするなどの消火作業を行っている。

 

 欧州東部火災監視センター(Regional Eastern European Fire Monitoring Center)のセルゲイ・ジプツェフ(Sergiy Zibtsev)所長はAFPの取材に対し、今回の火災は「超巨大」で「予測不可能」だと述べ、「われわれの推計では、居住禁止区域の西側ではすでに2万haに延焼している」と語った。

 

Chelnobyl2キャプチャ

 

 チェルノブイリ原発から2km離れた、プリピャチ(Pripyat)の街は、原発事故で住民約5万人が外部に避難したことからゴーストタウンになっている。しかし、観光ガイド協会のヤロスラフ・エメリヤーエンコ(Yaroslav Yemelianenko)会長によると、最近は原発ツアーが観光客に人気で、活気を取り戻しているが、火災は同市にも近づいているという。

 

 火災発生直後、同国の生態学調査当局のEgor Firsov(エホール・フィルソフ)氏は、火災現場を調査し、除染が施されていない森林等から放射性物質が大気中に拡散されたとして、「通常常時よりも16倍も高い放射線量を計測した」とフェースブックで公表していた。観測したガイガーカウンターの計測値もアップされた。

 

Chelnobyl4キャプチャ

 

 しかし、チェルノブイリの地方当局は、フィルソフ氏の指摘を否定、「森林火災による放射線濃度のレベルは安全な範囲を超えてはいない」との声明を出して、周辺住民の懸念払しょくに大わらわになった。フィルソフ氏も、その後、当局からの圧力があったのか、当初の主張を撤回したとしている。救急当局幹部は13日夜に発表したビデオ声明で、現在は延焼抑止に焦点を当てていると述べた。

 

 環境団体グリーンピース・ロシアは13日、今回の森林火災は1986年の原発事故以降では最大規模と指摘した。爆発事故を起こした原子炉は現在、鋼鉄製の保護ドームに覆われているが、内部は爆破時にコンクリートで固めた事故原発がそのまま保存されている。また事故時に高濃度の放射線に汚染された廃棄物の貯蔵所も近くにある。

 

Chelnobyl3キャプチャ

 

 同国副内相のアントン・ゲラシェンコ(Anton Gerashcenko)氏は、チェルノブイリの核廃棄物貯蔵施設には危険はないほか、首都キエフの放射線レベルにも変わりがない、として、流言飛語に惑わされないよう国民に警告している。しかし、市民の間からは「政府は実際の被害状況と危険性を、1986年の事故時のように隠している」との疑念の声も出ている。

 

https://www.theguardian.com/environment/2020/apr/13/ukraine-wildfires-close-chernobyl-nuclear-site

https://www.afpbb.com/articles/-/3278465?cx_part=latest