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ウクライナのザポリージャ原発、外部電源が一時途絶える。急遽、非常電源に切り替え、電源確保。ウクライナ側「放射能災害の一歩手前だった」とロシア側を非難(RIEF)

2022-08-28 02:09:01

zaporeajorキャプチャ

 

  ウクライナの国営原子力企業エネルゴアトムが25日に発表した内容によると、ロシア軍が占領しているウクライナ中南部の欧州最大のザポリージャ原発の外部電源が一時的に途絶えたという。原発近くで発生した火災が原因で、非常用のディーゼル発電機の稼働によって電源は急遽、確保された。ウクライナのゼレンスキー大統領は同日、火災の原因はロシア軍の砲撃だとし、非常電源が稼働しなければ放射能漏れの可能性があったと指摘。「ロシアはウクライナと欧州を放射能災害の一歩手前の状況に追いやった」と非難した。

 

 (写真は、原子炉の電源喪失リスクが顕在化したウクライナのザポリージャ原発)

 

 外部電源は、原子炉自体の冷却のほか、使用済核廃棄物を冷却するためにも不可欠だ。2011年の東京電力福島第一原発事故では、東日本大震災で外部電源が途絶え、非常用のディーゼル発電機の電源も水没し、原子炉を冷やすことができずに炉心融解が起きた。その結果、水素爆発や放射能汚染が拡大した。

 

 国際原子力機関(IEAE)によると、ザポリージャ原発は保有する6基の原子炉のうち2基が稼働中だった。ロシアが同原発を占拠し、軍事基地化していることから、同原発及び周辺地域では戦闘が続いている。これまでに、4つある外部電源の送電線のうち、すでに3本が失われていた。今回、残る1本の送電線が、少なくとも2度にわたり送電が途絶えたという。

 

 エネルゴアトムによると、今回は原発の運営を担当しているウクライナ側の従業員の対応で、非常用発電機に切り替えて、電源を確保できたとしている。その後の修復で近くの火力発電所から、同原発へ非常時の電力を送る送電線は確保されたという。26日には、原発の安全システムは正常通り稼働しており、一時的に送電を停止した同原発は、送電の再開を進めている。

 

 ゼレンスキー大統領は25日夜のビデオ演説で、「もし原発の運営に当たっているウクライナの従業員たちが、停電後に非常電源の立ち上げに迅速に動いていなかったら、放射能事故への対応を迫られていただろう。ロシアはウクライナと欧州全域を、放射能災害の一歩手前の状況に追い込んだ」と強く非難した。

 

 これに対して、原発周辺を担当するロシア軍の担当者は、「ウクライナ軍が原発の近くの森林で火災を発生させたことが原因。火災によって電源がショートした。ウクライナ側の挑発の結果だ」と反論している。https://rief-jp.org/ct13/127479

 米イェール大学の国家安全保障専門のPaul Bracken氏は「長距離砲による砲撃やミサイルは原子炉のカベを突き破り、広範囲なエリアに放射能をまき散らす可能性がある。1986年のチェルノブイリ原発の爆発事故以上の影響を及ぼしかねない。ザポリージャ原発がそうした事態になれば、数十万の犠牲者が出て、広範囲の周辺環境に影響が及ぶ可能性がある。まさに『ロシアンルーレット』だ」と指摘している。

 IAEAのグロッシ事務局長は25日に声明を出し、「ほぼ毎日、ザポリージャ原発やその周辺で新たな事件が起きている。これ以上、時間を失うわけにはいかない。今後、数日以内に調査団を率いて現地を訪れる決意だ」と述べた。だが、同原発はロシアの軍事基地化しており、IEAEの調査団が立ち入ることができるのかは不明だ。

 どちらが攻撃したかの議論は続くが、明らかなことは、原発が軍事標的あるいは軍事基地化することのリスクの大きさだ。日本の岸田首相はウクライナでこうした現実が起きている状況の中で、わが国での原発の新増設宣言を行っている。日本の既存の原発は対テロにも、対戦争にも、ほとんど備えがないばかりか、原発従業員たちの管理の甘さも露呈している。「ノー天気な原発政策」が続くようだ。https://rief-jp.org/blog/127730

https://www.euractiv.com/section/europe-s-east/news/ukraine-narrowly-escapes-nuclear-catastrophe-as-plant-loses-power-zelenskyy-says/