原子力規制委員会、「GX脱炭素電源法」に基づき、関西電力の大飯3、4号機の40年運転を初認可。老朽原発の実質従来通りの運転延長が「グリーン転換」につながる理由は(???)(RIEF)
2024-06-28 00:03:21
(写真は、関西電力大飯原発、㊧から4号機、3号機=東京新聞から引用)
各紙の報道によると、原子力規制委員会は26日、「GX脱炭素電源法」に基づき原発の運転期間を最長、60年超にも延長ができることにしたことを受け、関西電力の大飯原発3、4号機(福井県)の運転期間を40年まで延長する長期施設管理計画を認可した。両原発は、すでに従来の手続きで40年までの運転延長が認められているが、今回、政府が主導するグリーン・トランスフォーメーション(GX)政策に基づき延長認可を出した。ただ、GX計画は、その名に基づくと「グリーンへの転換」となるが、既存の老朽原発を運転延長する措置が「グリーン転換」といえるかは疑問符がついたままだ。
原子力規制委員会は、委員長の山中伸介氏をはじめ、5人の委員全員が一致して認可した。メディアの報道では、山中委員長は「10年ごとに見ていくということは、厳正化につながる。(両原発の審査については)技術的に困難な論点は特になかったと考えている」などと述べた。
GX脱炭素電源法では、新制度が始まる2025年6月時点で、運転開始以来30年を超える原発が、同月以降も運転を継続する場合は10年ごとに管理計画を策定し、規制委員会の認可を受けることを義務づけている。このため電力事業者は対象原発を稼働させ続けるには、10年ごとに規制委員会の点検を受ける形となる。逆に言えば、認可を得さえすれば、60年超の運転も可能になる。
その運転延長可否の判断は、規制委が10年ごとの認可に際して、電力会社作成の長期施設管理計画を審査することから、その計画の妥当性がポイントとなる。同計画には、安全確保に必要な部品や設備が製造中止になった場合への備え等のほか、設備の劣化等への対応方針等を示す必要があるとされる。
この点では、従来の制度でも、30年超の運転を評価する際には、10年ごとに原子炉や配管、コンクリート構造の劣化などを確認してきており、「新制度との違いはない」(東京新聞)との指摘がある。山中委員長が「技術的に困難な論点は特になかった」と述べたのは、従来と異なるような、より厳しい手続き等を盛り込んでいないため、とも受け止められる。
しかし、大飯原発は、使用済み核燃料の保管継続が苦しい状況にあるとされるほか、同原発が立地する福井県若狭湾には、半径20km以内に高浜原発も立地しており、同時多発の事故の懸念も指摘されている。あるいは、ロシアのウクライナ侵攻で表面化した有事の際の「原発被占領リスク」への対策は、国内のどの原発も、まったく考慮していないようだ。「グリーン転換」ならぬ「ノーリスクウォッシュ」と呼んだほうがいいかもしれない。
関電大飯原発は、1号機から4号機まで4基の原子炉を持ち、合計出力は470万kW。全体の規模は日本の原発の中では、東京電力の柏崎刈羽原発(出力821万2000kW=休止中)に次ぐ。このうち、1、2号機はすでに運転期間が30年を超え、2017年12月22日に廃炉が決定している。
大飯原発の認可に続いて、九州電力が川内原発1、2号機の運転延長を求めて長期施設管理計画を委員会に提出しており、25年6月に予定する法施行前に、同様の申請が10件以上ある見込みとされている。
https://www.da.nra.go.jp/view/NRA100003262?contents=NRA100003262-002-001#pdf=NRA100003262-002-001
https://www.tokyo-np.co.jp/article/336154
https://digital.asahi.com/articles/ASS6V115TS6VULBH00CM.html