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米ウェスチングハウス(WH)、ウクライナの原発公社「エネルゴアトム」に対し、ロシア製原発からの転換促進で、核燃料と新規原発AP1000の追加建設で合意(RIEF)

2022-06-06 17:23:50

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 米ウェスチングハウス(WH)とウクライナの原子力発電公社のエネルゴアトム(Eenrgoatom)は3日、エネルギアトムがウクライナで展開する15基のロシア製原発の核燃料すべてをWH社製の燃料調達で賄うとともに、ウクライナで建設するWH製原発のAP1000を、現在建設中の5基から9基に増やすことで合意したと発表した。エネルゴアトムはWH製核燃料調達のために新たに15億グリブナ(約5100万㌦)を新規借り入れる。ウクライナは戦争とともに、米国の原発市場に完全に転換することになる。

 

 (写真は、ロシア製から米WH製への転換事業が進むウクライナのフメルニツキ原発。米・ウクライナ関係者の視察の模様)

 

 エネルゴアトムは今回のロシアの侵攻によって、南部のザポリージャ原発等を一時、ロシア軍に占拠されるなどの被害を受けていた。同社の原発はすべて、ロシア製の加圧水型軽水炉(PWR)のVVERだが、これまでもロシア離れを進め、昨年までに、VVER-1000型の原発のうち6基分をWH社製核燃料に切り替えていた。またVVER-440型2基についても2024年までにWH製にする予定にしていた。

 

新規契約を交わすWHのCEO、フラグマン氏㊧と、エネゴアトム総裁のコティン氏㊨
新規契約を交わすWHのCEO、フラグマン氏㊧と、エネゴアトム総裁のコティン氏㊨

 

 ウクライナ原発業界のロシア離れは、ロシアが2014年にクリミア半島を一方的に併合して以降、進められている。ザポリージャ原発のほか、南ウクライナ原発では、2015年から2016年にかけてWH社製核燃料の試験使用が進められてきた。

 

 今回、これらの燃料転換スケジュールを早めて、全15基を対象にWH製燃料へ切り替える。燃料調達のために中堅銀行のUkrgasbankから15億グリブナの融資契約を結んだ。同社が保有する15基の原発は一時、ロシアに占拠されたり、戦禍の影響で稼働を中止したところもあったが、現在は8基が稼働中で電力網に接続・送電している。残りは点検のために停止中か、予備として扱われている。

 

 WHとの間では、燃料供給だけでなく、ウクライナで今後建設するWH社製の最新型原発のAP1000を、これまでの5基から9基に増やす追加契約も締結した。

 

 ウクライナでは、建設工事が中断しているフメルニツキ原発3、4号機(K3/K4)(各100万kWのVVER)の完成に向け、2010年にロシアと結んでいた協力協定を2015年に解除したうえで、2021年8月にエネルゴアトムがWH製に切り替える契約を結んでいる。それによると、建設進捗率が28%のK4にAP1000を採用するほか、今回、新たにAP1000を4基、追加建設することになった。

 

 さらにWHは、ウクライナ国内で建設数が増えるAP1000原発事業を支える「ウエスチングハウス・エンジニアリング・センター」を同国内に新たに設置する。センターでは、エネルゴアトムがウクライナ国内で運営する15基の既存原発の運転支援や、これらの原発の将来の廃炉、新規原発への転換等を、総合的に支援することになる。

 

 両社の追加契約の調印は、ロシア製の原発からWHのAP1000への転換を目指すフメルニツキ原発で実施した。エネルゴアトムのペトロ・コティン総裁とWH社のパトリック・フラグマン社長兼CEOが参加。ウクライナのエネルギー相と、WHの燃料製造施設が立地するスウェーデンの在ウクライナ大使も同席した。

 

 エネルゴアトムのコティン総裁は「現在のような困難な状況下でも、われわれは戦略的パートナーであるWH社との協力関係を積極的に継続していく。ウクライナの原子力エネルギー開発の歴史に新たな1ページを刻むだけでなく、欧州のエネルギー自給にも大きく貢献できると確信している」と述べた。

 

 WHのCEO、フラグマン氏は「原子力業界をリードするわれわれの燃料供給やサービス提供分野を拡大することで、ウクライナの稼働中の原発を全面的にサポートし、新規建設のAP1000をこれまでの5基から9基に増やせることを誇りに思う」と述べた。

https://info.westinghousenuclear.com/news/energoatom-and-westinghouse-reaffirm-clean-energy-partnership