HOME13 原発 |北海道電力・泊原発の運転差し止め訴訟。札幌地裁は論点の防潮堤が「安全基準満たさず」津波対策の不備を指摘し、再稼働認めず。津波対策での運転停止判断は初めて(各紙) |

北海道電力・泊原発の運転差し止め訴訟。札幌地裁は論点の防潮堤が「安全基準満たさず」津波対策の不備を指摘し、再稼働認めず。津波対策での運転停止判断は初めて(各紙)

2022-06-01 11:36:19

tomariキャプチャ

 

 各紙の報道によると、札幌地裁は31日、北海道電力が再稼働を目指している泊(とまり)原子力発電所の1~3号機の運転差し止めを求めた訴訟で、原告の主張を受け入れ運転を認めない判決を言い渡した。谷口哲也裁判長は、同原発の津波対策となる防潮堤が「安全性の基準を満たしていない」と指摘。原告弁護団によると、津波対策の不備を理由に運転差し止めを命じた判決は初めて。廃炉の請求は棄却した。北電は控訴する方針。

 

 道内外の約1200人が泊原発の防潮堤(高さ16.5m)では津波を防ぎきれない、原発敷地内や周辺海域に活断層がある等を理由に同原発の再稼働停止を求めて訴えていた。判決は論点となった防潮堤について「地盤の液状化や揺れによる沈下が生じる可能性がないことを、北電側が相当な資料によって説明していない」と指摘し、安全性を満たす津波防護施設が存在しないと判断した。

 

 訴訟は2011年11月に提訴されていた。北電側は一部の争点について今年2月までに最終的な主張をすると表明していたが、谷口裁判長は1月、「現時点で審理が熟した」と述べ弁論を打ち切り、結審していた。

 

 判決で裁判長は、提訴から10年以上が経過していることから、「北電が安全性に関して立証を終える見通しが立たず、これ以上審理を続けることを正当化するのは難しい」と結審させた理由を説明した。

 

 論点の防潮堤の安全性についは、原子力規制委員会が既存の防潮堤について地盤の液状化の可能性を指摘、これを受けて北電側が「さらなる安全確保のため、堅固な地盤の上に造り直す」と説明していた。判決は「(北電側は)地盤が液状化しないことを相当な資料で裏付けていない」と指摘。新たな防潮堤も「構造などが決まっていない」として、「想定される津波に対して防護できる施設は存在していない」と判断を示した。

 

 こうした判断に基づき、判決は同原発について東日本大震災の後にできた新規制基準が定める安全性の基準を満たしていないとして、原告のうち原発の半径30km圏内で生活する44人分の差し止め請求を認めた。

 

 報道によると、東日本大震災の後に出された、原発の運転停止を命じる判決は今回で4件目。それらは、関西電力の大飯原発に対する運転差し止め判決と設置許可取り消し判決、日本原子力発電の東海第二原発で運転差し止め判決だ。ただ、今回の判決は仮処分ではなく、確定するまでは原発の再稼働を止める効力はない。

 

 判決ではもう一つの論点となっていた原発周辺の活断層の存在については、「そのほかの争点について判断するまでもなく、津波によって原告らの人格権が侵害される恐れがある」と指摘した。

 

  原告は原発内に置かれている使用済み核燃料の撤去も求めていた。判決では北電側の安全性に対する説明は不十分で「危険性は認められる」としたが、原告側は適切な撤去先を特定していないため、請求権がないとの判断を示した。

 

 北海道電力の泊原発は北海道泊村に建設されている。1~3号機は2011年4月~12年5月に、定期検査のため順次停止。北電は国が新規制基準を施行した13年7月に再稼働を申請したが、現在も規制委による審査が続いている。

 

https://digital.asahi.com/articles/DA3S15311474.html?iref=pc_shimenDigest_top01

https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220601&ng=DGKKZO61309790R30C22A5CM0000