HOME13 原発 |ドイツ政府、10年前の日本の福島原発事故で緊急停止した国内8基の原発の補償として、4電力会社に総額約24億ユーロの支払いで合意。「2022年の脱原発」は予定通り達成へ(RIEF) |

ドイツ政府、10年前の日本の福島原発事故で緊急停止した国内8基の原発の補償として、4電力会社に総額約24億ユーロの支払いで合意。「2022年の脱原発」は予定通り達成へ(RIEF)

2021-03-06 22:09:10

Germany001キャプチャ

 

 ドイツ政府は5日、東京電力の福島第一原発事故を受けて、同国政府が脱原発を決断したことで、電力会社が損害を受けたとして起こした訴訟を受け、総額約24億ユーロ(約3100億円)を電力会社4社に補償金として支払うことで合意した。同訴訟ではすでに政府側が敗訴しており、支払額や方法をめぐって調整が続いていた。

 

 ドイツの財務、経済、環境の3省が発表した。補償額はエネルギー大手のバッテンフォール(Vattenfall)が14億2500万ユーロ、RWEが8億8000万ユーロ、EnBWが8000万ユーロ、E.ON /PreussenElektraが4250万ユーロ。

 

 ドイツは2002年に社会民主党(SDP)のシュレーダー政権が2022年までに脱原発を実施する方針を決めた。その後、SDPはメルケル首相のキリスト教民主同盟(CDU)と大連立を組んだ際も脱原発方針を維持した。だが、2009年の総選挙でSDPは政権から離れ、CDUは中道の自由民主党(FDP)と連立を組んだことから、メルケル政権は脱原発政策の見直しを打ち出した。

 

 その一環として、2010年に政権は脱原発方針を12年遅らせることを決定した。これにより、ドイツ国内では脱原発方針撤回の動きと、反原発の市民運動とが対立する状況に陥った。メルケル政権の撤回方針は明確だったが、2011年3月11日の福島原発事故が発生した。ドイツでは地方選挙が間近に迫っていたことと、福島事故で露呈した原発リスク管理の不確かさへの国民の不安が増大し、政権への圧力が高まった。

 

 その結果、メルケル政権は同月15日、その時点で稼働していた17基の原発のうち、8基の停止を宣言。さらに5月になって脱原発方針の確認をした。こうした経緯で脱原発政策が定まったが、国内で原発を運用している電力会社は、2022年の脱原発目標の撤回を見込んでいたのに、急な方針転換で損害を被ったとして、福島事故直後に停止を命じられた8基の分の損害補償を国に求めて訴訟を起こした。

 

 ドイツの最高裁にあたる連邦憲法裁判所は2016年12月、電力会社側の訴えを認め、政府に2018年6月末までに関連法を整備するよう命じた。具体的な補償額については、電力会社側の要求額、最大190億ユーロ(約2兆3000億円)の妥当性等で交渉が続いていた。結果的に、補償額は24億ユーロと請求額の8分の1で落ち着いた。http://rief-jp.org/ct4/66228 1基当たりでは3億ユーロ(約390億円)となる。

 

 補償の対象となった8基はいずれもその時点で操業年数が30年以上を経ていた老朽原発。補償額は、停止せずに2022年まで発電を続けた場合の電力収入と操業に見合う投資額等を元に試算したとみられる。福島原発事故以降、停止対象となってきた17基の原発はほぼ閉鎖作業が完了し、残りは1基だけとなっている。

 

 補償額約24億ユーロは、ドイツが「フクシマの教訓」を国策に取り入れて、政府の判断で原発リスクを解消するための国全体で支払うコストということになる。約24億ユーロ(約3100億円)が高いか安いかは、ドイツ国民が評価するだろう。

 

https://www.dw.com/en/germany-agrees-on-energy-company-payout-over-nuclear-shutdown/a-56781987#:~:text=Germany%20is%20ending%20years%20of,to%20compensate%20for%20their%20losses.&text=Germany%20has%20agreed%20on%20Friday,power%2C%20ending%20years%20of%20litigation.