HOME13 原発 |ドイツの「脱原発」政策。世論調査では「予定通りの脱原発」支持は15%のみ。「数カ月の延長」と「長期の延長」がともに41%。エネ自給のため風力発電拡大迅速化支持が81%(RIEF) |

ドイツの「脱原発」政策。世論調査では「予定通りの脱原発」支持は15%のみ。「数カ月の延長」と「長期の延長」がともに41%。エネ自給のため風力発電拡大迅速化支持が81%(RIEF)

2022-08-12 16:04:28

Deutchtrendキャプチャ

 

  ロシアによる天然ガス輸出の意図的な減少でエネルギー不安に直面しているドイツで、民間調査機関の世論調査の結果、年末までとする脱原発政策の完了を、予定通りに実施することへの賛同は15%にとどまった。延長に賛成論は、「数カ月の延長」と、「長期の延長」が同率の41%。また風力発電事業の拡大をより加速すべきとの意見は81%に達した。「脱原発」を緊急対応で延長支持する意見が多数となる一方で、同時に再エネ加速によるエネルギー転換には大半が賛同したことになる。

 

 調査は、ドイツの調査機関の「ドイチュラントトレンド(DeutschlandTrend)」が同国公共放送ARDの委託を受けて、今月1日から3日の間、電話とインターネットを使って1313人の意見を聞いた。質問内容は「脱原発政策」のほか、連邦政府に対する意識についても調査を行った。エネルギー価格の高騰で収益増となっているエネルギー産業への課税等についても聞いた。

 

 ドイツでは2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故を受け、当時のメルケル政権がドイツ国内の原発17基のうち8基を同年8月に直ちに閉鎖したほか、他の9基も2022年末までにすべて閉鎖することで合意。これまでに6基を閉鎖し、現在残っているのは、イザール原子力発電所2号機(PWR、148.5万kW)とエムスラント原子力発電所(PWR、140.6万kW)、ネッカー原子力発電所2号機(PWR、140万kW)の3基のみ。

 

 しかし、ロシアからの天然ガス輸入が意図的に減少されていることから、今冬の暖房需要期のエネルギー確保が政治課題となっており、これら3基の稼働停止を予定通りに続けるか、延長するかが国民の間でも議論になっている。すでにショルツ首相は、稼働中の3基の原発を延長する可能性について「あり得る」と言及している。https://rief-jp.org/ct5/127265

 

 今回の世論調査では、3基の扱いについて、予定通りに稼働を終了することに賛成する意見は15%、「(年末以降)数カ月の延長」が41%、「長期的に原発を利用する」41%との回答だった。連立政権を構成するグリーン党支持者の間でも、予定通りに年末で脱原発を完了するとの意見は31%にとどまった。同党支持者の61%が稼働延長を支持した。ただ長期稼働支持は同党支持者内では7%と低い。

 

 エネルギー供給安定のための他の政策では、再エネ事業の風力エネルギー利用の拡大を、もっと迅速に推進すべきとの意見が81%と多数を占めた。気候変動対策の加速化と、再エネ強化によるエネルギー自給体制の強化によって、他国の思惑でエネルギー危機に陥った今回のような事態を回避することへの期待が国民の間に出ているといえる。

 

 2030年に廃止を予定している石炭火力発電所の扱いについても、今回のエネルギー危機を受けて、61%が同火力の使用継続に賛意を示している。需要サイドでは、アウトバーン等の高速道路のスピード制限を課す案への賛同も61%と過半数を超えた。ドイツのアウトバーンは最高速度制限がないことから、高速走行による自動車からのCO2排出増を高めていることへの懸念だ。

 

 国内のエネルギー自立のため、埋蔵されているシェールガスをフラッキング技術を使って開発する案に対しては、土壌汚染や生態系への影響が懸念されることから、過半数を超える56%が否定的な見解を示した。賛成は27%にとどまった。

 

 今回のエネルギー危機で、連邦政府がロシアからのエネルギー輸入を抜本的に断ち切る方向に向かっていることについて、大多数の71%が「正しい目標」と答えた。「間違っている」との意見は24%。この問いへの回答では、州によって異なる傾向が出た。「脱ロシア・エネルギー」の政策を「正しい」と回答した人は、西ドイツの州では76%だったが、東ドイツの州では54%だった。

 

https://www.tagesschau.de/inland/deutschlandtrend/deutschlandtrend-3105.html