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6月の中国・台山原発での放射性ガス漏洩問題で、原発製造会社を傘下に置く仏EDFが「仏国内だったら運転を停止していた」との見解。中国のリスク管理の不備を間接的に指摘(RIEF)

2021-07-27 22:38:52

taisangenpatsuキャプチャ

 

   先月半ばに、中国広東省の台山原子力発電所で、仏フラマトム社製の欧州加圧水型炉(EPR)の運転開始時に、原子炉内の放射性希ガス濃度が上昇し、大気放出をした事故で、フラマトムの親会社であるフランス電力(EDF)は「フランス内で稼働中の原子炉だったら運転を停止していた」との見解を表明した。中国の事故後、必要データを集めて分析した結果という。間接的に中国の原発マネジメントの「リスク軽視」の姿勢を指摘した形だ。

 

 EDFは今月22日に見解を発表した。同社はフランス国内の商業原子炉をすべて保有・運転しているほか、原子炉メーカーのフラマトム(旧アレヴァ)株の75.5%を保有する。残りのうち19.5%は三菱重工業の保有だ。フラマトムは、台山原発の建設と運転を担当する「台山原子力発電合弁会社(TNPJVC)」に30%を出資。残り70%は中国広核集団有限公司(CGN)と広東省の電力会社が保有する関係にある。http://rief-jp.org/ct9/115241

 

 今回のEDFの見解は、台山原発1号機(PWR、175万kW)での事故後、TNPJVCから把握したすべての関係データを分析したもので、22日に開催したTNPJVC臨時取締役会で明らかにされたという。TNPJVCから提供されたデータを分析した結果、「当社ならフランス国内の運転手続きに従って同機を一時的に停止した上で、状況を正確に把握し、これ以上の進展を阻止していた」と表明した。

 

 同機では一部の燃料棒の被覆部が破損して非密封の状態になった。EDFの専門家チームは、TNPJVCが提供した事故関連データの中のうち、一次冷却水の化学組成を詳細に分析したとしている。また漏れた希ガスの濃度上昇が進んだ場合の影響なども評価した。

 

 分析結果を踏まえて、EDFは「一次冷却水の希ガス濃度等は、同発電所に適用される規制上の閾値を下回っていた。閾値は国際的な水準と同様。ただ、現状(燃料棒の被覆部の破損状態)はそのままであることから引き続き監視が必要」と判断した。そのうえで、同発電所関係の決定はすべてTNPJVCに属しており、EDFがコントロールできるわけではないとしている。

 

 同機の事故は、 先月半ばに、米国の報道で「放射能漏れの懸念」が伝えられた。報道によると、放射性希ガスの濃度は5月末の時点で、フランスの基準で48時間以内の運転停止が必要とされる値の2倍に達していたとされる。

 

 中国生態環境省は、台山原発1号機の燃料棒約6万本のうち、破損した「約5本」は燃料棒全体の0.01%未満であり、許容値の0.25%(150本)よりはるかに低い。原発周辺地域での放射線量には異常はみられない」として運転を継続した。

 EDFも事故当時、「(小規模の燃料破損により)一次系冷却水で特定の希ガス濃度が上昇することはよく知られた現象」と説明していた。しかし、今回の発表では、「フランスの基準では一時停止措置の対象」であることを認めた。EDFは見解を変更した理由の詳細については言及しておらず、中国側の発表はない。

 

 

 

 

 漏洩した希ガスは化学反応性の低い元素で、今回発生したのはキセノンとクリプトン。一部の燃料棒のコーティングが劣化してガスが漏れ出した。ガスは回収され、放射能を除去する処理をした上で放出されたが、これは「規定に従った」通常の措置だったとしている。

 

 台山原発は、第3世代の原子炉とされるEPRが2基設置されている。事故を起こした1号機は2018年12月、2号機は19年9月に商業運転を開始した。1号機は核燃料サイクルの2周目に入っており、今回の事故でも運転を停止せず、フル稼働の状態にある。

https://www.edf.fr/en/the-edf-group/dedicated-sections/journalists/all-press-releases/edf-s-communication-regarding-the-taishan-nuclear-power-plant-s-no-1-reactor