HOME13 原発 |アラブ首長国連邦(UAE)、アラブ地域初の商業用原発稼働。韓国製「ARP1400」。「脱化石燃料・温暖化対策」を理由。ベラルーシ等、新規原発導入国、再び増える方向に(RIEF) |

アラブ首長国連邦(UAE)、アラブ地域初の商業用原発稼働。韓国製「ARP1400」。「脱化石燃料・温暖化対策」を理由。ベラルーシ等、新規原発導入国、再び増える方向に(RIEF)

2020-08-02 20:55:59

UAE002キャプチャ

 

  アラブ首長国連邦(UAE)は1日、同国初の原子力発電所バラカ原発の1号機を稼働させた。同原発はアラブ地域でも初の商業原発となる。原発は韓国電力公社(KEPCO)が開発した改良型加圧水型原子炉(APR1400)で140万kWの発電容量を持つ。UAEはアブダビを中止に豊富な石油・天然ガス資源を持つが、温暖化対応で化石燃料に頼らない太陽光発電事業や原発開発等に力を入れている。ベラルーシでも近く稼働するほか、トルコ、バングラデシュでも建設が進んでおり、温暖化対策のエネルギー転換として原発に再び関心が集まる形となっている。

 

 (写真は、UAE初のバラカ原発)

 

 アラブ初の原発稼働となったバラカ原発(Barakah Nuclear Energy Plant)は同国の Al Dhafra Regionに建設されている。原発は4基あり、そのうちの1号機が今回稼働した。他の3基も建設途中。全基完成すると、発電量は5.6MGとなり、年間2100万㌧のCO2排出量を削減できるとしている。2016年に設立された「Nawah Energy Company(Nawah)」が運営する。

 

  同国の「エミレーツ原子力エネルギー公社(ENEC)」のCEOである、モハンマド皇太子(Mohamed Al Hammadi)氏は「UAEにとって歴史的な瞬間だ。ビジョンと戦略的計画の推進、プログラム管理に10年以上かけてたどり着いた。新型コロナウイルスの感染拡大というグローバル課題が広がる中で、われわれのチームは素晴らしいレジリエンスとコミットメントを発揮して1号機の安全運転開始を成し遂げた」と声明を出した。

 

バラカ原発のオペレーションルーム
バラカ原発のオペレーションルーム

 

 バラカ原発の4基が全部稼働すると、同国の電力需要の4分の1を原発でカバーできる。2009年の同原発の発注を巡っては、日立製作所とゼネラル・エレクトリック(GE)連合、フランス電力(EDF)とアレバも受注合戦を繰り広げたが、KEPCOグループが200億㌦で競り勝った。当初は、2017年の稼働予定だった。だが、2011年の東京電力福島第一発電所の事故後に安全性対策の強化対策やそれに伴うコスト問題で延期が続いていた。

 

 世界原発協会(World Nuclear Association)の事務局長のAgneta Rising氏は、「原発はクリーンな電力を供給し、高熟練の雇用と経済成長を多年にわたって各国にもたらす。バラカ原発に続いてベラルーシなど、新たな原発稼働が後に続いている。新たに原発を導入する国々は、原発により効果的な脱炭素化を図り、経済的にも強化される明日を築くことができる」と指摘している。

 

 バラカ原発の稼働でUAEは世界で33番目の民間原発保有国となった。ベラルーシでも8月中に西部グロドノ州で同国初のベラルーシ原発(出力240万kW)が稼働する。同国では1986年に隣国のウクライナでチェルノブイリ原発事故が起きているが、ロシアの支援で建設された。ベラルーシは現在、電源構成の95%を天然ガス火力発電が占めている。原発稼働により40%は原発電力となり、脱化石燃料化が進むとしている。

 

 このほか、トルコ初の原発となるアックユ原子力発電所(120万kW級のロシア型PWR×4基)も現在建設中。1号機の稼働予定は2023年となっている。バングラデシュでもロシア製原発の建設が進んでいる。これら中進国や途上国での原発導入は、温暖化対策とエネルギー多様化が目的とされる。ロシア、中国、韓国等が積極的な輸出戦略を展開している。

 

 日本では原発の海外輸出は、日立製作所とGE連合が軸になっている。ただ、コスト面でロシア、中国等に敵わないケースが多いという。一方、米国はトランプ政権が昨年末に再編・設立した米国際開発金融公社(DFC)を軸に、途上国等向けの原子力事業へのファイナンスを促進・強化する方針を打ち出している。「温暖化対策」を名目とした原発売込み国際競争が加速する気配となっている。http://rief-jp.org/ct6/105180

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