HOME |ロシア軍が占領したウクライナのチェルノブイリ原発で、放射線量が急上昇。通常の20倍以上。大量の重火器車両等の集結の影響か。原発事故を起こした旧ソ連(ロシア)の侵攻で放射能汚染の継続が再確認された形(RIEF) |

ロシア軍が占領したウクライナのチェルノブイリ原発で、放射線量が急上昇。通常の20倍以上。大量の重火器車両等の集結の影響か。原発事故を起こした旧ソ連(ロシア)の侵攻で放射能汚染の継続が再確認された形(RIEF)

2022-02-26 16:47:48

BBC002キャプチャ

  各紙の報道によると、ロシア軍がウクライナに侵略して占拠したチェルノブイリ原発周辺で、放射線量が急上昇していることがわかった。24日時点で、地域によって従来の線量の20倍以上に上昇していることが確認されている。ウクライナ政府は25日、原発に爆発等が生じたわけではなく、ロシア軍の進軍によって原発周辺土壌等から放射性物質が舞い上がった可能性を指摘している。ロシア軍が閉鎖中の原発敷地内でどのような軍事活動を展開しているかは不明。

 チェルノブイリ原発はウクライナの首都キエフから北に約130kmの地点にある。旧ソ連時代の1986年に同原発の4号機が爆発事故を起こし、現在は閉鎖中。事故原発は欧州復興開発銀行(EBRD)によって、安全対策のため原発全体を包み込む鋼鉄製のシェルター建設工事が2016年に完了、19年にウクライナ政府に移管されている。https://rief-jp.org/ct5/91735

チェルノブイリ原発周辺での放射線量の上昇度合い(BBCより)
チェルノブイリ原発周辺での放射線量の上昇度合い(BBCより)

 原発を中心として約4000㎢の敷地は、立ち入り禁止区域だが、ロシア軍は24日未明、立ち入り禁止区域に入った。その際、原発施設の警備隊と戦闘を繰り広げ、施設を占拠したとされる。ロシア軍は同原発を、首都キエフに進軍する拠点として位置付けている可能性がある。米国の情報では、原発施設を管理していた職員がロシア軍に拘束された可能性があるという。

 ウクライナの原子力規制当局は25日、声明を出し、大量の重軍事車両等立ち入り禁止区域に立ち入ったため、事故原発周辺の土壌上に滞留していた高濃度の放射性物質が拡散された可能性を指摘した。廃炉作業中の原発自体の状態には異変はないとしている。この指摘から、ロシア軍の重装備の戦車や車両がすでに同地に多数駐留していることが示された。

 大量の重火器車両等の移動等で放射性物質が舞い上がったとすれば、事故後、36年を経ても、地表部分に残留する放射性物質はかなりの量に上ることが、事故を起こした旧ソ連(ロシア)の侵攻によって図らずも示された形でもある。

ウクライナ全土での放射線量の状況。北部の
ウクライナ全土での放射線量の状況。チェルノブイリ周辺では65㍃シーベルトが検出されている

 観測された放射線量は原発近くのモニタリングステーションで、一時間当たり65㍃シーベルトと通常の同地での測定値の約20倍にまで上昇した。高放射線は原発の出入り口周辺を中心に限定的に観測されている。BBCによると、この値は大西洋を航空機で飛行した際に受ける放射線量の5倍以上という。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は、ウクライナ軍が同原発を守るためロシア軍と戦闘したことを認め、「1986年のチェルノブイリの悲劇は繰り返してはならない」と強調している。ロシア側はチェルノブイリ原発においてどのような活動を展開しているかについては一切公表していない。