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ロシアのウクライナ侵攻で一時占拠されたチェルノブイリ原発。放射能汚染レベルは占拠前より約3倍に上昇。環境NGOグリーンピースが現地調査。IAEAの「安全」発表の信頼性揺らぐ(RIEF)

2022-07-21 17:38:37

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 ロシアのウクライナ侵攻で一時、ロシア軍に占拠されたチョルノービリ(チェルノブイリ)原発の放射能汚染状況が、占拠前に比べて約3倍に高まっていることがわかった。環境NGOのグリーンピースが現地調査を行った結果で、同団体の調査では、国際原子力機関(IAEA)が占拠解除後に発表したデータを大きく上回っている。IAEAの調査自体への信頼性が揺らぐ状況でもある。

 

 グリーンピースは今月16日から18日まで同原発の半径30km以内に設定されている立入禁止区域で放射能汚染調査を実施した。ロシア軍による同原発占領後に、独立機関による詳細調査が実施されたのは今回が初めて。

 

 ロシア軍は原発から撤退する際、主要な放射線検知機器と消防機器を略奪して破壊した。このため、科学者も軍隊も消防士も、今も、汚染拡散に対して十分な管理や制御ができない状況にある。さらに立入禁止区域にはロシア軍による対人地雷が埋設され、より広範囲での追加放射線調査はできない。そこで、同団体は、ドローンと遠距離放射線測定機器を活用して調査した。

 

土壌サンプルを分析する
土壌サンプルを分析する

 

 その結果、現地のスタンザヤヤノフ付近のロシア軍キャンプ跡で、地上10cmの高さで0.18μSv/h〜2.5μSv/hの線量率を測定した。この値の最高値はIAEAの試算の3倍以上になる。

 

 ロシア軍が道路封鎖を実施した地点から1.5kmの距離にある「赤い森」に隣接する交差点では、線量率が7.7μSv/hと、IAEAの測定値を大きく上回った。グリーンピースは、今も地雷と爆発物が放置されたままの要塞の危険性を踏まえて、ロシア軍陣地の主要地域を選別するために、マッケンジー・インテリジェンス・サービスに衛星分析を依頼した。

 

 その分析結果では、ロシア軍が同原発の高濃度汚染地域に塹壕や要塞を構築し、意図的に何度も火をつけ、ロケット砲を発射していたことが確認された。こうした軍事行動によって、土壌に蓄積された放射性物質を大気と川を通って周辺に拡散させた。立入禁止区域を流れるプリビヤト川は、ウクライナ市民が飲料水源として使用するドネプル川とつながっており、同団体は、ウクライナ政府に対して、地下水、河川を早急に調査するよう求めている。

 

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 土壌中の汚染もロシア軍の占領の影響が表れている。採取した土壌サンプルからは、セシウム137の濃度が45,000Bq/kg〜500Bq/kg以下と、大きな数値の違いがみられた。これは、ロシア軍が占領後に土壌の層を攪拌したことで、深い層から低濃度の汚染土壌が表面に出たり、他の層から高濃度の汚染土壌が出たりしたためとみられる。

 

 ドローンを使って地上100mの高さで測定した調査では、南側の広い範囲で高い放射線レベルが確認された。ロシア軍キャンプの上空では約200cps(カウント毎秒)が測定されたが、600〜700m南側では約8000cpsと40倍も高い放射能が測定された。

 

 調査を担当したグリーンピース・ベルギーの主任放射線防護アドバイザー、ヤン・ヴァンダ・プッタは、「放棄された塹壕の内部で、低レベルの核廃棄物と認められるレベルのガンマ線を測定した。ロシア軍が高放射能環境で活動していたことは明らか。しかし、IAEAはそう伝えていない。IAEAは何らかの理由で、十分な調査の努力をしないと判断したとしか思えない。IAEAが世界に信じさせようとしているにもかかわらず、チョルノービリ原発の立入禁止区域内の放射線レベルが正常でないことは、我々の調査から明らか」と指摘している。

 

 グリーンピースは、「IAEAが、ロシアの国営原子力企業ROSATOMとの関係によって、ウクライナの原子力の安全性に対する役割を十分に果たしていないことが懸念される」と付け加えている。

https://www.greenpeace.org/japan/nature/story/2022/07/21/58398/